U−22代表、ジャマイカ戦“爆勝”の無意味、本来対戦すべき国名を挙げるなら……

■日本代表強化の効果ゼロ


 これほど酷い試合を見たのは、近年記憶にない。それだけU−22ジャマイカ代表は「話にならない」チームだった。

 昨年12月28日、U−22日本代表は令和最後の試合でジャマイカと対戦し、9−0の大勝を飾った。

◆「森保監督笑った最多9点 五輪へ旗手2発 カミナリ効いたU22五輪『ゴールド』へゴールラッシュ 見せつけた決定力!右足!左足『結果を残せば間に合う』」(日刊スポーツ:12月29日)

◆「森保ジャパン最多9発 U22五輪サバイバルアピール全開 令和元年爆勝締め 中山!!旗手!!前田!!旗手!! PKで安部 後半も止まらん東!!一美!!三苫!!岩崎!!」(スポーツニッポン:同前)

 一部スポーツ紙は日本の大勝に賛辞を送っていたが、歯ごたえのまるでない相手に勝ったところで、どれだけ強化に役立ったのか疑問だ。

 ジャマイカ代表の側に立てば、前半6分の中山雄太(22)[PECズヴォレ]の直接FKと、前半28分の安部裕葵(20)[FCバルセロナB]のPKは防ぎようがなかっただろう。

 しかしながら残りの7ゴールを見ると、そのほとんどが、日本選手がフリーになることを許しての失点だった。

 ジャマイカ代表は攻守の切り替えが遅く、守備では「人をつかまえる」ことができず右往左往するばかり。日本代表が前線の3人でプレスをかければ簡単にボールを失い、波状攻撃を許していた。

 今回来日したジャマイカは、すでに東京五輪の北中米カリブ海予選で敗退したチーム。さらに、乾季の真夏から真冬の日本へ来たことで、コンディションもベストではないことは理解できる。

 そもそも、そんなジャマイカを日本側が招待したことが、今回のミスマッチの根本的な原因でもある。

 改めて言うまでもないが、ヨーロッパは昨シーズンより代表チームによる新たなリーグ戦、UEFAネーションズリーグをスタートさせた。

 このため、W杯予選、EURO予選に加えて3大会が行われることで、テストマッチにヨーロッパ勢を招くことはほぼ不可能になった。

 加えて、ヨーロッパではU−21の代表チームはあっても、五輪資格となるU−23チームは活動していない。

 前回のリオ五輪で日本は、スイス1部リーグのBSCヤングボーイズに所属していた久保裕也(26)[KAAヘント]を招集できなかったのも、チームが五輪よりもクラブチームの試合を優先させたからだ。

 ヨーロッパ勢を招けないことが、どんな結果を生んだか、A代表を例に取って見てみよう。代表はUAEで開催されたアジアカップで2月1日、準優勝となったが、その後の試合を表にまとめてみた。ご覧いただきたい。


■真の対戦相手はアジアのあの国


 8試合のうち、対戦相手はすべて南米か北中米の国々ばかりだ。ヨーロッパ勢を呼べないのだから、南米や北中米、さらにはアフリカと、対戦相手は限られてくる。それはそれで仕方のないところでもある。

 だが、なぜアジアに目を向けなかったのだろうか。それが大きな疑問でもある。

 日本はすでに東京五輪の開催国として出場権は獲得している。それでも今月8日からタイで開催されるU−23アジア選手権に出場する。

 この大会で3位以内に入ったチームには東京五輪の出場権が与えられる。参加する国は急ピッチでチーム力の底上げを図っているに違いない。こうした真剣勝負の場は日本代表の強化にもってこいだ。酷暑のタイでの連戦は、真夏に開催される東京五輪に向けて絶好のシミュレーションにもなる。

 そもそもジャマイカと対戦したU−22日本代表は、韓国・釜山で開催されたE−1選手権に出場した五輪世代よりも“格下”のメンバーだと位置づけられていた。

 そんなチームに競争を促すためにも、「骨のある相手」と対戦してこそ、サバイバルマッチとしての意味がある。

 U−23アジア選手権のグループリーグ第3戦で対戦するカタールは若手の成長が著しく、昨年2月1日にUAEで開催されたアジアカップで日本代表は1−3で敗北を喫した。

 この試合でゴールを決め、大会得点王とMVPを獲得したアルモエズ・アリ[アル・ドゥハイルSC]は23歳の若さだ。

 カタールが東京五輪出場を決めれば、OA枠として入ってくるだろう。彼以外にも日本戦のスタメンには五輪世代が2人いた。そんなカタールを招待してもいい。

 それ以上に刺激的な相手が、宿命のライバル韓国だ。

 韓国は五輪が23歳以下の大会になった1992年バルセロナ五輪に日本より一足早く出場し、リオ五輪まで7大会連続して出場。2012年のロンドン五輪では、3位決定戦で関塚隆監督(59)[現・技術委員長]率いる日本を2−0で破って初の銅メダルを獲得した因縁の相手でもある。

 日本戦になれば、どんなシチュエーションでも目の色が変わり、肉弾戦を仕掛けてくるのが韓国でもある。これ以上「骨のある相手」はいない。日本のファン・サポーターも燃えたはずだ。

 身近に格好のライバルがいるだけに、それを利用しない手はない。まさか敗退を恐れたわけでもないだろうが、日本サッカー協会にはジャマイカ戦のミスマッチの教訓を生かし、今後のマッチメイクに役立てて欲しい。


■残された時間は少ない


 ただ、そんなミスマッチでも収穫があったのも確か。前半のFW3人、安部と前田大然(22)[CSマリティモ]、旗手怜央(22)[順天堂大学]の3人は、前線からのプレスにスピードがあり、連係も取れていた。

 前田は持ち前のスピードを生かして、少々長めのパスでも快足を飛ばしてマイボールにしていた。安部は冷静沈着なドリブルで2、3人に囲まれても自信をもって突破を図っていた。サイドFWは最激戦区だが、ジャマイカの力量不足を差し引いても、ポジション争いに名乗りを上げる資格を得たと言えるだろう。

 そして旗手はシャドーストライカーとして2ゴールという結果を残した。特に1点目は難しいシュートを冷静に決めたプレーは光っていた。 他にも3バックの中央に入った岡崎慎(21)[FC東京]は、持ち味である正確なタテパスで日本の攻撃を最後尾からビルドアップした。

 安部と前田の海外組を招集できなかったのは残念だが、旗手と岡崎、さらにボランチの松本泰志(21)[サンフレッチェ広島]ら5人がタイ行きの切符をつかんだことは、ジャマイカ戦の数少ない収穫と言えるだろう。

 タイでの大会には、予想通り安部や前田に加えて中山も招集できなかった。彼ら以外にもDF冨安健洋(21)[ボローニャFC]、MF堂安律(21)[PSVアイントホーフェン]、MF久保建英(18)[RCDマヨルカ]ら招集できない候補選手がいる。

 しかし、チーム作りは急務であり、残された時間には限りがある。タイでは、選手をテストするのではなく、東京五輪に向けたチーム作りの“骨格”が見られることを期待したい。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年1月4日 掲載

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