リブゴルフ 来年の目玉は「チ―ムのフランチャイズ化」 既存ツアーと共存する方法はあるか

リブゴルフ 来年の目玉は「チ―ムのフランチャイズ化」 既存ツアーと共存する方法はあるか

フィル・ミケルソン(Peetlesnumber1, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 サウジアラビアの政府系ファンドの支援を受け今年6月に創設されたリブゴルフは、年間8試合をすべて終了。来年は当初予定されていた年間10試合が14試合に増やされることが、すでにリブゴルフを率いるグレッグ・ノーマンCEOによって誇らしげに発表されている。さらに、チームのフランチャイズ化という大きな変化を迎える。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】


■「誰もが存在を認めざるを得ない」


 リブゴルフ創設前から米国のPGAツアーや欧州のDPワールドツアーのスター選手たちに声を掛け、自身も早々にリブゴルフへ移籍したフィル・ミケルソン は、こう胸を張る。

「創設当初は『リブゴルフなんてすぐに沈没する』と言われていたが、僕らはさまざまな問題を乗り越え、ここまで来た。もはや誰もがリブゴルフの存在を認めざるを得ないはずだ」

 ミケルソンの言葉通り、リブゴルフは創設前から「選手が集まるはずがない」「開催コースが確保できる保証もない」などと言われていたが、ダスティン・ジョンソン 、ブルックス・ケプカ 、ブライソン・デシャンボー らが続々と移籍し、世界ランキング上位選手が所属するツアーとなった。

 開催コースも今年は英国、米国、タイ、サウジアラビアで確保することができ、試合数が増える2023年は新たにスペイン、シンガポール、オーストラリアも開催地に加わる見込みだ。


■フランチャイズ化で何が起こるか


 そして、2023年のリブゴルフにおいて最も大きく変化すると見られているのが、チームのフランチャイズ化だ。

 リブゴルフではストロークプレーによる個人戦と、4人1組、全12チームによるチーム戦が同時進行で行なわれている。創設初シーズンの今年、そのチームはシンプルに「ともに戦う4人組」だった。しかし、来年からは各チームがそれぞれ独立したフランチャイズとなり、「ともに戦い、ともにビジネスを行なう4人組」ということになる。

 そのフランチャイズは具体的にどんなことを行なうのかといえば、メンバー4人が協力し合ってチームを宣伝したり、支援してくれるスポンサーを募ったり、チームごとにロゴマークを作って専用グッズを製造・販売したりといったビジネス活動が期待されている。収益が得られれば、メンバー4人で分配することになる。とはいえ、各選手にはそれぞれスポンサー契約が継続されているケースも多く、たとえば、キャップにチームロゴを付けてプレーしようとした場合に、ある選手だけは「既存のキャップ契約に違反することになるから、僕はチームロゴのキャップを被ることはできない」といった事態になることも想定される。

 だが、米シカゴ・ビジネス・ジャーナル誌によれば、リブゴルフ社長兼COOのアトゥル・コスラ氏は「来年、すぐさま統一できずとも、各選手が独自の契約を満了するまで待って、12カ月、いや18カ月ぐらい時間をかけて、徐々にチーム内の統一が図れればそれでいい」と考えているという。

 いずれにしても、単にゴルフのプレーをするだけではなく、ともにビジネスに取り組むとなると、各チームのメンバー構成にもそれなりの配慮、いや熟慮が求められる。

 初シーズンの今年は、たとえばスペイン出身の選手同士4人でチームが構成されたり、日頃から親しくしている4人で構成されたりという「仲良しチーム」が多かった。だが、来シーズンからは「ビジネス・パートナーとして望ましい選手」がメンバーを考える際の一番の基準になりそうである。

 また、今年から来年にかけて、おそらく6~7人のPGAツアー選手が新たにリブゴルフへ移籍するという噂が広がっており、そうなった場合の新規参入選手を含めると、「来年は全体の25%ぐらいは、チーム構成に変化が出るだろう」と同誌は見ている。


■斬新な手法が好評


 選手たちに独自のビジネスを行なわせるというリブゴルフの手法は、これまでのプロゴルフ界では見られなかった新しい試みだ。プレー以外のことには不慣れなはずの選手たちは、最初は戸惑うことだろう。

