渋野日向子のパットが入る理由 2種類の独自練習の効果は

渋野日向子のパットが入る理由 2種類の独自練習の効果は

全英を制したシンデレラガールのパットの秘密を解説(写真/Getty Images)

 全英女子オープンで日本人として42年ぶりにメジャーを制した渋野日向子(20)。勝負所で長いパットを次々決め、最終日の最終18番では7メートルの下りスライスを強気のパットで沈めて優勝を決めた。

 パットが得意なように思えるが、実は昨年まではパットが大の苦手だった。主戦場のステップアップツアーでもパーオンホールの平均パット数はベスト10に入るのがやっとだった。しかし今年はLPGAツアーで平均パット数1.7660の堂々3位。一時はトップに立ったこともあった。苦手を克服できたのは、全英で渋野のバッグを担いでいた青木翔コーチ(36)の指導が大きい。

 青木氏はまず、渋野のパターをマレット型からピン型に持ち替えさせた。渋野はフォローでフェースが開きながら外に抜けるクセがあったため、ヘッドの慣性モーメントが大きく操作しづらいマレット型から操作性の高いピン型に変えさせたのだ。意識的にフェースを閉じたフォローをすることでイントゥインのストロークとなり、球の回転と方向性が飛躍的によくなった。

 そしてもう一つ大きな効果を発揮したのが下の2種類の“ドリル”である。

【ドリル1「半径1メートル」】

 スタート前に、7m以上の3か所からカップを中心とした1mの円の中に3球ずつ入れるロングパットの練習をする。カップに入れることを目的とせず、その日の距離感の基準を作るための練習。基本的にはできるだけフラットなストレートラインを7、12、15mから打つが、機械的にならないために、距離やライなど毎日少しずつ変える。フィーリングを養うことが目的で、ホールアウト後にはこの練習はやらない。

【ドリル2「9分の7」】

 プレッシャーに強くなり、ストロークより出球に集中するためにホールアウト後に練習。カップから1mの距離にティを立て、そこから円を描くように50cmずつ距離を延ばして5mの距離まで9か所にティを立てていく。9回のパットのうち失敗していいのは2か所だけで、3回外せば最初からやり直し。毎回距離は同じだが、いろんな傾斜からのパットとなり、狙ったところに打てるようになる。

 青木コーチに練習の内容と意図を聞いた。

「まず、それぞれやるタイミングが決まっています。【1】の練習は朝のスタート前だけに行ない、ホールアウト後にはやりません。逆に【2】の練習は朝のスタート前にすることはありません。

【1】の7メートル以上、3か所からパッティングをするのは、その日の距離感の基準を作るためです。あくまでも距離感を作るための練習で、カップに入れることを目的としません。3つの距離をランダムにやることで、機械的にならずにフィーリングを作ることを大切にしています」

 一方、「9分の7」と呼ばれる【2】は9ホールのパットを仮想している。9分の7以上を1パットで上がることを義務づけることで、プレッシャーに強くなる。また、9か所の傾斜の違ったラインから打つためストロークより出球を意識することになり、プレッシャーの中でも狙ったところに打てるようになるという。

 苦手を克服して結果を出すためには、明確な目的意識をもった練習が不可欠。渋野が思い切りのよいパットが打てるのも、こういった地道な努力があるからだ。

■取材・文/鵜飼克郎

※週刊ポスト2019年8月30日号

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