JOC山下泰裕新会長、メディア相手の「寝業」に苦戦中

〈山下やった! 怪我をおしての金メダルです!〉あのロス五輪柔道決勝戦の歓喜から早や35年。かつて寝技で金メダルを獲った山下泰裕JOC新会長(62)だが、メディア相手には“寝業”が上手くかからず、日々、息をのむ接戦が繰り広げられているという。

 山下氏がJOC(日本オリンピック委員会)会長に就いたのは、6月末のこと。東京五輪招致に絡む買収疑惑で捜査対象になった竹田恒和前会長が退任し、満を持しての登場だったはずが、

「新会長の手法に憤りの声が上がっているんです」

 と、囁くのはさるスポーツ紙記者だ。

「今までJOCでは、常務理事会は非公開、理事会は人事案件以外は公開が原則でした。なのに山下会長は、就任早々“理事会も非公開にしたい”と言い出した。捜査対象である竹田さんの後任として、第一に透明性が求められていたのに、これでは逆行しているのではないか、というわけです」

 その経緯を別の運動部記者が振り返る。

「7月4日、記者会の幹事社である毎日の記者が、“一方的に決めないで欲しい”と会長に伝え、後日JOC側と記者会側で意見交換をすることになっていました。10日の理事会後の記者レクでも、福井烈専務理事が“まだ決定ではない”と説明していた。だから記者会は、話し合いの余地があると思っていました」

 ところが、2日後、JOC側の対応は頑なになった。

「12日に再度、山下会長と記者会側が面会すると、“理事会として結論が出ている”と言われ、決定事項だと告げられたのです。竹田さんの不祥事があったので、組織のガバナンスを強めていきたいという思いがあるのかもしれませんが、我々は反対です」(同)

 JOC関係者が、こう解説する。

「山下さんは会長就任当日の理事会から、非公開化を提案していました。実現するには記者会の了承が不可欠で、彼らの反対で断念した過去もあります。この日は、理事たちの了承も得られ、“記者会側と調整させて頂きます”と会長が言っていたので、同意を得てくれるものと思っていました」

 同意するどころか、激しい組み手を取り合っているかの如く、記者会は徹底抗戦の構えを見せているのだ。


■「抗議文を出す」


 先の運動部記者曰く、

「山下会長に対して、“話し合うということだったのに、一方的に決めるとはどういうことだ”“福井専務理事の説明は虚偽じゃないか”と記者会側は抵抗しました。臨時総会を開き抗議文を出すことも検討しています」

 根回しという“寝業”がかけられず、さぞや落胆しているのではと、ご本人の自宅を訪ねれば、

「一切そういう対応はしていません」

 そう口を閉ざすので、元JOC職員でスポーツコンサルタントの春日良一氏に山下会長の胸の内を推し測ってもらった。

「山下さんは、忌憚なく意見交換が出来るようにするために、理事会非公開化を進めたのでしょう。公開では、事務方の作成した答弁を読み上げる国会のように、形式的な議論しかできない場合があります。彼にとっては、非公開化もJOC改革の一環なのです。山下さんは、森喜朗東京五輪組織委会長と同様に、プーチン大統領をはじめ、国内外の要人に人脈があり、森会長にも意見できると言われている、スポーツ界にとって貴重な存在です」

 記者会との関係悪化の原因については、

「組織に記者対応に精通した人材がおらず、山下さんにこの件でアドバイスをするブレーンもいなかったのでしょうね。それで、余計事態がこじれてしまった」

 森会長に物申せるだけの力があったとしても、苦労するのが組織運営ということなのだろう。

 いくら“世界のヤマシタ”といえども、一本とれる答えは見いだせず……。「正解のヤマシタ」とはいかなかったようだ。

「週刊新潮」2019年8月1日号 掲載

関連記事(外部サイト)