五輪やW杯の成績を左右する「アスリートの禁欲問題」

五輪やW杯の成績を左右する「アスリートの禁欲問題」

一流のアスリートは欲をどうコントロールするのか(写真/AFP=時事)

 東京五輪の金メダル候補として期待される競泳の瀬戸大也(26)のスキャンダル報道が世間を騒然とさせている。好感度抜群のエース選手の不倫に衝撃が走ったが、どこかで「やっぱり……」と思ってしまった人もいるのではないか。

 アスリートは、筋肉量や筋力の成長を高め、闘争心や性欲を上昇させる男性ホルモンの一種「テストステロン」の値が一般人より高いと言われている。その結果、性欲も強くなる傾向があるというわけだ。

 アスリートが一般人より体力があり、性欲が強いとすれば、それを持て余すなかで瀬戸のような不祥事が起こったと分析することもできる。

 プロゴルファーのタイガー・ウッズは120人もの女性と肉体関係を持ったとしてスキャンダルになり活動休止を余儀なくされ、「セックス依存症」の治療を受けた。

 スポーツ選手として好成績を残すためには、性欲は解消したほうがいいのか、我慢すべきなのか──。日本で表立って語られることはほぼないが、海外では五輪やW杯など大きな国際大会になると、“禁欲論争”が起きている。

 サッカーW杯では毎回、国によってセックス「禁止」か「推奨」かが取り沙汰されている。

 1998年のフランスW杯では、セックス禁止とされたベルギー代表のエリック・ドフランドル(当時24)が、「W杯で必要なのはスパイクとダッチワイフだ」と発言して物議を醸した。

 2014年のブラジルW杯では、メキシコのエレーラ代表監督が「禁欲が選手たちのパフォーマンスを最高に高める」として、大会期間のセックス禁止令を出したことが話題になった。だが、同大会ではセックス禁止令を公にしていたチームがすべてベスト16までに敗退。優勝したドイツは、妻や恋人との性行為を許可したチームだった。

 ボクシング界では元世界チャンピオンのモハメド・アリが、試合前の6週間、性行為や射精を控えたといわれたこともあってか試合前は「禁欲」という風潮が根強い。

日本人選手は禁欲的

 世界のトップアスリートが集結する五輪となれば、さらに禁欲の問題は複雑だ。1988年のソウル大会から選手村でコンドームが配られるようになっていることは知られているが、日本体育協会のスポーツドクターで代官山パークサイドクリニックの岡宮裕院長はこう語る。

「2012年のロンドン五輪の時は、信憑性は定かではないが、海外メディアが『(選手村で)選手の70〜75%がセックスをしている』という有名選手の声を伝えている。2016年のリオ五輪で配布されたコンドームは過去最多の45万個で、記念品として持ち帰る人がいたとしても多すぎますね」

 アトランタからロンドンまで5大会の五輪に帯同したスポーツドクターの小松裕氏はこう語る。

「欧米や中南米の選手は性に対する根本的な考え方が違うようで、開放的です。選手村のあちこちでボランティアの女性をナンパしているのを見ましたし、部屋に連れ込んだという話も聞きました。夜中に中米の有名男性選手が屋外で堂々とマスターベーションをしているのが見つかって、大騒ぎになったこともあります」

 そうした外国人選手に比べると、日本人選手は禁欲的だという。

「選手村にもメディアはいるので女性を連れ込むこともなかなかできないでしょう。2人部屋の選手たちは、マスターベーションができないストレスはあったと思いますが、そこは暗黙の了解で、片方が出かけて独りにしてあげるということはあるようです」(小松氏)

 実際にセックスが試合結果に影響を与えることはあるのか。前出の岡宮氏はこう語る。

「性行為は体力を使いますから、試合前にやりすぎると肉体的に疲れを残すので当然良くないでしょう。ただし、試合が近づき戦闘モードになっていく過程で、テストステロン値は上がり性欲も高まるからそれを抑えるとストレスが溜まってよくないという考え方もある。一方で精神的な重圧もあるのでそれどころじゃないとなる選手もいます。男女問わずにその選手次第です」

 岡宮氏によると、ある陸上短距離の有力な男性選手から「大きな試合前になると女性なら誰でもいいから性行為が無性にしたくなってしまう。僕は異常ですか」と相談されたことがあるという。こうした試合前に性欲を処理したくなる現象は、口にしにくいだけで他にもあるはずだという。前出の小松氏が語る。

「試合の前後に性欲をどうしたらいいのかに正解はなく、帯同する医師が指導するようなこともありません。たとえ指導者が指示を出していても医学的根拠はありません。一流選手ほど、自身の性欲マネジメント能力も高くなければならないということでしょう」

「五輪延期ショック」からのレース運びを誤った瀬戸には耳の痛い話だろう。

※週刊ポスト2020年10月16・23日号

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