ONを超える「19回受賞」の選手は

話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、11月25日に発表、26日に表彰が行われる「プロ野球ベストナイン」にまつわるエピソードを取り上げる。

プロ野球 巨人 今季の長嶋茂雄(右)と王貞治は足並みをそろえて大活躍だった。来季もふたりは巨人の原動力だが、かれらにつづく打者の出現が大きな課題=1963年 写真提供:産経新聞社

「素直に嬉しいです。この賞を励みに、来年もチームのセ・リーグ連覇、日本一に貢献できるように頑張ります」(巨人・坂本勇人/2年連続5度目)

「まさか選ばれるとは思っていなかったので、とても嬉しいです。来季もチームが優勝することがいちばんですが、自分自身としてもこの賞を毎年狙うことができるように、しっかりプレーして行きたいと思います」(中日・高橋周平/初受賞)

25日に発表された、2019年のプロ野球ベストナイン。ポジション別に(パは指名打者も含む)そのシーズンで最も活躍した選手を、5年以上の取材経験を持つ各メディアの野球担当記者が投票で選びます。今年(2019年)の受賞者は以下の通り。

 

<セ・リーグ>
【投手】山口俊(巨人)【捕手】會澤翼(広島)
【一塁手】D・ビシエド(中日)【二塁手】山田哲人(ヤクルト)【三塁手】高橋周平(中日)【遊撃手】坂本勇人(巨人)
【外野手】鈴木誠也(広島)・丸佳浩(巨人)・ソト(DeNA)

<パ・リーグ>
【投手】千賀滉大(ソフトバンク)【捕手】森友哉(西武)
【一塁手】山川穂高(西武)【二塁手】浅村栄斗(楽天)【三塁手】中村剛也(西武)【遊撃手】源田壮亮(西武)
【外野手】秋山翔吾(西武)・吉田正尚(オリックス)・荻野貴司(ロッテ)
【DH】デスパイネ(ソフトバンク)

 

納得の顔ぶれが並んでいますが、「投票」によるアヤで、受賞を逃すケースもあります。三塁手部門で初選出された中日・高橋周平の受賞コメントに「まさか選ばれるとは」とありますが、おそらく高橋は、優勝した巨人の4番・岡本和真が選ばれると思っていたのでしょう。

ところがフタを開けてみると、高橋…142票、岡本…101票と、意外な大差で高橋がトップに。実は、岡本は一塁手部門でも48票を獲得しており、票が割れてしまったことで割を食ってしまったのです。ポジション別に投票するシステムだと、複数のポジションをこなすユーティリティプレーヤーは、どうしても不利になることは否めません。

ただし、票がきれいに割れた結果、1人の選手が2つのポジションで得票数トップになるケースもあり得ます。実は過去、1度だけそういうケースがありました。

1966年、南海ホークス(現・ソフトバンク)の国貞泰汎は、二塁手・三塁手の2部門で1位となりましたが、このときは、より票数の多い二塁手部門のみで受賞。三塁手部門は、次点の選手が繰り上がりになりました。

では、2部門同時受賞は不可能かというと、そうではありません。過去、その快挙を実現した選手が1人だけいます。二刀流・大谷翔平(当時日本ハム、現・エンゼルス)です。

大谷が、ローテーションの柱&DHの両方で活躍し、シーズンMVPに輝いた2016年、「大谷は投手部門・DH部門、どちらで投票したらいいのか?」という問題が浮上。

それまでDHと投手の重複投票は認められていませんでしたが、急遽規定が変わりOKに。大谷は投手部門で111票、DH部門で190票を集め、いずれも圧倒的トップの得票数で史上初の2部門同時受賞に輝いたのです。規定投球回数にも、規定打席にも達していない選手のダブル受賞は画期的なことでした。

また複数年にわたる連続受賞も、大きな勲章です。年による好不調の波がなく、攻守両面でライバル以上の活躍をすることが条件になりますが、今年の受賞者では4年連続が最長。セの鈴木誠也(三塁手)・丸佳浩(外野手)、パの浅村栄斗(二塁手)の3人です。丸と浅村は今季ともに移籍を経験。環境が変わったなかでの4年連続受賞ですから、非常に価値のある記録と言っていいでしょう。

このベストナイン連続受賞を、新人の年から引退の年までずっと続けた選手が、たった1人だけいます。ミスタープロ野球・長嶋茂雄(巨人軍終身名誉監督)です。

ルーキーイヤーの1958年、本塁打王・打点王・新人王に輝き初のベストナインに選ばれてから、引退した74年まで17年連続、三塁手部門で受賞。これだけ長い現役期間中、すべてベストナインに選ばれた選手はミスターだけ。空前絶後の記録です。

ただし、この「17年連続」は最長記録ではありません。さらに上の「18年連続ベストナイン」を達成した選手がいます。プロ4年目の1962年から、引退前年の1979年まで一塁手部門で選出された王貞治(巨人)です。つまりONは、1962年〜1974年まで13年間、ずっと一塁手・三塁手部門を独占していたことになります。この間、V9を含む日本一10回。やはりONは別格でした。

ところが、上には上がいます。受賞回数でONを上回ったのが、南海時代の野村克也です。1956年に捕手部門で初受賞すると、68年まで13年連続受賞。さらに70〜73年、75〜76年にも受賞し、計19回のベストナインは史上最多です。

「ワシの記録はほとんど、王が塗り替えた」とボヤくノムさんですが、この記録は抜かれませんでした。あらためて……ONと野村克也は別格です!

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