河田正也会長と考える大学卓球7000人のキャリア

※卓求人.comとの共同企画として制作しました

日本には大学で卓球部に所属する学生が約7000人もいる。日本代表として世界で活躍するトップ選手から、好きで卓球を続けてきた選手までその層は幅広い。

そんな大学卓球界を温かく見守るのが、日本学生卓球連盟の河田正也会長だ。

河田氏は、日清紡ホールディングスで現役の会長を務める傍ら、自らも月2回の練習を欠かさない現役プレーヤーでもあり、全国各地で行われる試合にも観戦に行くほどの卓球愛好家でもある。

大学卒業後のキャリアに卓球はどう活かせるのか。
上場企業の経営者として、また学連のトップとしての目線からお話を伺った。

クラリネットからラケットへ 卓球は大学スタートだった

――河田さんは一橋大学卓球部OBと聞きました。
河田正也会長(以下、河田):
ええ、中高は吹奏楽部でクラリネットを吹いていたんですが、大学では体力もつけたいと思い、勇気を出して初心者ながら卓球部に入部しました。

――どうでしたか。
河田:
楽しい思い出も多いです。経験者が多いなかでも、コーチや先輩も初心者にも親切で、練習は真面目に出ましたね。私はさして強くはなりませんでしたが(笑)。

2年の終わりからマネージャーをやるように言われ、会費集めで先輩回りにも奔走して、OBとの関係は広がりましたね。

河田正也
写真:河田正也氏(日清紡ホールディングス 取締役会長)/撮影:ラリーズ編集部

キャリアの要所に卓球あり

――その後、新卒で日清紡に入社され、2013年に社長、現在は取締役会長を務められています。端折りすぎてすいません(笑)。社会人として第一線を走り続けている河田さんですが、そのキャリアに、大学卓球部の経験が役に立ったことはありますか。
河田:
大学では先輩後輩との関係やマナーの点で、人間関係を培っていくうえで役に立ったように思います。体力や健康面もですね。入社後は、会社の各拠点に卓球台があって、卓球で社内の人たちと親しくなったり、海外出張時も卓球台があれば現地の人と楽しむこともありました。

日清紡は以前は各工場に女子卓球部があって実業団チームとしても熱心に活動してました。

――そうなんですね。
河田:
ええ。1975年に僕が入社するかなり前から社内スポーツは盛んで、10数工場を4地区に分け各地区大会で勝ちぬいたチームが、今度は全日清の中央大会で優勝を競ってました。女子は卓球と9人制のバレーボール、男子も野球と軟式テニスがあって昔はインターハイの優勝選手も入社したりしていましたね。1990年代に残念ながらクローズしましたけどね。

でも、当時の日清紡の、あの工場の卓球部にお世話になりましたっていう声を卓球界の方からお聞きすることがありますが、うれしい思いです。

そういえば西新井の工場の最後の女子卓球部キャプテンと、1,000本ラリーをしたこともありました。

河田正也
写真:河田正也氏(日清紡ホールディングス 取締役会長)/撮影:ラリーズ編集部

――1000本ラリーですか。
河田:
本社勤務の時、近くの浜町の体育館で。仕事終わってから、有志が集まって月に2、3回やっていた時期がありました。

みんなその年の目標を掲げるわけですよ(笑)。私は高望みして1000本ラリーを続けたいなと。そうしたら彼女がそれをサポートしますって言ってくれて、でも600とか700本とかで毎回僕が失敗するんですよね(笑)。相手はうまいから、いつも打ちやすいコースにボールを返してくれるんだけど。3ヶ月くらいたってようやく1007回続きました。やはり僕のミスでした、2000本めざそうと欲が出たとたんに(苦笑)。

河田正也
写真:河田正也氏(日清紡ホールディングス 取締役会長)/撮影:ラリーズ編集部

ナショナルチームのオフィシャルスポンサーも

――日本代表のスポンサーに手を挙げたのも、そうした会社と卓球の繋がりもあったんですか。
河田:
そうですね。そうしたベースもあって、2018年から関わることにしました。個人的に私が卓球観戦が好きというのは置いておくとして(笑)。卓球界を応援できればということで、現時点では2024年度まで契約しています。

早田伊藤
写真:日本代表ユニフォームに入る日清紡のロゴ/提供:wtt

――いろんなカテゴリーの大会会場で、河田さんを拝見します。
河田:
たまに、暇なんですかって言われますけどね(笑)。

卓球を観るのは好きですし、もちろんチキータや3球目攻撃とかも素晴らしいけど、想定外のラリーが続く時の動きが特に好きですね。最後まで全力で頑張る選手をリスペクトしますし、荻村伊智朗氏の「卓球は時間と空間の総合芸術」の言葉も思い浮かびます。

日学連の会長に

――2021年からは、一般社団法人 日本学生卓球連盟(日学連)の会長にもなりました。
河田:
児玉(圭司)前会長から突然お話がありまして、なんで私なんですかと。青天の霹靂でしたね(笑)。他方で、児玉さんの卓球への深い思いや情熱も感じましたし、私も時間的にはなんとか対応できそうなので、私でもいいのならと、最終的に受けさせて頂きました。

――コロナ禍での船出は大変だったのではないでしょうか。
河田:
コロナ禍は大きいですが、私自身日学連の活動自体が初めてで、過去とも比較できませんし、大変さの程度も実はよくわかってないんです(笑)。

スタートにあたって話したのは、現場重視、多様性尊重、そしてコミュニケーションを大切にすること、の3つです。これからの時代おそらくどんな組織や場面でも益々大事になってくるでしょうから、こういう観点でやっていきましょうと。

