聖火点灯ランナー「大坂なおみ」に決まる前の最有力候補は

聖火点灯ランナー「大坂なおみ」に決まる前の最有力候補は

大役を果たした

■多様性と調和にピッタリ


 開閉会式を運営するチーム側にドタバタが続く中、聖火点灯ランナーは誰になるかについて世間の注目が集まっていた。フタを開ければテニスの大坂なおみ選手だったわけで、世界的な知名度や五輪のコンセプトに最適の人選だと捉える方も多いだろう。が、実はある時期までは違うアスリートが最有力候補としてリストアップされていたという。

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 開会式で行われた聖火リレーは、五輪金メダリストの吉田沙保里、野村忠宏の両氏からミスターこと巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄氏へつながれ、これをミスターと巨人軍の黄金時代を支えたソフトバンク会長の王貞治氏、そしてミスターが育て上げた松井秀喜氏が運んだ。この国民栄誉賞トリオからコロナ禍で奮闘した医療従事者、被災地の子どもなどを経て、最後に聖火を受け継いだのが大坂なおみ選手だった。

 取材する記者によると、

「事前の予想では、フィギュアの羽生結弦選手などの名前もあがっていましたね。大坂選手の父親はハイチ出身のアフリカ系、母親は日本出身、本人は日本国籍で世界を股にかけて活躍しているということで、大会の基本コンセプトに掲げられるダイバーシティ&インクルージョン(多様性と調和)にピッタリの人物だということなのでしょう」

 2018年の全米オープンで優勝し、日本人として初めてグランドスラムを制覇した。19年には世界ランキング1位に立つ一方、昨夏には人種差別に抗議するBLM運動に賛同してアピールを行ったり、今年の全仏オープンでの記者会見を拒否して罰金処分を受け、棄権したことが大きなニュースとなったりと、その発信力の高さは世界的に注目されてきた。


■「佐々木さんが仕切っている頃までは」


 この記者が続ける。

「大坂選手で最初から決まりだったかというとそうではないと思います。もともとは水泳の池江璃花子選手を最有力候補としていたと聞きました」

 池江選手は2019年2月に白血病を公表してから闘病生活に入り、一時は体重が15キロも減ったことがあったというが、それを克服し、五輪の4×100メートルフリーリレーへの出場権を獲得した。

「関連する行事やイベントにも登場し、東京五輪の顔と言えば池江選手という感覚が国民の間にも醸成されつつあったと思います。東京の次のパリに出られればと言われていた中で、脅威の回復力を見せた彼女は、震災からの復興、コロナ禍の克服をアピールする場にふさわしいとも言われていました」

 そのプランが変更され、池江選手から大坂選手にシフトしたのはどうしてなのか?

「体制の変更が大きかったと指摘する声がありますね。去年12月、それまで開閉会式演出の総合統括を担っていた狂言師の野村萬斎さんが率いるチームが解散しました。コロナで1年延期が決まり、予算を大幅に削減する必要性があったことが強調されましたが、チーム内でのコミュニケーションがギクシャクしたり、パワハラがあったりと風通しがよくなかったようです」

 野村氏の後を受け継いだのが、当初はパラリンピックを担当していた電通出身のクリエイティブ・ディレクターの佐々木宏氏だ。しかしその後、佐々木氏が開会式に出演予定だったタレントの容姿を侮辱していたことが報じられ、辞任することになった。

「佐々木さんが仕切っている頃までは“池江さんで”という話になっていたようです。担当が変われば内容も変わるのは世の常ですが、それよりも、開閉会式にかけられる予算が5分の1ほどになる中で、大会の基本コンセプトの内容を丁寧に伝えられるプログラムの遂行が難しくなったということが大きいのではないかと見ています。ならば、聖火点灯ランナーに大会のコンセプトど真ん中の選手を起用したいと考えたとしても不思議ではないですよね」

 開幕前のドタバタが、ここにも影響を与えていたということになる。

デイリー新潮取材班

2021年7月26日 掲載

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