貴景勝や八村ら、全スポーツからラグビー日本代表を選ぶと…

貴景勝や八村ら、全スポーツからラグビー日本代表を選ぶと…

大谷はどのポジション?(AFP=時事)

 9月20日にラグビーW杯日本大会が開幕、それに先立ち、8月29日には代表31人が選出された。フィールド上に15人が立つラグビーは、ポジションにより多様な特性・能力が求められる。一方で、競技人口は比較的少なく、“ラグビー向きの才能”が他に流れていると嘆く関係者は少なくない。

 では、全スポーツの一流選手から“夢のジャパン”を組んだら──ラグビー取材の第一人者と、1987年の第1回W杯にも出場した元日本代表の“顔”が大真面目に考えた。

 まず、ラグビーのポジションは大きく、フォワード(FW=8人)とバックス(BK=7人)に分かれる。スクラムを組むのがFWの8人で、最前列が「左プロップ」「フッカー」「右プロップ」の3人。

「フッカー」は最前列からスクラムをコントロールしながら足でボールを後ろに送る。ラインアウトではボールを投げ入れるため、パワーと器用さが求められる。一方、「左右プロップ」は最重量級が並ぶ。

 ラグビー、水泳、駅伝から、MLB、NBAまで幅広く取材するスポーツジャーナリスト・生島淳氏は、左プロップに角界の新星・貴景勝(関脇)を選出。

「両足が土俵から離れない、地に根が生えたような動きはプロップでしょう。ラグビーの代表は『居住3年以上の外国人』も出場可能なので、ジョージア国籍の大関・栃ノ心やモンゴル国籍の白鵬、鶴竜の両横綱もいいが、一番若くスタミナもある貴景勝が最も有望です。

 右プロップは柔道100kg超級の原沢久喜がいいと思う。フッカーはラインアウトも考え、恵まれた体格で器用にボールをコントロールできる田中将大(ヤンキース)を推したい」

◆ロックにNBA・渡邊雄太

 神戸製鋼で日本選手権7連覇を達成し、日本代表キャップ数30を誇る大八木淳史氏も「左プロップは貴景勝」という意見で一致。

「右プロップは体格、身体能力に加え、負けん気の強そうな中田翔(日本ハム)を見てみたい。フッカーには足技も使える柔道から阿部一二三。最近はケガに苦しんでいるが、若くして世界の頂点に立った技のキレは素晴らしい」

 続いて「左右ロック」のセカンドロー。ラインアウトでジャンパーとして地上4mの空中戦を繰り広げるため、長身の選手が務める。前出・生島氏がいう。

「左ロックは走り高跳びの日本記録保持者・戸邉直人を持ってきましょう。194cmの長身で、跳躍力も申し分ない。右ロックはバスケ日本代表から、206cmの体格でコートを縦横無尽に走り回るNBAメンフィス・グリズリーズの渡邊雄太を使いたい」

 現役時代は188cmの巨体でロックとして活躍した大八木氏は、長身の野球選手コンビを提案する。

「左ロックを藤浪晋太郎(阪神)、右ロックをダルビッシュ有(カブス)の2m級コンビ。このくらい大きくて動ける選手だとスクラムが安定するし、ラインアウトでのボールキャッチも安心できる」

 最後列の側面からスクラムに加わるのは「左右フランカー」。パワーに加え、いつでも飛び出せる俊敏性や持久力が求められるため、別掲図の通り本田圭祐(サッカー)や瀬戸大也(水泳)などスタミナが求められる競技からの人選となった。

 FW陣の最後尾に位置するのが攻守の要「ナンバーエイト」だ。生島、大八木両氏は同じ名前を挙げた。日本人初のNBAドラフト1巡目指名を受けた八村塁(ウィザーズ)である。

 大八木氏は「現役日本人アスリートを見渡して、運動能力トップは八村。彼しかいない」と太鼓判を押す。バスケ日本代表でも、所属チームでも背番号「8」の八村だが、ラグビーでも「8」の資質があるわけだ。

 ここからがBK陣。「スクラムハーフ」はFWとBKのつなぎ役。スクラムにボールを投げ入れ、ナンバーエイトから出てきたらパスやキックで攻撃のリズムを作っていく。的確な判断と素早い動きが求められ、小柄な選手も多い。「スタンドオフ」は司令塔。スクラムハーフからパスを受け、攻撃陣を率いる。

「バスケ日本代表のPG富樫勇樹(千葉ジェッツ)がスクラムハーフ。167cmながら素早い動きと戦略眼で大きな相手を翻弄できる。スタンドオフは広い視野で攻撃を組み立てられる久保建英(マジョルカ)でしょう」(生島氏)

 大八木氏はスクラムハーフになんとフィギュアスケートの羽生結弦を挙げた。172cm、57kgの細身では不向きに思えるが、「素早い動き、4回転ジャンプを実現する驚異的な運動神経に加え、ケガに強い。何より、スクラムハーフに必要な圧倒的なカリスマ性があります」(大八木氏)と断言。

「司令塔のスタンドオフは大谷翔平(エンゼルス)がいい。あの運動神経なら、練習すれば素晴らしいキックもできるはず」(同前)

 さらにスリークォーターバックスの4人。中央の「左右センター」は、攻撃ではウイングのトライをアシストし、守備では体を張って相手バックスを止める縁の下の力持ち的存在だ。生島氏はこの左センターに大谷を起用したいとする。

「視野が広くてクレバーな大型バックスは魅力的です。大谷なら右フランカーとの“二刀流”もいける」

 大八木氏は「運動能力に加え、強いメンタルでチームを支えられる」との理由で左センターに格闘技の那須川天心、右センターにテニスの錦織圭を挙げた。

◆サニブラウンは右ウイング

「左右ウイング」は、味方がつないだボールでトライを狙う。スピードが求められるだけに、陸上のトップ選手が第一候補だ。

「桐生祥秀が左ウイング。細かいところに入っていくのでダッシュ力のある桐生を置く。比較的ロングスプリントが多くなる右ウイングは後半の加速があり、200mも走れるサニブラウン・ハキームがいい」(生島氏)

 一方で、ラグビージャーナリストの村上晃一氏は「左ウイングには“日本人3人目の9秒台”を出した小池祐貴、右ウイングに桐生。線が細いタイプよりも筋肉質で重心を低くして走れるほうがいい。腰高の選手はタックルに弱い」とし、豊富なスプリンター陣から誰を選ぶかが“贅沢な悩み”になるようだ。

 最後方に位置する「フルバック」は防御ラインの最後の砦。キックで陣地を挽回する役割も担う。前回大会では五郎丸歩が務めた。

 キック力を重視する生島氏が「サッカーのセンターバックがいい。吉田麻也(サウサンプトン)が適任」とするのに対して大八木氏は、ゴルフの石川遼だという。

「今回挙げたメンバーはラグビー未経験者ばかり。だから、今の競技のプレー中の表情や集中力の高め方などを踏まえて選んでいる。石川がラグビーをやったら、パット練習と同じようにキック練習を朝から晩までやるのではないか。それぐらい凄まじい集中力がある」

 もちろん、本番のW杯に挑むのはジョセフHC率いる「本物のジャパン」である。“あの選手がいれば……”なんて声が出ないほどの大躍進を期待したい。

※週刊ポスト2019年9月13日号

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