 だが、収益が自身の懐に入るとなれば、選手たちのモチベーションはそれなりに高まるかもしれない。ゴルフをすること、試合でプレーをすることが仕事のプロゴルファーに「プレー以外の商売もしてね」と求めることへの是非は、もちろん取り沙汰されるだろう。しかし、「それがリブゴルフというもの」と割り切ることで、選手たちには受け入れられそうに感じられる。

 そして、従来のプロゴルフ界にはなかった斬新な手法を考案し、実施することが、リブゴルフの存在価値の一つだと考えれば、「なるほど」と頷ける。

 実際、その斬新さは、従来のプロゴルフ界にさほど馴染みがなかったヤング層やゴルフ初心者、これまでゴルフに縁がなかった人々には、すでに評価を得ている様子なのだ。今年の全8試合における入場チケット購入者の41%が45歳以下のヤング層で、そのうちの半数はパートナーや家族を同伴して来場。その多くが「ゴルフ観戦は生まれて初めて」「ゴルフは一度もやったことがない」という人々だったそうだ。

 ゴルフの試合会場に初めて足を踏み入れた人々は、バンド演奏や噴水、花火といった賑やかな演出や様々なギャラリー・サービスに「大いに満足した」「とても楽しかった」と好意的な印象を抱き、「また観戦したい」と笑顔を輝かせていたという。

「ビッグマネー頼みの金満ツアー」といった批判や、予選落ちのない3日間54ホールという形式の是非、サウジアラビアに対する意見や見方等々はさておき、ゴルフと縁遠かった人々の心を捉え、即座にリピーター化したことは、リブゴルフが収めた成功と呼ぶべきなのだろう。


■既存ツアーとの対立は


 リブゴルフが従来のゴルフ界の既成概念に捉われず、柔軟な思考で斬新なアイディアを生み出し、エンターテインメント性の高いプロゴルフの舞台を創出していることは、徐々に実証されつつある。フランチャイズ化も含め、自由競争の原理を取り入れようとしているところには大いに好奇心を煽られる。

 しかし、予選落ちがないのに高額賞金がギャランティ(保証)されている点や、ツアーや大会への参加資格やその決め方に透明性、オープン性が感じられないところには依然として違和感がある。

 とはいえ、サウジアラビアの政府系ファンドからの支援を受け、潤沢なオイルマネーを存分に注ぐことができる限りは、そのマネーパワーを生かしてトッププレーヤーや人気選手を確保していくことだろう。そうすることで、結果的に大勢のギャラリーを引き付けることも可能になるはずである。

 本来なら、そうやって独自の手法で独自のツアーを運営していくこと自体は、何の問題もないはずである。PGAツアーやDPワールドツアーとは無関係に、リブゴルフがひたすら独自路線を歩むのであれば、対立は起こらなかったであろう。

 しかし、リブゴルフが既存のツアーに挑戦状を叩きつけるような形で大事な選手たちを奪ったことが対立の端緒となった。そして、ビッグマネーを得ることを自ら選んでリブゴルフへ移籍した選手たちが、破格のお金を得る代わりに捨てたはずのものを、「やっぱり欲しい」と言い始め、挙句に「もらう権利がある」と主張し始めたことが、対立と喧噪に拍車をかけている。

 自ら去ったツアーの出場資格を求め、世界ランキングのポイントを求め、メジャー大会への出場資格を求め続けているリブゴルフ選手たちの言動は、傍から見れば身勝手な姿にしか映らない。だが、もしも今後、リブゴルフが独自路線だけを粛々と歩むとしたら、PGAツアーやDPワールドツアーとの対立や確執は大幅に解消されるのではないだろうか。

 PGAツアーには歴史の重みと信頼と、ピラミッド型に積み上げてきた厚い層があり、予選通過を目指して戦う4日間72ホールのトラディショナルなゴルフがある。

 リブゴルフには歴史はなく、信頼もまだ築けてはいないが、高いエンターテインメント性があり、選手たちが独自に運営するフランチャイズに象徴される斬新さもある。

 心情的にこじれ、もはや協調路線を歩むことが難しいのだとしても、リブゴルフと既存ツアーは「まったく異質の別物」と割り切ることはできるはずだ。これからは両者とも、争いのために注いできたエネルギーを自分たちのために注ぐべきではないだろうか。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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