卓球の見方は5分で変わる(5) 「3つのレシーブ」がメダルの色を決する

写真:張本智和(木下マイスター東京)/撮影:ラリーズ編集部

5分でガラリと変わる卓球の見方。第5回のテーマは、勝敗の鍵を握る「レシーブ」だ。

国際大会のメダルの色を決する要因の一つである卓球の「レシーブ」についてご紹介する。

「サーブ有利」から「レシーブ有利」へ

ひと昔前まで、卓球はサーブ側(サーバー)が圧倒的有利と言われていた。サーブのインパクトを腕で隠し、回転をごまかす「ハンドハイド」により、レシーブ側(レシーバー)は回転を判別するのが困難だったからだ。

そこから、「ハンドハイド禁止(2002年)」といったルール変更に加え、打法の進化などにより、レシーブ有利の時代がやってきた。

実際にTリーグ・1stシーズンの張本智和(木下マイスター東京)のデータを見てみよう。

張本は、サービスエースが1ゲーム平均1.2回なのに対し、レシーブエースは平均2.5回と約2倍の得点率を誇る(※)。レシーブでの得点率が高い張本は、見事1stシーズン最多勝を獲得している。
※ノジマTリーグ 2018-2019シーズン 張本智和個人スタッツ参照

そこで今回は卓球観戦で注目したい「3つのレシーブ」について解説する。

「ショートサーブ」に対するレシーブがポイント

まず、卓球には2種類のサーブがある。ロングサーブとショートサーブだ。

ロングサーブとは、相手コートで1バウンドした後、大きく台から出る長いサーブのこと。逆にショートサーブとは、相手コートで2バウンド以上する短いサーブのことだ。

レシーブでは、ショートサーブに対する技術がポイントとなる。

なぜなら、ショートサーブをレシーブする機会の方が圧倒的に多いからだ。卓球では台から出るロングサーブを出すと相手に先に攻められる危険性を伴う。そのため、トップ選手はショートサーブを中心に試合を組み立てていく。

日本卓球界を牽引してきた水谷隼も例外ではない。Tリーグ・2ndシーズン開幕戦の岡山リベッツ・吉村和弘との試合で、水谷は全サーブ26本中22本(約85%)をショートサーブで構成していた。

水谷隼
写真:2ndシーズン開幕戦を制した水谷隼(木下マイスター東京)/撮影:ラリーズ編集部

つまり、ショートサーブを上手くレシーブできるかが勝負の鍵を握るのだ。

レシーブ技術の中には、水谷の得意とする“ストップ”や張本の得意とする“チキータ”を筆頭に様々な種類が存在する。まずはこれから紹介する「チキータ」「ストップ」「ツッツキ」の3種類を抑えておこう。

卓球史を変えた「チキータ」

丹羽孝希
写真:チキータを得意とする丹羽孝希(木下マイスター東京)/撮影:ラリーズ編集部

“サーバーが攻め、レシーバーが守る”という卓球の常識を覆した技術が「チキータ」だ。

相手のサーブに対し、バックハンドで強烈なサイドスピンをかけながら返球するこの技術は、1990年代にチェコのピーター・コルベル選手によって開発され、チキータバナナ(バナナの品種名)のように曲がるボールの軌道からこう名付けられた。

チキータを武器とする中国の張継科(チャンジーカ)が、2011年に世界選手権優勝を果たして以降、世界中の選手がチキータを取り入れるようになった。比較的新しい技術のため、今の30代の選手では習得していない選手もいる。

日本では前述の張本智和や丹羽孝希がチキータを多用し、レシーブからの高い得点率を誇るので、注目して欲しい。

チキータは、レシーブからいきなり得点を狙える超攻撃的な技術である一方で、ミスをするリスクもある。いわゆるハイリスク・ハイリターンな技術であるが故、勝負所で繰り出すには勇気がいる。

攻撃の起点となる「ストップ」

水谷隼
写真:水谷隼(木下マイスター東京)/撮影:ラリーズ編集部

ストップとは、相手コートで2バウンド以上するよう短く返球するレシーブ技術だ。17年前、マリオ・アミズィッチ氏(クロアチア)によって、世界で使われていたストップが日本卓球界にも広められた。教え子の水谷隼はストップの名手として知られる。

レシーバーがストップを低く短く決めるとサーバーは攻められなくなる。そのため、次球をレシーバーが攻められるのだ。こうしてストップの名手・水谷は、相手より多く攻める機会を作り、勝ちを積み重ねている。

相手に強く打たれないよう、低く短く返球するストップは、卓球の中でも最も緻密なテクニックの一つだ。もし手元が狂い、ストップを浮かせてしまうと、相手にチャンスボールを与えてしまう。

トップアスリートたちは、いとも簡単にストップしているように見えるが、そこには練習量に裏打ちされた正確なコントロールが必要であることに注目して欲しい。

王道はツッツキからラリー戦へ

早田ひな
写真:早田ひな(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部

ツッツキとは、バックスピンをかけて相手コート深くに返球する技術で、紹介してきた3つの技術の中で最も安定して卓球台の中にミスせず入れられる

ツッツキ自体をミスをすることは少なく、相手サーブの判別が難しい時にはまずツッツキで相手コートに返球し、ラリーに持ち込むのがトップアスリートの常套手段だ。

また、ツッツキは回転量を多くしたり鋭くコースをついたりすることで、それ自体が得点源にもなるし、厳しいツッツキを送球し、相手に打たせた球をカウンターで狙い撃つこともできる。

一見、ストップと似ているが、台上で2バウンド以上する短いボールがストップ、1バウンドで台から出る長めのボールがツッツキ、と覚えると良いだろう。

“意表を突く”レシーブがメダルの色を決める

森薗政崇
写真:森薗政崇(岡山リベッツ)/撮影:ラリーズ編集部

ここまでチキータ、ストップ、ツッツキと3つのレシーブを紹介したが、どれがベストなレシーブかは状況によって異なる。

ただ、確実に言えるのは卓球における良いレシーブとは、“相手の意表をつく”レシーブだということ。ストップを予測している相手にツッツキを、チキータを待っている相手にストップをするだけで、相手の予想と違う展開となり、得点率はグッと上がる。

選手たちは相手の心理状態や癖を見抜き、待ちを外そうと工夫する。まさに心理戦だ。

レシーブとその裏側にある駆け引きに注目して試合を見ていくと、卓球観戦がもっと面白くなる。

文:山下大志(ラリーズ編集部)

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