元関脇・琴錦 「コンビニでビビビ」で弟子をスカウト

元関脇・琴錦の朝日山親方、一番弟子はコンビニでスカウト「一目見てビビビと感じた」

記事まとめ

  • 元関脇・琴錦の朝日山親方は、2016年千葉県鎌ケ谷市に部屋をおこした
  • 相撲の強い高校・大学とのつながりがない親方は、一番弟子をコンビニでスカウト
  • 7月場所初土俵を踏んだ高木城治の好きな有名人は「ももいろクローバーZ」とのこと

元関脇・琴錦 「コンビニでビビビ」で弟子をスカウト

元関脇・琴錦 「コンビニでビビビ」で弟子をスカウト

コンビニで発掘された朝日錦は朝日山部屋の一番弟子(本人のツイッターより)

 相撲ブームが沸騰している。「謎のスー女」こと尾崎しのぶ氏が、現在相撲コラムを週刊ポストで執筆中。今回は元関脇・琴錦の朝日山親方について尾崎氏が綴る。

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 去る七月場所初土俵を踏んだ高木城治、二十一歳。山梨の高校を卒業後、テレビ制作会社・フィルムデザインワークスに入社。検索したところ、スポーツ関連やバラエティ番組、とりわけ「ももいろクローバーZ」がメインのコンテンツを多く手がけている会社のようだ。高木の好きな有名人は「ももいろクローバーZ」と新弟子名鑑に載っている。

 フィルムデザインワークスではたらくうちに「ももいろクローバーZ」の魅力に気付いたのか、それとも以前から「ももいろクローバーZ」のファンであったから、彼女たちの番組・DVDを制作している会社に入ったのか。

 間違いかもしれないが、もし二つ目が入社の理由ならば、一般のファンよりずっと近いところで「ももいろクローバーZ」の姿を見て、ある意味の達成をしてその業界から旅立ったのではないかとも考えられる。

 高木は大相撲関連の番組に関わる中で興味を持ち、この度入門。百八十三センチ、八十八キロと大柄ではあるが、相撲経験はない。前相撲は〇勝三敗。ウムムこれはいかなるものか、と私はうなってしまったが、朝日山部屋の力士であると知れば、とりあえず大歓迎されての入門であったことだけはわかる。

 元関脇・琴錦の朝日山親方は、昨年千葉県鎌ケ谷市に部屋をおこした。中学卒業で相撲界入りしたため、相撲の強い高校・大学とのつながりがない親方は、奇跡の出会いを求めて日夜走り回っている。

 道を歩いては一人の少年も見逃すまじと目を血走らせ、レストランで食事をする時も「あのか細いウエイターが未来の弟子かも」と思うと味わう暇などない。だから高木の「力士になりたい」との声を耳にして、朝日山親方は「F1相撲」と呼ばれた現役時代さながらのスピードで捕まえにいったのだろう。

 朝日山部屋の一番弟子は、そんな地道な努力から発掘した朝日錦。中学卒業後コンビニでバイトをしていた彼を、朝日山親方は一目見てビビビと感じた。コンビニに通うこと五回、興味があったら連絡をくださいと名刺を渡す。それから半年考えた末に入門と相成ったのだが、半年とは結構長い時間のように思う。要するに彼は相撲には興味がなかった(野球とバスケットボールをたしなんではいたが、相撲は未経験)。

 そんな朝日錦も弟弟子ができるにつれ、顔付きが変わってきた。昨年五月場所。私は、花道で朝日錦が某親方から声をかけられているのを聞いた。

「今日もみんな連れて来たの? 兄弟子だもんね。がんばってね」

 三月場所デビューした群馬県前橋市出身の朝日丸(柔道経験者だが、これまた高校中退後アルバイトをしていた)と、この場所より前相撲を取るモンゴル出身の朝日龍と比較して、千葉県松戸市出身の朝日錦は東京近郊ネイティブなので土地勘が優れている。

 そしてなにより、彼らより二場所も早くから相撲界を知っている頼れる兄弟子なのだ。百七十センチに満たない朝日錦が、三周りも大きい二人を引率して国技館にやってきていた。ちょんまげを結うと表情も引き締まり、筋肉も付いてきてどんどんお相撲さんらしくなってきた。

 今年になって、親方の息子の松澤と、先の元テレビマン高木が入門。鳥取城北高校で相撲を学んだ朝日龍は、幕下中位で奮闘中。強さを近くで見て吸収しろ、と期待されてのことだろう。部屋を越えて横綱・日馬富士の付け人にも抜擢された。一年、いや半年で十両に昇進するかもしれない。しかし、どんなに番付を追い抜いたとしても朝日錦が一番弟子であることは動かない。

 朝日山親方は、仮に強くなれなかったとしてもどこの世界でも通用するようにしつけをして、仕事を紹介して送り出すと約束して弟子にしているという。ちゃんこ作りも掃除も、部屋に出入りする大人への対応も朝日錦にみんな教わっていく。いいなあ、と私は思う。役目を持った時に少年は成長していく。そういうプロセスを、朝日山親方と朝日錦に見せてもらっている。

※週刊ポスト2017年9月8日号

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