アルゼンチン戦で圧勝の立役者は「田中碧」 1年前の一発退場がもたらした幸運

アルゼンチン戦で圧勝の立役者は「田中碧」 1年前の一発退場がもたらした幸運

田中碧(撮影・六川則夫)

■久保の活躍を演出


 U-24アルゼンチン代表を招いての国際親善試合の第2戦が3月29日、福岡の北九州スタジアムで開催され、U-24日本代表はFW林大地(23)の代表初ゴールと、板倉滉(24)のヘディングによる2得点で3−0の快勝を収めた。

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 1対1での球際の強さ。フィジカルコンタクトの際はボールにアタックしつつ寄せてきた相手に体をぶつける。ボールをロストすれば前線の選手もプレスバックして守備に参加する。それがこの日のU-24日本代表だった。

 中2日の試合とあって横内昭展監督(53)は9人の選手を入れ替えたが、3日前の試合に比べ明らかにチーム全体の強度は高まっていた。まして1分け2敗でグループリーグ敗退を余儀なくされた昨年1月のAFC U-23選手権タイのチームとはまったく別のチームに生まれ変わっていた。

 その大会で1月15日にU-23カタール(1−1)と対戦してから、チームは1試合も行っていない。昨年12月にキャンプを再開しただけだ。にもかかわらず、これだけのパフォーマンスを演じられたのは、選手個々が所属するチームで成長を遂げたからだろう。その伸びしろの大きさは驚くばかりだ。

 そして3−0の勝利の原動力になったのが、1年前のカタール戦の前半アディショナルタイムに相手の足を踏んづけたとして一発退場になった田中碧(22)だった。ペナルティーとして次の公式戦も出場停止となる。しかしコロナ渦で1試合もできなかったため、田中碧は3月26日のアルゼンチン戦が出場停止となり、「テレビ越し」に見なければならなかった。

 しかし、それが幸いした。ベンチとは違い距離があるため、冷静に試合を分析していた。


■田中の絶妙なパス


「日本は2列目に巧い選手がいるので、どうやってそういう選手にボールを渡すかだと思う。(久保建英、三好康児、三笘薫は)前を向いてボールを持った時に怖さがある。いかにターンして前向きの時にボールを渡すか。そして足下だけでなく、いつも裏を取る準備をしているので、そういうパスを出したい」

 その言葉通り、シンプルに出せる時はそれこそシンプルに、久保建英(19)や相馬勇紀(24)、食野亮太郎(22)らに優しいパスを出して、彼らのドリブル突破を引き出していた。トップ下がスタートポジションの久保は、状況に応じて両サイドに流れてプレーしたが、これほど気持ち良さそうにプレーするのは久々に見た。

 相手との駆け引きから一瞬フリーになっても、パスが出てこなければ再びマークにつかれてしまう。アルゼンチンも第1戦から久保を警戒し、複数の選手で囲んで倒しにきた。しかし第2戦では、久保の欲しいタイミングで田中碧からパスが出たため、久保は早め早めに仕掛けることができた。

 田中碧だけではない。両サイドバックの古賀太陽(22)と原輝綺(22)が攻撃参加すれば、シンプルに彼らを使う。このため日本は全体のパスワークが早くなり、アルゼンチンのプレスを寸断することができたのである。


■OA枠も不要!?


 第1戦のボランチコンビは中山雄太(24)と渡辺皓太(22)のコンビだった。渡辺皓は豊富な運動量でどこにでも顔を出し、頻繁にボールに触ることで攻撃のリズムを作り出す、田中碧とはタイプの違うボランチだ。

 第2戦で田中碧とコンビを組んだ板倉滉は、第1戦でマティアス・バルガス(23)に振り切られて決勝点のお膳立てを許したが、第2戦では久保の左CKからヘディングで2ゴールを決める活躍を見せた。

 アルゼンチンとの2試合を見る前は、オーバーエイジ(OA)枠として遠藤航(28)は必要不可欠な選手と思っていた。ブンデスリーガでのデュエルは群を抜く高さを誇り、前回リオ五輪の経験者でもあるからだ。

 しかしアルゼンチンに3−0と完勝した試合を見ると、今回の4人でやっていけるだろうし、今回はケガで途中リタイアした田中駿汰(23)もいる。このため5人のうちの誰かが外れる可能性もあるし、さらに今後の活躍次第で新たに加わる元候補もいるかもしれない。

 五輪の抽選会は4月21日。そして次回の活動は6月5日と12日の国際親善試合で、この2試合後、東京五輪に臨む18名のメンバーが発表される。海外組も国内組も、残り3ヶ月が生き残るための正念場となる。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮取材班編集

2021年3月31日 掲載

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