セ・リーグDH制 達川光男氏と岡田彰布氏の相反する見解

セ・リーグDH制 達川光男氏と岡田彰布氏の相反する見解

達川氏はDH制導入賛成派

 セ・リーグにDH制を導入することに「賛成」か「反対」か?──本誌・週刊ポストの読者アンケートでは【賛成】59.0%、【反対】38.3%という結果になった(*「2020年日本の重要問題について意見をお伺いします」から集計。998人が回答。100%に満たない部分は無回答)。

 ここでは、見解の異なる2人の識者の意見を紹介しよう。

●達川光男氏(元広島監督、元ソフトバンクHC・賛成派)

 巨人の原(辰徳)監督が日本シリーズ直後に、「セ・リーグにもDH制を導入すべき」と提言した。原監督は“強いパ・リーグとの差を埋めるため”という考えのようだが、それより選手へのメリットが大きいじゃろうね。

 投手が打席に立つことは想像以上に危険じゃけェね。試合で飛んでくるすっぽ抜けた球は、野手でも避けるのは難しいんよ。たまにしか打席に立たない投手では逃げられんし、大事故にも繋がりかねません。申告敬遠が導入されたけど、投手生命を守るために“申告三振”も検討すべきかもしれんね。

 ワシはセ・パ両リーグでコーチをしてきたけど、最近は打席に立つことに戸惑う投手が増えているように思う。DH制が導入されている大学、社会人野球出身選手のなかには何年も打席に立っていない投手も少なくない。それがプロに入って4〜5年ぶりに打席に立たされるんだから、そりゃ危ないでしょう。

 セ・リーグが導入し、(DH制のない)東京六大学のリーグ戦や高校野球も導入して統一すればいい。レギュラーが1人増えて出場チャンスが広がる。もちろん、大谷(翔平)のような選手がいたら、DHを使わずに打席に立てばええんじゃけェね。

 セの投手は毎日、バントや打撃練習で打席に入っているが、DHを導入することで投手は投球練習に専念できる。切れ目のない打線を相手にすることで小手先の投球術は通用せず、常に全力投球が求められます。投手がレベルを上げれば、そこに打者はついていくもんよ。

 なにより、1番から9番までガチンコ勝負になることで、試合が面白くなり、一番大切なファンにも喜んでもらえるでしょうね。

●岡田彰布氏(元阪神、元オリックス監督・反対派)

 いまはパのほうが地力がある。これは断言できる。ただ、原監督は“パに負けないためにDHを”という旨の発言をしたが、「それを言っちゃお終い」よ。それがパに勝つことに直結するどころか、セの個性が消えてしまうんちゃうかな。

 選手はDHで出場機会が増えるというけれど、結果的には外国人に頼ることになるわな。若い時から指名打者を目指すというのもどうかと思うし、それでええんかということや。

 当然、ドラフトで獲得する選手も変わってくる。パはパワーや球速といった一芸に秀でた選手。対して守りの野球のセは、走攻守のバランスがとれた選手を指名してきた。

 両リーグの監督経験者として言わせてもらえば、DH制の方がベンチワークは楽や。投手が打席に入らないと打線の切れ目がなくなるから、攻めに徹することができる。投手交代も、あれこれ考える必要がない。調子が落ちてきたら代えたらええからな。

 その点、セの野球は考えることが多い。投手に疲れが見えてきても「次の攻撃で打席が回るから、この回は投げさせよう」とか、「好投しているけど、ここは代打を送って勝負しよう」とか、色々考えるわけや。チームの成績が悪いと、その勘はたいてい外れるけど(苦笑)、相手ベンチとの駆け引きも含め、そこで勝負するわけや。ベンチワークで勝負が決まった時の快感は何ものにも代えがたい。

 パのような豪快な点の奪い合いも華かもしれんが、野球をよく知っているファンは、“ここはランナーをバントで送って、(投手に)代打や”と監督気分で楽しんでいる。投手も野手のひとりとして打席に立ったほうが見る側も面白いと思うけどな。

※週刊ポスト2020年1月17・24日号

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