世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「大坂なおみ問題とイチローの記憶」

福本豊

 テニス界のことはよくわからないけど、大坂なおみの全仏オープン棄権は残念なニュースやった。試合後に義務づけられている会見のボイコットを表明して、世界中を騒がせての結末。「鬱」に苦しんでいたことも告白した。大ごとになる前にもうちょっと、うまく着地することができればよかったんやけど。

 大坂なおみは負け試合の後の会見が嫌やったようやけど、確かにその気持ちはわからんでもない。僕も現役時代は試合後、傷口に塩を塗られるような取材を何度も受けた経験がある。口を開くのが嫌な時もあったけど「今日は失敗しましたわ。次、頑張ります」と答えて、気持ちを切り替えていた。大坂なおみは何でも真面目に答えようとしすぎたのかもしれん。

 それと、女性やから余計にきつい部分もあったと思う。でも、マスコミとの付き合いはスター選手の宿命。会見で着用している帽子や服にもスポンサーがついている。何十億円も稼いでいる選手なんだから、それも仕事のうちと思ってやらなアカンやろな。いきなり会見拒否ではなく、「今はこういう心と体の状態なので、会見は手短にお願いします」と真剣に頼めば、メディアから無理を言われることはなかったと思う。

 スター選手とマスコミの関係で言うと、かつてイチローもいろいろあった。オリックス時代に口を開かない時期があり、新聞記者に頼まれて僕も仲介役を買って出たことがあった。イチローが言うには「憶測でいろいろ書かれるのが腹立たしい」と。「それならもっとたくさん話して、事実を書いてもらえるようにしなさい。話をしないから憶測で書かれてしまうんやで。スターを作るのはマスコミなんやから」と諭した。

 イチローはメジャーに行っても、特定の記者としか話さないなどと言われたこともあったけど、東京ドームでの引退会見は、質問がなくなるまで話し続けた。「マスコミなくしてスターは生まれない」ということを理解していたと思う。

 どんな世界記録を作っても、優勝しても、報道してもらえないマイナースポーツもある。そう考えると、プロ野球選手はほんまに幸せ。過去のマニアックな記録とかも引っ張り出して、大きく取り上げてもらえるんやから。阪神のドラフト1位ルーキーの佐藤輝もそう。5月28日の西武戦で1試合3発を放った。新人ではあの長嶋さん以来だという。その記録もマスコミが調べて報じてくれないとわからなかったこと。今や阪神ファンだけでなく、野球ファンが最も見たい選手となった。ホームランだけでなく、三振しても絵になる選手。オールスターファン投票の中間発表で、全体の1位の票数を獲得したのも当然な気がする。

 それにしても今年のオールスターは佐藤輝だけでなく、勢いのある新人が盛り上げてくれそう。広島の守護神の栗林や、DeNAの牧も楽しみ。残念なのは、西武の若林。1番打者に定着して、12球団トップの20盗塁をマークしていたのに、5月30日の阪神戦のセンターの守備で左膝の前十字靱帯を損傷した。今シーズンの復帰は難しいかもしれん。盗塁王のタイトルを獲得して、全国区のスターになれるチャンスやっただけに痛すぎる。佐藤輝もケガだけには気をつけなアカン。ファンのためにも、危ないヘッドスライディングだけはやめてほしいな。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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