角居勝彦調教師 理想とする短距離馬と挑戦したい気持ち

角居勝彦調教師 理想とする短距離馬と挑戦したい気持ち

調教師の角居勝彦氏

 中央GI勝利現役1位の角居厩舎が開業以来一度も出走させたことがないのが、1200メートルのGIだ。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、来年以降に向けて、短距離戦にも意欲を見せ始めた角居厩舎が理想とする短距離馬について解説する。

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 角居厩舎では血統的に中長距離の馬を多く預からせていただいています。その関係で、従業員教育など調教システムが短距離馬育成に向いていないのが短距離戦不出馬の主な理由です。それともうひとつ、調教師としての姿勢の問題もあります。

 たとえば、1600メートルでは引っ掛かってしまったから距離を短くするという考え方がある。たしかに有効な方法のひとつです。しかしそれは、こちらの調教技術として後退しているようで抵抗があります。馬の能力をしっかりと引き出す意味ではやや安易な姿勢ではないかという気がするのです。マイナス思考を少しでも排除したいんですね。

 ただし、プラスの発想ならば色気が出ます。「マイルで早めに切れて勝てたから、1400メートル、1200メートルでも面白い」というケースならば調教のやり甲斐がある。逆に短距離でも、道中をしっかりとタメて最後に切れるという調教技術が確立されれば、1200メートルでデビューした馬が距離を伸ばしていってマイルでも通用するということになる。

 そういう意味で理想的なのが豪州の名馬、リダウツチョイスです。

 1100メートルでデビューして1200メートルのGIを2勝、マイルのGIでも勝って、2000メートルまで距離を伸ばし(5着)、1200メートルに戻して2着、1400メートルのGIで勝利。豪リーディングサイアーに二度輝き、2000年に種牡馬になってからも3世代でGI馬10頭。2013~2014シーズンには後継種牡馬のスニッツェルと父子によるリーディング・ワンツーを達成しました。種付け料もトップクラスです。

 角居厩舎にはリダウツチョイスの子フルーキーがいます。父譲りの切れ味が魅力ですが、タメがきくので中長距離で使ってきました。マイル戦でデビューして1800メートルでも3勝、菊花賞(3000メートル)も走っています。今年5月の新潟大賞典(芝2000メートル)、6月のエプソムカップ(東京 芝1800メートル)でともに2着。エプソムカップでは1着のルージュバックを捕らえ切れず、惜しい競馬でした。

 日本の短距離王といえばロードカナロアです。全13勝のうち11勝が1200メートルでそのうちGIは香港スプリント連覇を含めて5勝という素晴らしい成績ですが、それだけでなく5歳春に東京の安田記念(1600メートル)を勝っているというのがすごい。スピードにまかせた走りではなく、道中しっかり脚をタメることができる馬でした。

 来年にはそのロードカナロアの初年度産駒が角居厩舎にもやってきます。自分の調教師としての幅を広げるつもりでも、そろそろ短距離路線にチャレンジしてみたい気持ちはあります。

●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後15年で中央GI勝利数23は歴代2位、現役では1位。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、馬文化普及、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、ラキシス、サンビスタなど。

※週刊ポスト2016年9月30日号

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