角居勝彦調教師、「ダービー馬はダービー馬から生まれる」

角居勝彦調教師、「ダービー馬はダービー馬から生まれる」

名調教師がダービーを語る

 競馬の祭典・日本ダービーが今年もめぐってくる。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、ダービー馬と種牡馬との関係について解説する。

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 競馬で大切なのは「今」です。競走馬の馬体重、パドックの様子。返し馬で状態を確認する。過去の戦績も検討材料ですが、「今」がもっとも大事なことは論を待ちません。

 しかしさらに過去にさかのぼって血統背景について考えると、競馬はさらに奥行き深く、面白くなります。とはいっても三大始祖云々なんていうところから始めると、なんだか難しそうなので、まずはレースに出走する両親と祖父母のことを辿ることから始めてはいかがでしょうか。

 過去10年のダービー馬のうち6頭は、その父がダービーを勝っています。そのうち3頭の父はディープインパクト。国内で13戦12勝というとてつもない成績を残し、種牡馬になってからも次々活躍馬を出しています。その他2009年ロジユニヴァースの父は2003年のネオユニヴァース。2015年ドゥラメンテの父は2004年のキングカメハメハ。そして2007年、角居厩舎のウオッカの父は2002年のタニノギムレット。つまり「ダービー馬から生まれたダービー馬」というわけです。

 ちなみにディープインパクトの国内唯一の敗戦は2005年の有馬記念で、このときの勝ち馬ハーツクライは、2014年のダービー馬ワンアンドオンリーの父。国内のみならず海外GIも勝っており、やはり強い父が強い子を送り出している。

 現代日本競馬の血統といえば、サンデーサイレンス(以下SS)を抜きにしては語れません。前出のディープインパクト、ハーツクライ、ネオユニヴァースのほか、2011年オルフェーヴルの父ステイゴールド、2008年ディープスカイの父アグネスタキオンもSS産駒。2015年ドゥラメンテは母アドマイヤグルーヴの父がSSです。初年度産駒がクラシック世代となった1995年(タヤスツヨシ勝利)以来、SS絡みの馬が2016年までに14勝をあげています。

 キングカメハメハが勝った2004年にしても2着から7着までがSS産駒でしたし、オルフェーヴルが勝った2011年は、出走18頭すべてがSSの孫でした。

 私が初めてSS産駒に接したのは松田国英厩舎の調教助手だった時。重賞を4勝し、桜花賞でも2着に入ったフサイチエアデールという牝馬でした。とても柔らかくて、いままで知っていた馬とは動きが違って、猫のように飛び跳ねる感じ……乗っている方は怖いという感覚でした。

 当時SS産駒がいるのは名門厩舎に限られていました。牡馬ならばすべて種牡馬になっていくような勢いがあり、事実後継種牡馬も次々に結果を出していました。

 だから2007年にウオッカが勝ったのは特筆モノかもしれません。父タニノギムレットはブライアンズタイム産駒。1997年のサニーブライアン、1994年のナリタブライアンとかつてはSSと種牡馬人気を二分していました。

●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後15年で中央GI勝利数23は歴代3位、現役では2位。今年12週連続勝利の日本記録を達成した。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。『競馬感性の法則』(小学館新書)が好評発売中。

※週刊ポスト2017年6月2日号

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