GL敗退の屈辱、疑問だらけの森保采配に解任の声と国内組の限界、だから言わんこっちゃない

GL敗退の屈辱、疑問だらけの森保采配に解任の声と国内組の限界、だから言わんこっちゃない

前半に同点弾を放った、名古屋グランパス所属のMF相馬勇紀(撮影・六川則夫)

■田嶋JFA会長にも怒りの声


 サウジアラビアに1−2、そしてシリアにも1−2で敗れ、早々にグループリーグ敗退が決まったU−23アジア選手権2020。今大会に救いがあるとすれば、「東京五輪でなくて本当によかった」の1点しかない。

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 中東勢相手にいいところなく敗れたのは、Jリーグ誕生以前、まだ日本サッカーが暗黒の1980年代まで遡る。この結果に森保一監督(51)の解任論が報道され始めたのはご存知の通りだ。

 例えば1月13日、YAHOO!ニュースのトピックスには、デイリースポーツの「田嶋会長、森保監督に五輪を任せるか明言せず『技術委員会が判断して話し合いを』」が掲載された。同日の正午を過ぎた段階でコメント欄は2000件を超えている。

 とはいえ、森保監督を解任したところで適任者はいない。混乱を招くのは目に見えている。候補者としては、昨年は国内組を率いてトゥーロン国際大会で初の準優勝を果たし、アウェーでブラジルに勝った横内昭展監督代行・コーチ(52)くらいだろう。

 果たして田嶋幸三JFA会長(62)や関塚隆技術委員長(59)は、どのような決断を下すのか。続投にしろ、解任にしろ、今大会の結果について彼らに説明責任が求められるのは言うまでもない。そして少なくともネット上では、相当数のサッカーファンが「説明責任を果たしていない」と怒っているのは間違いのない事実だ。

 シリア戦とサウジ戦に敗北したのは、全て森保監督の采配が原因かと言えば、もちろんそんなことはない。選手の責任も相当に大きい。特に、この2試合では国内組に共通の弱点を露呈したと言えるのではないだろうか。

 まずシリア戦。先制点は前半開始早々の5分、カウンターからバラカト(22)にドリブル突破を許した。これを渡辺剛(22)[FC東京]がCKに逃れた。

 だが、このCKから日本はVARの結果、PKを取られてしまう。ゴール前の浮き球をクリアしようとした町田浩樹(22)[鹿島アントラーズ]が、アルナウト(23)の顔面を蹴ってしまったのだ。

 もちろん町田のプレーは故意ではなく、体が自然に反応したのだろう。とはいえ、あれだけ足を高く上げてしまっては、接触プレーでは危険なプレーと見なされて反則を取られても仕方がない。

 サウジ戦でもVARの結果、日本が失点を許した場面があった。後半43分の決勝点は、古賀太陽(21)[柏レイソル]のバックパスのミスからピンチを招き、VAR判定の結果、岡崎慎(21)[清水エスパルス]の反則としてPKから決められた。

 古賀のバックパスは、岡崎かGK大迫敬介(20)[サンフレッチェ広島]のどちらに出したのか中途半端だったし、パススピードも遅かった。恐らく脳が酸欠状態で正常な判断ができなかったのだろう。あの状況では、距離のあるGKに速くて強いパスを出すのがセオリーだからだ。

 それにしても、ペナルティエリア内でのプレーは、例え主審が見逃したとしてもVAR判定が入る時代だ。J1リーグも今シーズンから導入されるが、日本の選手はVAR判定に関してあまりにも“無防備”だったと言わざるを得ない。


■森保監督の采配にも疑問


 日本代表は2試合を4失点して敗北したが、このうち3失点はいずれも選手個人のミスによるものだ。U−23と同年代であるはずなのだが、中東勢の選手がしたたかだったのに比べ、代表国内組であるJリーガーたちはプレーが正直すぎたというのが率直な印象である。

 チーム戦術も、首を傾げざるを得ない場面が目立った。端的だったのがシリア戦で決められた決勝点だ。3BKの岡崎慎や町田浩樹までシリアゴールに迫りながら、日本は意図の感じられないショートパスをつなぐだけで、クロスを入れるでもなくシュートも打たない。