河田正也
写真:河田正也氏(日清紡ホールディングス 取締役会長)/撮影:ラリーズ編集部

――会長就任以降、学生の大会を“できる限り開催する方向だ”といつもおっしゃっていました。
河田:
はい。2020年はコロナ禍でほとんどの大会ができない中でも、児玉会長はじめ幹部層の人たちの「学生たちに何とか活躍の舞台を与えたい」との強い思いを感じてましたし、私も新会長として可能な限り開催する方向で臨みたいとの気持ちは強かったですね。2021年、なんとか3大大会を実現できました。各主幹学連や関係者の努力に感謝してます。高体連との合同強化試合や東北復興支援講習会が再開できたこともグッドニュースでした。

あとは、打ち合わせをwebでやって、コロナ禍でもコミュニケーションをしっかりとるようにしました。シニア層の幹部の方々もいらっしゃいますが、webでやりましょうと。振り返ってみたらこの1年で30回くらい大小のWeb会議をやりました。

写真:インカレ優勝を果たした早稲田大学卓球部女子/撮影:ラリーズ編集部
写真:2021年インカレ優勝を果たした早稲田大学卓球部女子/撮影:ラリーズ編集部

――多様性というのは。
河田:
大切な点ですね。

ジェンダーや国籍は言うまでもないですが、年齢軸でみても70~80才台の大先輩から20才前後の現役学生まで、半世紀前後の年齢差の人たちが同じ日学連で活動しているわけです。

世代間で発想や考え方が違うのは当然で、そこで意見交換し、活発に語り合うことで新しい何かに気づいたり生まれたりするんだと期待してます。ジェンダー、地域、世代、個人、現場ごとの多様性の尊重とは、多様な状況の放置や無関心ではなく、コミュニケーションによって包摂しあえる関係を高めていくことだと思います。

また、会議の場でもオープンに透明性をもって参加者が遠慮なく多様な意見を言って、議論していけるよう心がけていきたいですね。

――そのガバナンスへの意識は上場企業の経営者を感じます。
河田:
今年、日学連は一般社団法人化したところでもありますので、堅苦しい話としてではなく、身近で意味のある話としてガバナンス意識を高めていきたいですね。

あとは実際、日学連の現場を考える時、大会とか試合会場の表舞台だけでなく、舞台裏での準備や段取りを進める役割も大切です。各学連で選ばれた幹事の人たちが、選手とは別の立場で重要な現場を担っていますので、そちらにも目を向けていきたいですし、また、今はオンラインを活用して、学生幹事の人たちも、北海道から九州・沖縄まで9学連がもっと交流する方向に背中を押していければいいなと。

――確かに。インカレで対戦するとかでない限りは、付き合いはないかもしれません。
河田:
自分の大学以外の学生と広く交流が持てるのは、きっといい経験や財産になると思うんですね。

河田正也
写真:河田正也氏(日清紡ホールディングス 取締役会長)/撮影:ラリーズ編集部

卓球学生7000人の共通項と強みとは?

――乱暴な質問ですが、日学連に登録している大学生7,000人が、社会で活かせる強みってあるでしょうか。
河田:
難しい質問ですね(笑)。

僕自身の卓球レベルでいうのもおこがましいですが、想像も込めて言うと、卓球やる人はわりと機転が効いたり融通が効くように思います。器用貧乏ではまずいですが(笑)。競技の特性として、相手を読む力、敏速な判断力、いろんな状況を察知する力、がつくんだろうなと。

良識的に行動すること、エッジボールなど自分の失点でも即座に認めますし、相手を尊重するというのも思います。相手あってこその試合ですしね(笑)。大きく骨太に考えていくことも意識しておけば、こうしたことは、社会にでて、また人間関係においても、活かせる強みだと思います。

かつての日清紡の実業団チームでも、高卒大卒問わず女子卓球部の選手たちは総じてテキパキと仕事もしていたし、礼儀正しく印象は良かったですね。体育会の生活を通して、マナーや規律が身についたんでしょうね。

卓球の仕事であろうとなかろうと

――卓球の仕事であろうとなかろうと、大学卓球部の経験は、その後のキャリアに活かせますか。
河田:
もちろんそう思います。自分を振り返っても、一つのことをやり続けたということ自体が、無形の財産として活きている気がします。

仕事としてやるとなったら、卓球に打ち込んだやりがいとは違った喜びも辛さも当然あるわけですが、同じ人間社会ですから、取り組み姿勢や対人関係は、培ってきた経験が必ず活きてくると思います。これから社会にでる人たちには、新しい世界でも、学び続け挑戦し続ける姿勢はもってもらいたいですね。

あと、卓球界の様々な分野に関わっている人たちは、卓球を通してのつながりが広く、共通の話題や思い出話も豊富だなと、うらやましく感じます。学生時代も活躍されていたすごい人たちも多いですし、卓球界を牽引し、次世代を担う若い層や子どもたちを指導・支援されている情熱のベースには、学生時代卓球部の貴重な経験があるんだろうなと、思います。

日学連としても、先輩先人から引き継いだ伝統や価値を大切にしながら、新しい時代にふさわしい発展をしっかり考え、挑戦し実行していきたいと思います。

――お忙しいところ、ありがとうございました。

河田正也
写真:河田正也氏(日清紡ホールディングス 取締役会長)/撮影:ラリーズ編集部

取材・文:槌谷昭人(ラリーズ編集長)

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