中国卓球にも通用する 安藤みなみの“常識破りのプレースタイル”が生まれたワケ

写真:安藤みなみ(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

高2の夏に青森山田高から熊本・慶誠高への転校を経験した安藤みなみ。専修大学進学後は、2年連続で全日本大学卓球選手権で女王に輝き、卓球実業団の十六銀行入社後も全日本社会人準優勝と実績を残している。国際大会では、中国選手にも勝利し、一時期は世界ランクトップ30入りを果たした。

快進撃の要因の1つには、安藤の独特な戦型がある。「バックの異質ラバーによる変化」と「フォアのスマッシュ」を中心にしたプレースタイルは、日本では伊藤美誠(スターツ)が似た戦い方をするが、世界的に見れば稀有だ。

特に安藤の代名詞となっているのが、スマッシュだ。卓球界では弧線を描き安定するドライブを主体にする選手が大多数だが、安藤は直線的なスマッシュを武器に戦う。

今回は、この“常識破り”とも言える安藤のプレースタイルのルーツを探った。

「下回転も全部打て」 唯一無二のプレースタイルへ

現代卓球において、弧線を描くドライブを中心に戦うことが安定感と威力のバランスの良さから一般的となっている。一方で、ボールを弾くようにして打つスマッシュは、高く浮いたチャンスボールの際に使用する程度で、主体として戦う選手は珍しい。

その分スマッシュは、相手選手も慣れていないため、入れば得点を奪いやすいという側面もあるが、直線的な軌道であるが故に少しでも角度が狂うと台に収まらない。まさに“ハイリスク・ハイリターン”な技術だ。

写真:安藤みなみ(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ
写真:安藤みなみ(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

だが、安藤は低いボールに対しても物怖じせずスマッシュを放つ。幼少期からの練習の賜物かと思いきや、「スマッシュを取り入れ始めたのは青森山田高校1年生のとき」と意外な事実を明かす。

「高1で、青森山田の大岡先生に『ドライブがめちゃくちゃしょぼいから打っても意味がない』と言われてやり始めました。最初、フォア2本バック2本のフットワークで『全部スマッシュ打て』と言われて絶対無理だと思いましたし、『下回転も全部打て』って言われたときは何言ってるんだろうと思ったんですけど、やってみたら意外とやりやすかったです」。

写真:安藤みなみ(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ
写真:安藤みなみ(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

当時の女子卓球部最後の1人になることがわかっていても、安藤が青森山田高に進学したのはこの元ジュニアナショナルチーム監督の大岡の指導を受けるためだ。

大岡を信じ、練習や試合を通してスマッシュを打ち続けた。

すると徐々に安藤の手応えは確信に変わっていった。

自分に合ったプレースタイルをようやく見つけられた」。

安藤は唯一無二のスタイルを身に着け、高2でインターハイシングルスベスト16、高3ではベスト8と着実に成績を伸ばしていった。

指導者に恵まれ、一貫した指導で羽ばたく

専修大学に進学し、環境が変わっても安藤はスマッシュスタイルを貫き通した。信念を曲げずにいられたのには理由がある。指導者との相性の良さだ。

写真:安藤みなみ(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ
写真:安藤みなみ(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

「阿部勝幸総監督と藤川英雄監督(現・TOP名古屋監督)の2人が自分の練習を全部見てくれた。誰よりも私のプレースタイルを理解していて、日頃の練習で私の調子が悪かったら『ちょっとここ変じゃない?』『おかしいと感じてない?』と気づいてくれる。アドバイス通りやっていたらすごく調子が良くなったし、指導が合っていました」。

写真:安藤みなみ(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ
写真:安藤みなみ(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

安藤の特異な卓球に関しても、阿部と藤川は適切な指導を与えた。

「最初『台の中で全部スマッシュを打て』と言われて、無理だろって思ったんですけど(笑)。その意識で練習したのはすごくプラスになりました」。

身長150pと小柄な安藤は、卓球台から下げられると持ち味のスマッシュの威力が半減してしまう。そのため、卓球台に張り付いて早い打点で打つ意識を大学4年間かけて身体に染み込ませていった

写真:安藤みなみ(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ
写真:安藤みなみ(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

実はこの高校、大学での一貫した指導を、裏で糸を引いていたのは青森山田高の恩師・大岡だった。

「私が専修大に入るときに、大岡先生が阿部総監督に『安藤は全部スマッシュ。とりあえず前についてスマッシュさせてください』と言っていたと卒業してから教えてもらいました」。

そう、恩師・大岡は、青森山田最後の1人であった安藤に大学生活でも目をかけていたのだ。

だから安藤はどんなに低くても、信じてスマッシュを打てる。

自分と、自分を信じてくれた恩師たちの思いを。

取材・文:山下大志(ラリーズ編集部)

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