坂本の代役として開幕スタメンも 高卒3年目・湯浅大が開花したワケ

話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、練習試合で快打を連発しアピール、開幕スタメンの可能性も出て来た巨人注目の若手、湯浅大選手のエピソードを取り上げる。

【プロ野球練習試合DeNA対巨人】1回 2点本塁打を放つ巨人・湯浅大=2020年6月10日 東京ドーム 写真提供:産経新聞社

いよいよ19日から開幕するプロ野球。調整のために設定された練習試合も14日で終了し、各チームの陣容も見えて来ました。リーグ連覇を狙う巨人は、練習試合10試合を3勝5敗2分で終了。気になるのは、新型コロナウイルス感染が判明し入院していた坂本勇人・大城卓三の両選手が開幕戦に間に合うのか? ということです。

2人は練習試合にスタメン出場していたほどで、体内から検出されたウイルスもごく微量でしたが、大事を取って入院。12日に退院しましたが実戦からは離れており、調整不十分なまま出場すれば故障の危険もあります。14日、開幕戦のオーダーについて聞かれた巨人・原辰徳監督は「いろいろなバリエーションがある。オーダーは、キチッとした形ではいまのところまだ言えない」と回答。両者の開幕スタメンについては、ギリギリまで様子を見る方針のようです。

もし間に合わないとなれば、2人のコンディションが整うまでの「代役」が必要ですが、坂本が守るショートについては、頼もしい候補が現れました。高卒3年目の20歳・湯浅大(ゆあさ・だい)です。オープン戦では打率.391。2日から再開された練習試合期間も、本塁打2本、打率.318の活躍を見せ、開幕スタメンに大きくアピールしました。

湯浅は、群馬・健大高崎高から2017年のドラフト8位で入団した右打者で、俊足・強肩が売り物です。下位指名での入団ですが、その野球センスは、かねてから高く評価されていました。まず打撃に関しては、インコースの球をさばくのが非常にうまいのです。

7日のヤクルト戦では「2番・遊撃」で先発出場。2回に左腕・高橋奎二が内角に投じた145キロのストレートを左翼ポール際の最上段に運び、3ラン本塁打。さらに10日のDeNA戦では、同じ高卒3年目の右腕・中川虎大(こお)の内角を突く146キロを捉え、左翼席中段へ。原監督も「自分のポイントを持っている感じがする。あれだけ難しいインコースのボールでも、全く打球が(ファールゾーンに)切れないからね」と絶賛しました。

内角球を打つには、「ボールを呼び込んで打つ」技術が必要で、これは一朝一夕では身に付きません。湯浅は弱冠20歳にして、すでにその技術を持っている。湯浅のバッティングを見た評論家が一様に「あの若さで、大したもんだ」と口にするのもわかる気がします。

またショートの守備にも定評があり、ゴロを捕る際の「初動」が早いのが特徴です。他の野手よりも一歩早く打球に追い付くことができ、この感覚も簡単に身に付くものではありません。攻守ともに「センスの塊」なのです。

「そんな選手が、なぜドラフト8位だったの?」と疑問に思われるでしょうが、入団時は線が細かったのと、打てなかったからです。しかし湯浅はとにかく練習の虫で、ジャイアンツ球場には毎朝必ずいちばんのり。全体練習が終わっても居残り練習を続け、コーチを捕まえては指導を仰ぐ……高度な内角打ちも、そうして身に付けて行ったのです。

その間には、試練もありました。2年目の昨シーズン(2019年)、2軍でレギュラー定着を目指していた湯浅は、3月のイースタン・リーグ開幕戦で腰痛を発症。長期離脱を余儀なくされたのです。しかしこの期間に、湯浅はあらためて自分のプレーを再検証しました。バッティング、遊撃守備の動作を録画し、どうして腰に負担が掛かったのかを細かく分析。無駄な動きを省いた理想のフォームをつくり上げたのです。

また、2018年の育成ドラフトで入団した健大高崎高の1年後輩・山下航汰が支配下登録されたことも刺激になりました。山下は昨シーズン、ファームで首位打者に輝き、今季も好調を維持。巨人の高卒野手では坂本以来となる「10代開幕スタメン」もあるかも? と言われていましたが、5月に右手有鈎(ゆうこう)骨を骨折。開幕スタメンは絶望となりました。

「後輩に負けてなるものか」と発奮した湯浅ですが、離脱した山下の悔しさは、昨年自分も同じ体験をしただけによくわかります。後輩が実現できなかった夢は、自分が代わりに成し遂げる……湯浅のプレーを見ていると、そんな意気込みすら感じます。

今年(2020年)1月には、子どものころから憧れていた坂本と一緒に自主トレを志願。坂本からいろいろと打撃や守備について教わった他、その圧倒的な練習量を見て「ますます尊敬した」そうで、そんな積極性も湯浅の長所の1つです。

昨年のオフはFA補強に失敗した巨人ですが、そのお陰で若手にチャンスが増えたことは、むしろチームにとってプラスでしょう。

湯浅について「坂本の代わりということについてはまだまだ早いでしょうけれど、若い力が出て来ているということは確実に言えると思いますね」と語った原監督。変則日程で6連戦が続く今シーズンは、坂本を休ませたいときに湯浅をスタメン起用することもあるはず。連覇のカギは、湯浅が強力なスペアになれるかどうかに懸かっています。

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