復活のリードオフマン 楽天・西川遥輝が語る「忘れてはいけないもの」

話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、パ・リーグ首位の東北楽天ゴールデンイーグルスを牽引する、移籍1年目、西川遥輝選手にまつわるエピソードを紹介する。

【プロ野球西武対楽天】試合前、笑顔を見せる楽天・西川遥輝=2022年4月23日 ベルーナドーム(西武ドーム) 写真提供:産経新聞社

パ・リーグの首位を走る楽天。不動のリードオフマンとしてチームを文字通り牽引するのは、開幕から活躍を続ける西川遥輝です。

4月28日の時点で、打率.320、安打数24、本塁打3、打点15、盗塁6、得点圏打率.429、出塁率.464と申し分ない働きをしている西川。なかでも1番打者として出色なのは、打率と出塁率です。

もともと、12球団一ともいえる選球眼を持ち、昨季(2021年)のように打率2割3分台と低調であっても四球の多さで出塁率を上げ、チームに貢献してきた西川。それが今季(2022年)は、打率.320と見違えるような数字をマーク。今季のパ・リーグは例年以上に「投高打低」であり、28日現在、規定打席到達者で打率3割を超えている打者が6人しかいないことを考えれば驚くべく数字です。

また、今季初ヒットはロッテ・佐々木朗希からの二塁打でした。古巣・日本ハムとの3連戦では11打数5安打4打点と大当たり。4月16日のソフトバンク戦では、1点ビハインドの9回に守護神・森唯斗から劇的な逆転2ラン。翌17日には先頭打者アーチを含む4安打4打点と、打つべきときに、打つべき相手から放った価値ある一打ばかりなのです。

西川はFA権を持っていた昨年オフ、日本ハムから「ノンテンダー」を告げられました。「ノンテンダー」とはメジャーリーグが導入した契約制度で、球団が来季の契約を提示しないまま、いったん移籍市場に放出することです。年俸が成績に見合わなくなった選手に対し球団側が使う手法で、日本ハムと再契約する可能性も残されましたが、その場合は大幅な減俸が予想されました。

西川は日本ハム退団を決意し、オファーがあった楽天へ移籍。当初、楽天が西川を獲った狙いは、走塁面での改革を促すこととみられていました。チーム盗塁数が昨季まで4年連続リーグワーストという点を考えると、盗塁王を4度獲得した西川は最良のピースでしたが、打力でもチームを救う存在になるとは、石井一久GM兼監督にとって嬉しい誤算でした。

もちろん、当初期待していた走塁面でも存在感を発揮。それは盗塁数だけではありません。春季キャンプでは奈良原浩・内野守備走塁コーチから“臨時走塁コーチ”に指名されました。西川自身、この“教える立場”について、次の言葉を残しています。

『イーグルスに入ったからには少しでも貢献したいという気持ちもあります。僕が入ったことによってプラスの効果を与えられたらいいですし、僕の持っていることで伝えられる部分だったら、何でも伝えていきたいなと思っています』

〜『週刊ベースボールONLINE』2022年2月19日配信記事 より

日本ハム時代、よくも悪くも「自分の成績がいちばん」という印象だった西川。移籍後はうって変わって、フォア・ザ・チームに徹する姿を発揮したからこそ、自然とチームにも溶け込めたのです。

楽天移籍後の西川には、他にも“変化”を感じる場面があります。日本ハム時代はスマートで洗練された雰囲気がありましたが、今季は一転、西川のプレー内容を見ていると、真逆の「泥くささ」「逞しさ」を感じます。

たとえば、開幕2戦目のロッテ戦では、二盗した際にヘッドスライディングを敢行。泥だらけになったユニフォーム姿のまま、浅村のヒットで一気にホームインしました。まさに、泥にまみれながらチームを牽引しているのです。

ただ、この姿は“変化”というよりも、“原点回帰”と言った方がいいのかも知れません。

『日本ハムに入ったときの記憶がよみがえって、「こんな感じだったなあ」と懐かしさもありつつ、忘れてはいけないものも忘れていたなと、そんなことを感じたりもしています』

〜『週刊ベースボールONLINE』2022年2月19日配信記事 より

「忘れてはいけないものを忘れていた」と語る西川。この言葉を聞いて思い出したのは、智弁和歌山高校時代の「根性むき出し、闘志むき出し」の姿です。

高校時代の西川は、入学早々「1番・ショート」に抜擢。春季大会で早くも4本塁打を記録。「スーパー1年生」としてチームを甲子園に導きました。ところが、練習中に腕を骨折。それでも西川は痛み止めの注射を打ち、甲子園の舞台でヒットを量産したのです。

そんな10代のころの「がむしゃらさ」が甦った西川。30歳とまだまだ老け込む年齢ではありません。それを自覚するかのように、こんな頼もしいコメントを残しています。

『天狗になっていたわけではないですけど、ある程度経験を積んでくるといろいろなプライドが邪魔をすることもあり、そのすべてを取っ払ってくれたというのは自分の中で人間として、選手としてまたレベルアップできるんじゃないかなと思っています』

〜『週刊ベースボールONLINE』2022年2月19日配信記事 より

チームが目指すのは、9年ぶりのリーグ制覇と日本一。泥臭く、さらなるレベルアップを目指すリードオフマンから目が離せません。

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