体育会系は本当に就活有利なのか?「部活×就活」をチームで取り組む方法とは

大学卒業後、社会人としてどんなキャリアを歩むのか。就職活動という“人生の第一関門”は、スポーツに青春を捧げてきた全国の体育会所属学生にも例外なく訪れる。

この「部活×就活」というテーマに、チームで本気で取り組むのが北陸大学卓球部だ。

必ずしも体育会有利では無くなりつつある昨今の就活戦線。ここに真っ向から挑む方法を具体的に聞いた。

大学1年時から就活を意識する時代

終身雇用が当たり前だった一昔前は、“人材は採用してからじっくり育成する”というスタンスの会社が多かった。ところが、時代は変わり「新卒でも即戦力が欲しい」というのが今の企業の本音だ。

そんな採用ニーズの変化を理解せず、昔のように「体育会は有利だから大丈夫」と思って準備を怠っていたり「スポーツしかできない」と思われてしまうと、例え有名大学出身でも内定がもらえない時代になっている。

大学職員でもある北陸大学卓球部の木村信太監督は、この就職環境の変化を敏感に感じ取り、対策を打ってきた。

北陸大学卓球部、木村信太監督、中陳辰郎選手
写真:木村信太監督(右)と中陳辰郎選手/撮影:ラリーズ編集部

「実際に就職先が決まるのは4年生ですが、本学は1年生の時から就活を意識させています」(木村監督)。

実際に就職支援会社を年3回ほど招き、1年生から3年生までの部員を対象にキャリアガイダンスを実施している。

その成果もあって例年毎年10月には4年生全員が企業から内定を貰い、進路を確定させている。上場企業や金融機関、全国各地の地場産業に加え、公務員、教員など希望のキャリアを叶えてきた。

就活全勝を引き寄せた3つの理由

中陳、北陸大学
写真:中陳辰郎(北陸大学)/撮影:ラリーズ編集部

現在北陸大学卓球部4年の中陳辰郎は、第一志望だった地元富山県の大手建設会社への就職を決めた。

部活もあり、特段早く活動を始めたわけではないが、2月からエントリーをスタートし、1DAYインターンや面接などをクリアした結果、受けた3社全てから内定を貰えたという。

「思っていたよりも、スムーズに就職活動を終えられました。部活もあるので、受ける企業数は絞りましたが、その分行きたい会社だけを受けました。全てがアピールの場だと思って、企業説明会に行く時は事前にその会社のことを調べて、当日必ず手を挙げて質問をしましたね。あとインターンに行く時も20個は質問を用意して、志望度の高さをアピールしました。意外と他に質問する積極的な学生は少なかったので、人事の方から評価されたように思います」(中陳)

卓球の試合前にライバルを研究するのと同じ感覚で、受ける企業の強いところ、良いところを見つけ、自分がどう役に立ちたいかを明確にしていったのだという。

いわゆるガクチカ(学生時代に力を入れたこと)では、卓球での経験を正直に伝えたことで人柄が伝わった。「1年の時にインカレメンバーから外れて悔しかったこと。2年の時に今までで1番必死に練習をしたのに全日学予選で負けてしまって卓球を辞めようと思ったこと。監督やチームメイトに支えられてもう一度卓球に向き合えたこと。縁あって1人でスペインリーグに挑戦させて貰えて、そこで価値観が変わったこと。そういう全ての経験を人事担当の方が興味を持って聞いてくれました」(中陳)

また、普段部活で叩き込まれている当たり前の礼儀作法も、他の学生よりも評価されたポイントだったようだ。

「監督やコーチからのLINEには即レス。語尾は『了解しました』ではなく、『承知致しました』。こういう社会人の常識は普段木村監督から指導頂いていますから。あとは見た目というか第一印象にもかなり気を遣いました。きちんと髪を切ってセットして、スーツとYシャツは面接のたびに毎回クリーニングに出して、靴もピカピカに磨いて行きましたね。面接会場に入ってお辞儀をしてから座る練習も沢山しましたよ。お辞儀の角度とか完璧です(笑)」(中陳)

第一志望から内定を貰えた中陳は再び部活に燃えている。「この4年間で北信越で優勝も出来たし、国体にも出られた。最近は卓球メーカーのアンドロさんと契約して貰えて昔からの夢が全て叶った。あとは最後の全日学でランク(ベスト16)に入りたいですね」(中陳)

スポンサー企業、ホームページ  部活のすべてが就活に繋がる

小池、北陸大学
写真:小池皓(北陸大学)/撮影:ラリーズ編集部

今春、北信越学生チャンピオンに輝いた4年の小池皓は大学卒業後、地元に戻り、父が経営する住宅関連の会社で働くことが決まっている。

北陸大学卓球部のスポンサー企業とのやり取りを通じて、企業間取引の実態を目の当たりに出来たことが大きいという。

「スポンサー企業さんとの窓口を担当させて貰っていて1人で車で行くこともありますし、監督と一緒にスポンサー契約の延長のお願いに伺ったこともあります。営業や契約ってこうやってコツコツやるんだなということを実感出来た時、父が会社を運営するためにどれだけ頑張ってきたかが分かったんです。改めて父を尊敬するようになり、他の会社に就職するより、隣で手伝いたいと本気で思うようになったので進路を決めました」(小池)

また、これから就職活動に臨む3年の松山航大は広告業界を志望している。

「1、2年生のうちから企業研究を重ねるうちに、広告代理店に興味を持つようになりました。チームで動くけど、1人1人のパフォーマンスが大事。そういう環境に憧れます。卓球の団体戦に近いのかもしれないと思っています」。

そんな松山はチームのために今できることは無いかと考え、今年6月に卓球部のホームページ(https://sites.google.com/hokuriku-u.ac.jp/tabletennisclub/)を1人で立ち上げた。

「他の大学のホームページはもちろんですが、Tリーグやサッカーの実業団チームのページなども参考にしました。うちは大学卓球部では珍しく、スポンサー企業さんがいたり、地域貢献活動のボランティアなどもやっているので、そういう活動を行っているチームのサイトが参考になります。GoogleSiteという簡単にページを作れるサービスを使いました」(松山)

現在はアクセス解析やネット広告のことなどを独学で勉強中。今後はチームの事に加えて、北信越の卓球情報を発信して、大学進学を考えている高校生に役立つ情報を提供したいと意欲的だ。もちろん“ガクチカ”でこのことを話すつもりなのだろう。

これからの社会に求められる人材とは

取材を通じて思う。

体育会系・文化系という区分けさえ、前時代的なものになっていくのかもしれない。

これからの社会で働く上で大切なことは、時代のニーズに柔軟に対応し、自分を常にアップデートしていく力を備えているかどうか。

そして、その点においても、北陸大学卓球部の各部員は、確かに鍛えられていた。

文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)

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