「冨安健洋」がモンゴル戦で負傷、問題の多いサッカー先進国と発展途上国との格差

「冨安健洋」がモンゴル戦で負傷、問題の多いサッカー先進国と発展途上国との格差

前半40分にはFW永井謙佑が4点目を決めた(写真・六川則夫)

■発展途上国への援助は必要か?


 4万3122人――10月10日に行われたカタールW杯アジア2次予選の日本対モンゴル戦の観衆である。会場は埼玉スタジアムで、最大6万3700人を収容できる。観客数を少ないととらえるか、多いととられるか、意見の分かれるところだろう。

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 平日のナイターで、台風19号の接近により降雨も予想された。対戦相手のモンゴルはFIFAランク183位と、超がつくほどの格下。注目の久保建英(18)の代表初ゴールも期待されたが、メインスタンド上段にある記者席の両隣の席は観客がいない。このため5階の売店は閉じられていた。

 浦和レッズの試合で、ルヴァン杯のグループステージや天皇杯、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)では観客が減少するため、売店が閉じられていることはあるが、日本代表の試合で売店が営業していないのは初めてだ。

 それだけファン・サポーターも、注目度の低い試合ということの裏返しなのだろう。正直、「よく4万人も集まったな」というのが正直な感想だ。

 試合は日本が前半22分に南野拓実(24)のゴールで先制すると、その後は一方的な展開になる。ゴール前を固めるモンゴルに対し、日本はサイド攻撃でゴールをこじ開けた。その立役者が右MFに起用された伊東純也(26)だ。

 これまで右MFのスタメンは堂安律(21)が多かった森保ジャパンだが、レフティーの堂安はドリブルからのカットインを得意とする。しかし、この日、右MFに起用された伊東純也は、スピードを武器にタテへの突破でアシストを重ねた。

 終わってみれば伊東は6ゴール中3ゴールをアシストしたのだから、森保一監督(51)の選手起用はズバリ的中したと言える。後半も4度の決定機があったものの、いずれもGKの好反応と守備陣のカバーリングにブロックされたが、これらが決まっていれば10−0の2桁スコアになっていた。

 日本の6ゴール中、5ゴールがヘディングでの得点というのも珍しい。それだけ制空権を握っていたのかというと、答えはノーだ。モンゴルのGKであるアリウンボルド・バツァイハン(29)は、シュートへの反応こそ鋭いものの、サイドからのクロスに対しては守備範囲が狭いため、次々にヘディングシュートを決めることができた。

 モンゴルGKアリウンボルドの身長は177センチと、190センチ台が常識となっている現代サッカーではかなり低い部類に入る。このため、サイドからのクロスに対し飛び出ることができずに失点を重ねた。

 試合後、モンゴルのミヒャエル・ワイス監督(54)は「前半20分まではよく守ったが、1点を取られた後は、熟れたリンゴが木から落ちるように失点を重ねてしまった」と振り返りながら、「今日は我々にとって厳しいレッスンだったが、ファンタスティックなレッスンから学ぶこともあった。現時点でトヨタの小型車がポルシェに勝てないのと同じ」と素直に脱帽した。

 ワイス監督はドイツ人で、奥さんは日本人。そして01年から04年にかけて京都パープルサンガのコーチを務めた日本通のため、会見ではしばしば日本語でも話した。そんなモンゴルの目標は、今大会で初めてアジア1次予選を突破して2次予選に進出しただけに、W杯出場という大それたものではなく、2023年に中国で開催されるアジアカップの出場権獲得だ。

 W杯2次予選は1次予選を勝ち抜いた6カ国と1次予選免除の34カ国、合計40カ国を5カ国8グループで総当たりのリーグ戦を行い、各グループ1位8カ国と各組の成績上位4カ国の12カ国により最終予選が行われる。そして、この12カ国に入れば23年のアジアカップに出場できるため、モンゴルは初のアジアカップ出場に意欲を燃やしている。

 しかし、W杯予選とアジアカップの予選を兼ねた現行方式により、シードチームの試合数が増えた弊害も指摘できる。モンゴルとの試合は、勝ち点3が計算できる消化試合だった。彼らはフェアに戦ったが、酒井宏樹(29)は捻挫をして、冨安健洋(20)は左足ハムストリングス(大腿の裏側)を傷め、タジキスタン戦への帯同は厳しくなった。

 同日行われたアジア2次予選では、中国がグアムに7−0と大勝したほかに、オーストラリアはネパールに5−0、イランは本田圭佑(33)が率いるカンボジアに14−0、ウズベキスタンはイエメンに5−0、キルギスはミャンマーに7−0、UAEはインドネシアに5−0、韓国はスリランカに8−0と圧勝した。2次予選にしては大差のついた結果であり、緊張感のないゲームの連鎖でもあった。

 アジア全体のレベルアップを図るためには、発展途上国の底上げは必要だ。このため、日本や韓国、オーストラリアといったW杯に出場している常連国との対戦は、刺激になることは間違いない。しかしながら、かつての日本がそうだったように、プロとアマチュアでは埋めようもないレベル差がある。

 アンダー世代からの育成を含め、スタジアムを始めとする環境整備など、先進国が支援の手を差し伸べないと、アジア全体のレベルアップは難しいだろう。AFC(アジアサッカー連盟)には、2次予選出場国の枠を拡大するだけでなく、次の一手を考えてほしい。

 日本は初対戦となるモンゴルを6−0で一蹴したとはいえ、アジア全体のレベルアップを図るためにはどうするべきか。考えさせられる試合でもあった。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年10月14日 掲載

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