【卓球】吉村和弘「メンタルは過去最高点」4つの視点で振り返る世界卓球

【卓球】吉村和弘「メンタルは過去最高点」4つの視点で振り返る世界卓球

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写真:吉村和弘(東京アート)/提供:田村翔・アフロスポーツ

28日に閉幕した世界卓球選手権ブダペスト大会。男子シングルス初出場となった吉村和弘(東京アート・22歳)に大会を終えた今の胸の内を聞いた。

今大会の吉村は世界ランクを過去最高位の50位まで上げての世界卓球初挑戦となった。初戦でイングランドの若手選手をゲームカウント4-1で順当に退けると、2回戦で“ブラジルの至宝”カルデラノ(世界ランク7位)と対戦。持ち味の両ハンド攻撃で2ゲームを奪う善戦を見せるも、最後はパワーで押し切られ、ゲームカウント2-4で敗れた。

吉村は大会を総括し「大舞台を楽しみ、自分の実力は出せた。でももっとコートに立っていたかったし、カルデラノを倒して(大会王者の)馬龍とやりたかった」と悔しさをにじませながらコメント。大会4日目の24日に全日程を終えた吉村は、その後、兄の真晴(混合ダブルスで銀メダルを獲得)や張本智和らの練習相手を務める傍ら、会場でトーナメントで勝ち上がった海外の強豪選手を見ながら“一人反省会”をしていたという。

吉村和弘、世界卓球を4つの視点で振り返る

吉村は卓球を「フィジカル」「技術」という体を使う部分と、「戦術」「メンタル」という体以外の頭脳・精神に要素分解し、4点それぞれを見つめ直す。

フィジカルについては「練習会場で中国選手とすれ違うと太ももが一回り大きいし、(男子シングルスで3連覇を果たした)馬龍は6-7割の力で打っても、僕の全力と同じスピードが出せている。カルデラノにもパワーで押されてラリーでは歯が立たなかった。僕は日本では球が速い方ですが、逆に言えばまだまだ伸ばせるということ」と自身の伸びしろを実感した。

技術については、「レシーブは、強打をするとミスが増え、安全に入れに行くと怖さが無くなる。バランスが難しいのですがまずは相手のコートに入れないと。今は僕のチキータを嫌がってロングサーブを出してくる選手が増えてきているのでもっと狙い打てるようにしたい。それからフォアハンドの決定力も上げたい。『厳しいボールを送らないとフォアで打ち抜かれてしまう』と思わせられれば、相手が無理をしてミスしてくれる」と課題を「レシーブ」と「フォアハンド」の2点に据える。

メンタル支えた「大切な人」の存在

大舞台の緊迫した場面でも、日頃鍛えたフィジカルと技術を最大限発揮するために必要なのが「戦術」と「メンタル」だが、吉村は「今大会戦術とメンタル面については一定のラインはクリアしていた。特にメンタルは過去のキャリアで一番良かった」と充実ぶりを伺わせる。

戦術については、「カルデラノ戦で1ゲーム目リードしてから逆転されたのが勿体なかった。2ゲーム目からはチキータが入りだし、相手のバックを攻める展開がハマった。これがもう少し早くできていれば」と反省する。戦術は相手と対峙しながら瞬時に自身で判断をせざるを得ないが、ベンチコーチの存在も重要だ。「ベンチコーチには、メンタルのことを言われるよりも、“冷静に現状を教えてもらえること”が理想です。『相手が嫌がること』『自分が得点しているパターン』『失点しているパターン』この3つをわかりやすく短く単語単語で教えてくれること。プレーに集中すると冷静に見えなくなることがありますから。それから1分間ずっとベンチコーチがしゃべるよりも、アドバイスの時間を短めに終え、1人で気持ちを切り替える時間も欲しい。(今大会吉村のベンチに入った)鬼頭さんは愛工大の時から僕を良く知っていて、今回も自分に合ったアドバイスをいただけた」と元プロ選手でアテネ五輪出場経験のある鬼頭明氏の指導に感謝した。

また、今大会最も充実していたというメンタルについては、吉村に大きな影響を与えた人物がいるという。現在22歳の吉村には20歳の頃から交際している女性がいる。2回戦での敗戦後にミックスゾーンで「今大会は大切な人へ感謝の気持ちを伝えるために戦うと決めていた」と報道陣に告白。卓球選手として結果が出ずに悩んでいる20歳の時に交際をスタートするとすぐに全日本選手権で準優勝を果たした。Tリーグと日本リーグの背番号「20」もこの時のゲンを担いでいるという。「それまで国内しか見ていなかった僕が、彼女のおかげで目指す場所が世界に変わった。だから今回世界選手権に出られた。支えてくれる大切な人のために頑張ると決めたから、今大会の苦しい場面も諦めず、逃げずに戦えた。結果には全く満足していないが、戦う姿勢に関しては見ている人に背中で伝えられたと思う。過去には日頃の支えに対する感謝を忘れてしまった時期もあったが、今後のワールドツアーも感謝の気持ちを背負ってプレーしていく」と力強い眼差しでコメントした。

吉村は既に5月のワールド・ツアーに照準を合わせる。「目標はチャイナオープン、香港オープン、ジャパンオープンで活躍して世界ランキングを上げること。東京五輪もこの1年結果を残せばチャンスはあると思っている。今は張本、丹羽さん、水谷さんが上位ですが、日本の3番手よりも世界ランクを上げ、代表争いに食い込みたい。また東京五輪の後も現役は続きます。少なくとも2024年の五輪までは代表を目指すと決めているので、とにかく今やれることをやるだけです」。

世界卓球が幕を閉じた瞬間から、次の戦いが始まっている。吉村は昨年の香港オープン優勝を皮切りに国際大会での活躍が評価され、世界卓球代表入りを果たした。今年は両ハンドをぶんぶん振り回す豪快な卓球に、粘り強い我慢の卓球をプラスし、ワンランク上を目指す。成長過程の吉村が今年のワールドツアーでどのような活躍を見せるのか、注目したい。

吉村和弘の世界卓球選手権ブダペスト大会 試合結果

<男子シングルス 2回戦>
吉村和弘?2-4 カルデラノ(ブラジル)
7-11/12-14/11-7/12-10/5-11/8-11

<男子シングルス 1回戦>
吉村和弘?4-1 ジャービス(イングランド)
11-5/8-11/11-7/11-4/11-5

文:川嶋弘文(ラリーズ編集長)

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