 これでは、ボールを失ったらカウンターをして下さい、と言わんばかりだと懸念していた。すると案の定、後半43分、交代出場のダリ(23)に、スピードに乗ったドリブルで独走を許し、最後はGK大迫と1対1から決勝点を決められた。

 ちなみにダリは、初戦のカタール戦でも交代出場すると、後半アディショナルタイムの+9分に2−2の同点ゴールを決めている。

 森保監督の采配で、最も疑問に感じたのはラスト2分でパワープレーを選択しなかったことだ。

 日本対シリア戦の前に行われたサウジ対カタール戦は0−0のドローに終わった。その結果、サウジは勝点4の1位、カタールは勝点2の2位。最下位の日本としては、引き分けでも最終戦のカタールに勝てばグループリーグを2位で通過できる。

 しかし、できれば勝点3を奪って2位に浮上したいところ。このため、残り2分で選択すべきはパワープレーだったはずだ。

 おまけに前線には182センチの上田綺世(21)[鹿島アントラーズ]と181センチの田川亨介(20)[FC東京]に加え、190センチの町田浩樹、191センチの立田悠悟(21)[清水エスパルス]もいる。彼らをペナルティエリア内に入れてクロスを放り込む。

 例えヘディングシュートが決まらなくても、こぼれ球要員として旗手怜央(22)[川崎フロンターレ]や相馬勇紀(22)[名古屋グランパス]もいる。どうしてパワープレーを選択しなかったのか、理解に苦しむところである。

■森保監督への逆風が強まるのは確実

 森保一監督は、必ずと言っていいほど、選手の「対応力」を口にする。そこで気になったのは、後半10分、左CKで上田綺世との接触プレーからGKガンナム(22)が右手を負傷した。その後、ガンナムはゴールキックをミスするなど動揺が感じられた。

 それなら遠目からでもシュートを放ち、GKに揺さぶりをかけるかと思ったが、日本はそれまでのようにパスをつなぐだけで、戦い方に変化はなかった。

 ここらあたり、ポゼッションを優先するJ1リーグという“日常”に慣れ、相手の状況に応じてプレーを選択するずる賢さが、国内組の五輪世代には欠けていると感じられた。

 そして森保監督である。すでに指摘したように、勝点3を奪うなら試合終盤はパワープレーを指示すべきである。それがセオリーだからだ。しかしベンチは動こうとしなかった。

 これはサウジ戦でも感じたことだが、森保監督はあえて動かず、選手の「対応力」をテストしていたのではないだろうか。言葉は悪いが、今大会は国内組の選手を「突き放した」印象が強い。

 その結果、明らかになったのは、国内組の“対応力”には限界があるということだ。

 2試合とも試合開始と終了間際という“一番気をつけなければならない時間帯”に簡単に失点してしまう“学習力”の欠如。そして時間帯に応じて臨機応変にチームプレーの選択を指示できる“リーダーの不在”である。

 シリア戦後の森保監督は、「東京五輪での金メダルには頼りない2試合だった。チーム作りのアプローチを変化させるのか」という質問に対して次のように答えた。

「東京五輪の金メダルに向けて不甲斐ない結果。最終的にどの選手が五輪の舞台に立ってプレーするかという部分ではラージグループを見ているので、この大会に参加した選手、ヨーロッパや日本に同等の力を持つ選手がいること、残りの時間で力を見極めて、この年代の最強のチームを作るとともに、オーバーエイジを含めてどうすればチームを強くできるか、結果を残せるかを考えていきたい」

 東京五輪までの強化プランのアウトラインを明かしたわけだ。森保監督が正直な人物であるのは間違いない。しかし、言葉足らずのところもあるというのが、率直な感想だ。あまり多くを語らず、記者会見ではいつも同じようなフレーズが並ぶため、会見時間も短い。

 ブレがないと言えば聞こえはいいが、時として受け取るほうは「ワンパターン」であり、この日のように「勝負勘を養ってほしい」といった選手に成長を促すコメントは、「責任転嫁」とも受け取られかねない。

 もしも選手の「対応力」を試していたとしても、2014年に始まったU−23アジア選手権で初のグループリーグ敗退。それも2連敗という結果はダメージが大きい。逆風が吹くのは目に見えている。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年1月14日 掲載

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