白鵬の怪しい休場 綱取りのハードルが下がり続けている

白鵬の9月場所全休や稀勢の里のサポーター宣言に、稀勢の里の横綱昇進後押し説も

記事まとめ

  • 白鵬は9月場所を全休し、稀勢への応援や“優勝経験ない横綱”を許容する発言をした
  • 白鵬が協会サイドの歓心を買おうとして稀勢の里を後押ししてるのではとの声もある
  • 協会も稀勢の黒星フォローをしており、協会は綱取りハードルを下げすぎとの指摘もある

白鵬の怪しい休場 綱取りのハードルが下がり続けている

白鵬の怪しい休場 綱取りのハードルが下がり続けている

10年ぶりの全休となった白鵬

「待望の日本人横綱誕生なるか」──と盛り上がるはずだった大相撲9月場所は、綱取りのかかった大関・稀勢の里が出だしからつまずいた。その結果、周囲の奇妙なまでの“お膳立て”ばかりが、浮き彫りになっている。

「(今場所後の横綱昇進は)もうない、ということはないけれど、非常に厳しい」

 平幕・隠岐の海を相手に、力なく土俵を割った稀勢の里の相撲を桟敷席で見ていた横綱審議委員会の守屋秀繁・委員長(千葉大名誉教授)はこうバッサリ切り捨てた。綱取り場所の初日に不甲斐ない相撲を見せられた感想としては当然だろう。

 ところが、相撲協会はむしろ、稀勢の里の“フォロー”に躍起になっていた。八角理事長(元横綱・北勝海)はわざわざ、横審委員長のコメントを打ち消すかのように、「今場所は序盤に星一つ二つ落としても、チャンスはある場所。気持ちを切り替えて粘り強くいくだけ」と発言してみせた。

 春、夏、名古屋と3場所連続で準優勝した稀勢の里については、場所前から18年ぶりの日本人横綱への期待が煽りに煽られてきた。

「協会の顔色をうかがうスポーツ紙は初日で土がついた後も、“綱取り場所初日に黒星を喫して昇進したのは柏戸、栃ノ海、三重ノ海、千代の富士の4人いる”といった記事を出し、“可能性はまだある”と援護射撃に必死でした」(協会関係者)

 そうしたなかで3日目に早くも2敗目を喫し、白けたムードばかりが広がった。

◆「準優勝でもいいんじゃ」

 期待が高まっていた最大の理由は、本場所直前に横綱・白鵬が10年ぶりの全休を決めたからだ。

 白鵬との対戦成績は、稀勢の里の14勝43敗。今年の春、夏場所でも白鵬に敗れて初優勝のチャンスを逃している。その“天敵”が不在となれば俄然、稀勢の里に優勝のチャンスが回ってくると見られていた。

 しかも、白鵬は休場を決めた際に、「(綱取りの)チャンスをものにしてもらいたい。今度は戦うのではなく、応援に回りたい」と稀勢の里のサポーター宣言までしているのだ。稀勢の里にとってあまりに都合のいい展開だらけであることに首を傾げる向きもある。

「白鵬が協会に提出した診断書には『左膝タナ障害、右足拇指伸筋損傷、ならびに右足関節炎で4週間の加療が必要』とあった。ですが、白鵬は8月の夏巡業にも全勤していますし、足腰に負担のかかる不知火型の土俵入りも問題なくこなしていた。稽古不足はあるのかもしれないが、傷んでいる様子はなく、秋場所に出場できないほどの状態にはまるで見えなかった。本当に謎ですよ」(後援会関係者)

 さらに、協会の内規で「横綱昇進は大関が2場所連続優勝かそれに準じる成績をあげた場合」とされているにもかかわらず、稀勢の里の昇進のハードルはどんどん下がっていった。

「白鵬が休場しているだけでなく、横綱・鶴竜も休場明けの稽古不足で状態が悪く初日から2連敗した。本来、稀勢の里には“取りこぼしのない高いレベルでの優勝”が求められるはずですが、理事長や審判部は“白鵬不在は関係ない。優勝なら勝ち星は関係なく昇進”と場所前から繰り返していました」(担当記者)

 過去の横綱昇進前3場所の成績を見ると白鵬は38勝、日馬富士38勝、鶴竜は37勝をあげている。

「稀勢の里は直近2場所で25勝ですから、今場所は13勝以上での初優勝といったあたりが最低条件になるはず。なのに、そんな声は協会内からは上がらず、むしろ初日の不甲斐ない黒星のフォローに必死になっていた。一体、どこまでハードルを下げるんだという気持ちです」(同前)

 夏巡業後の8月30日の綱打ち行事では、休場を表明する前の白鵬がこんな言い方をしていた。

「(稀勢の里は)今年いっぱい、あと2場所とも準優勝だったら(横綱に)上げてもいいんじゃないの。5場所連続(準優勝)となると、10か月好調を維持できたことになる」

 つまり、“一度も優勝したことのない横綱”まで許容するというのである。

◆一代年寄になりたい

 奇妙なのは、18年ぶりの日本人横綱誕生を悲願とする相撲協会と歩調を合わせるように、白鵬まで稀勢の里の横綱昇進を後押ししているように見えることだ。その背景には、白鵬の“微妙な立ち位置”が関係しているとの見方もある。

 引退後、年寄名跡を取得し、親方として相撲に携わっていくためには、帰化して日本国籍を取得する必要がある。

「このままだと白鵬は引退後に協会に残れず廃業するしかありません。そのため、特例で帰化せず一代年寄(※)となれるよう、故・北の湖理事長にはたらきかけてきた経緯がある。しかし八角理事長体制になってからも、協会は特例を認めない方針を貫いてきた。

【※注:一代年寄/現役時代の功績が著しかった横綱が引退した場合、相撲協会が一代限りで特別な年寄名跡を認める場合がある。「貴乃花親方」のように、名称には引退時の四股名がそのまま用いられる】

 そうしたなかで起こったのが、稀勢の里の綱取りをアシストするかのような『謎の休場』です。白鵬は今回の件を通じて協会サイドの歓心を買おうとしたのではないかという声もある」(別の協会関係者)

 とことん横綱昇進へのハードルを下げ続けた異様さが、様々な疑念を呼ぶ結果となっている。ただ、土俵上での稀勢の里がピリッとしない以上、どんな思惑も意味をなさない。何よりも、ファンは勝負弱い日本人横綱の誕生など望んでいないだろう。

※週刊ポスト2016年9月30日号

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