角居勝彦調教師が解説 芝とダート、馬はどちらが好きなのか

角居勝彦調教師が解説 芝とダート、馬はどちらが好きなのか

角居勝彦調教師が芝とダートの違いを語る

 毎週のように2歳馬がデビューしている。初めてのレースはやはり緑の芝の上を走らせたいというのが多くの馬主の“親心”だ。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、馬の「芝向き」「ダート向き」について解説する。

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 これまで血統の話が続きました。その馬が「芝向き」なのか「ダート向き」なのかも、判断のよりどころはとりあえず血統です。

 角居厩舎が預からせてもらっている馬は基本的に「芝向き」が多いのですが、それでもデビュー時期によってダートを走らせる場合もあります。冬場のデビューならばダートを走らせ、うまく走れば次走もダートへ、ということもめずらしくない。

 馬の状態、たとえばソエが出やすい馬はダートデビューがいい。ぜひともクラシック路線へ、といったオーナーさんの強い意向がなければ、安全に早めに勝たせてやりたい気持ちがあります。

 それで新馬戦で勝つと、「次は芝でいけそう」という雰囲気にもなります。ダートで2勝したカネヒキリの毎日杯挑戦もそうでした。その後はダートに戻り、獅子奮迅の活躍を見せてくれました。やはりダートでこそという馬だったわけです。

 今年の3歳にもダートで結果を出してくれた馬がいました。牡馬サンオークランドは2月の京都新馬戦ダート1800メートルで6番人気ながら1着、2走目は4着に敗れましたが、3走目の京都500万下では8番人気の低評価をひっくり返して1着でした。

 牝馬のクイーンマンボは、ダノンプレシャスの半妹で、牧場からは芝で走らせたいというリクエストがありました。それで3月の小倉・芝1800メートルでデビューさせましたが14着。しかし2走目のダートでは直線で抜け出し、2着に3馬身差の勝利。昇級戦も同じようなレースぶりで圧勝したので、地方交流戦である園田の兵庫CS(GII)に挑戦して3着。今週川崎競馬場で行なわれる関東オークスに出走予定です。

 いずれも「ダート血統」という判断ではなく、馬の状態や走り方を勘案してレースを選んだ結果です。

 ダートだってチャンピオンズCやフェブラリーSがあり、地方交流重賞もたくさんあるとはいえ、やはりメジャーのGIはすべて芝です。最初から“ダート王”を目指すというのは馬主さんからすれば抵抗があるでしょう。1年に何頭も所有している大馬主さんならば、これはダート路線でとなるかもしれませんが、ほとんどの馬主さんは、やはりクラシックを夢見ます。

 場内放送などで「柔らかな風にターフが揺れています」などとはいうが、「砂の上に心地よい風が吹いています」なんて聞いたことがない。「荒々しい日本海の波のような砂の上を~」なんていわない。

 馬はどちらが好きなのか? ダートのほうが脚が痛まない、足元がラクだ、と思う馬はいるかもしれない。でも牧場の草を走るイメージで、芝が好きかもしれない。

 馬は、どこの草が美味しいのかと移動する動物なので、草の匂いが好きだし、芝を走るほうが楽しいかもしれません。

●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後15年で中央GI勝利数23は歴代3位、現役では2位。今年は13週連続勝利の日本記録を達成した。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。『競馬感性の法則』(小学館新書)が好評発売中。

※週刊ポスト2017年6月23日号

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