世界の福本<プロ野球“足攻爆談!”>「開幕するなら練習体制を考えるべき」

福本豊

 盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!

 ほんまに大変なことになってきた。阪神の藤浪ら3選手が新型コロナウイルスに感染したニュースはショッキングやった。12球団がバタバタとチーム活動を休止し、4月24日の開幕もあきらめざるをえなくなった。僕も朝晩必ず検温して、体調に細心の注意を払っている。いつになったら開幕できるのか見通しがまったく立たない状況。選手も調整が難しい。

 長いプロ野球の歴史でも前例のない異常事態。もし僕が現役選手やったとしたら、途方に暮れていると思うで。阪神のように甲子園や鳴尾浜の施設も閉め出しという状況になると、家の近くを走っておくしかない。どんな状況になろうと足回りだけはしっかり鍛えておかないと、故障につながるから。あとは素振り。キャンプから作り上げてきたスイングの形が崩れないよう、黙々と振り込むしかない。頭の中で投手の球筋をイメージして、タイミングの取り方も考えながらの素振りとなる。

 でも、野手はまだ調整がしやすい。体自体はいったん仕上げているから、ある程度、体を動かしておけば、すぐに試合ができる状態には持っていける。それに、開幕にトップの状態にしなくても、試合を重ねる中で調子を上げていけばいいんやから。ただ、投手の場合は肘、肩の問題がある。キャンプの投げ込みから始まり、オープン戦で徐々に球数を増やしてきていた。開幕を逆算しての調整ができないとなると、ほんまに難しい。いざ開幕が決まっても、調整登板も必要となるし、1カ月ぐらいは欲しいやろな。

 そう考えると、活動休止期間中に練習施設を開放するかどうか、球団によって違うのは不公平やと思う。球場での自主練が許されているなら、キャッチボールの相手もおるし、ブルペンでキャッチャーを相手に投げることもできる。野手も選手同士の距離を取ることを心がけながらノックを受けられるし、マシン打撃もできる。今年の開幕をあきらめていないなら、それぐらいの練習は許してあげないと。キャッチボールしたボールから感染するとか言いだしたら、野球はしばらくできない。

 僕の通っていたスポーツジムもガラガラやけど、選手も一般のジムを使うわけにはいかない。密集を避けるため、時間差を作るなどして、球団のトレーニングルームを使うことはできないのかな。サラリーマンの満員電車での通勤のほうがよっぽど感染のリスクが高いと思うし。

 でも、ロッテに移籍した鳥谷は、今の阪神の選手と同じような環境で、自主トレから練習を続けていたんやな。キャッチボールする相手もおらんから、1人で壁当てをしていたという。キャンプも参加していないのに、ロッテでの練習試合の映像を見ると、野球ができる状態に仕上がっていた。拾ってくれる球団があるのかわからない中でも、気持ちを切らさずにやってきたのは大したものやで。

 再び自主練となっても、鳥谷のように何をすべきかわかっている選手は強い。新入社員と同じで、経験のない若い選手のほうが大変なのは間違いない。いつになるかわからない開幕やけど、各選手のメンタルが試されるシーズンになるかもしれんな。今は、これ以上の感染者が球界から出ないことを願うばかり。パ・リーグの戦友、梨田の病状も心配でたまらない。回復を心から祈っている。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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