弟子が集団脱走の式秀部屋 パワハラおかみが力士に送った“恐怖のLINE指令”

 相撲界で「おかみさんによるパワハラ問題」が勃発した。元幕内力士・北桜の式秀親方(48)を師匠とする式秀部屋は茨城県龍ケ崎市にあり、力士20人を擁す部屋だ。50代の美熟女であるおかみさんの横暴ぶりに力士らが悲鳴を上げているというのだ。

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 相撲担当記者が言う。

「おかみさんは福岡出身で高校時代は陸上で名を馳せたと聞きます。商業施設の空間デザインなどの仕事を経て、中洲で小さなクラブを経営。ここに、北桜の師匠だった故北の湖さんが通っていて、付け人だった幕下時代の北桜と知り合ったようで、その後に上京し、関取になった北桜と結婚したそうです」

 また、部屋を取材したことのあるテレビ関係者は、こう明かす。

「おかみさんは色白で和風の、ちょっと能面を被っているような美人。テレビ映りはいいんですが、立て板に水のごとく、演説調でひとりでしゃべり倒すんで、インタビューにならない(笑)。撮影時間が長引いてしまったのですが、『長時間、部屋に滞在したのだから、ギャラは倍払ってください』と、後から請求書が送られてきたのには驚きました。相撲部屋らしくないユニークな部屋だと、かつてはメディア取材も多かったんですよ」

 さて、そんなおかみさんが仕切る式秀部屋とは、いったいどんな相撲部屋だったのか。

「2013年に先代師匠から継承された式秀部屋は、相撲部屋特有の厳しさはなく、『明るく楽しく元気よく』をモットーに、まるで“仲良し相撲クラブ”か?と言われている部屋なんです。およそ力士に向いていないようなヒョロヒョロの子でもなんでも、見境なく入門させてしまう。相撲未経験者も多く、幕内力士も出していませんし、今後も横綱・大関が出るような部屋ではないかもしれませんね。相撲ファンのあいだで有名なのは、“角界最弱力士”と言われ、実に89連敗中という服部桜(22)。式秀親方のその指導方法には、角界内でも疑問の声が上がっていました」(一門のある親方)

 そんな部屋で突如沸き起こった「おかみさんによるパワハラ問題」は、8月4日、9人の力士らが部屋を脱出し、相撲協会に逃げ込んだことで発覚した。

 かねてから部屋を後援し、力士らから相談を受けていたというA氏が明かしてくれた。

「『このままではとても相撲に打ち込めません。おかみさんのパワハラにはもう耐えられません』と、私に泣きついて来たのです。一部報道では『3、4年前の古米を食べさせられていた』と書かれていましたが、とんでもない。8年も9年も前の、変色した古々米だと言うんですからね。ちゃんこ場にある冷蔵庫には厳重に鍵が掛けられていて、開けることができるのは、おかみさんに気に入られている2人の兄弟子だけ。先日は1年も前の、臭うイワシを食べさせられたとか……。力士たちの話を聞いて、あまりにも不憫で、こうしてお話をする気になったんです」

 常日頃からの不自由な生活に加え、角界挙げての新型コロナウイルス感染防止対策のなか、潔癖なおかみさんの行きすぎた管理方法にも問題があったようだ。

「おかみさんから長文の命令が、グループLINEとしてことあるごとに送られて来るのですが、その内容がまるで北朝鮮か?というほどにキツイ縛りだと言うんですね。『ちょっと見せてみろ』と言って私が見てみたのですが、たとえばこれ。『今回は、部屋内監督指導としたプライバシーに侵害しない記録として部屋側が通話録音を致します』って文章的にもどうかと思いますが、もう呆れるほどですよ……」

 決死の覚悟で相撲協会に助けを求めた力士たちだったが、協会側の対応は「おかみさんは協会員ではないので協会から指導をするのは難しい。師弟で話し合うように」と“行司役”を果たしてはもらえなかった。

「その後、師匠である式秀親方と力士ひとりひとりが面談し、一件落着のような報道もありましたが、実はまったく解決していないんです。力士たちは『このままうやむやにされるのが嫌だ』『もうおかみさんの顔も見たくない』と泣いているんですよ。相撲部屋は、ひとつ屋根の下に住む家族のようなもの。親方が父親で、おかみさんは母親代わり、と言われていますが、言ってみれば母親に虐待されているようなものでしたから。協会の対応は『子どもたちは我慢して虐待家庭に戻りなさい』と言っているようなものじゃないですか」

 そうA氏は憤るのだ。おかみさんによるパワハラは、「昨年末から親方の体調が悪く、師匠代理として生活指導に乗り出したことから始まった」と言われている。

「いやいや、今に始まったことじゃないんだそうです。力士たちによると、それこそ2015年頃から、ずっとのことだとね。『とにかく僕たちの話を聞いてくれない』『独裁者のようなんです』とも悩んでいました。親方はおかみさんの尻に敷かれているどころか、『ほとんど洗脳されている状態』なのだとか。グループLINEには親方も入っていて、おかみの横暴ぶりもわかっているはずなんです。それでも見て見ぬふりで、おかみの言いなりなんですね。『もう親方を尊敬できない』『付いていけない』とまで言っているんですよ」


■「週に3日しか稽古を許されてない」


 公私にわたり力士らを支えて来たA氏がさらに懸念するのは、「これはもはや、いち相撲部屋だけの問題ではない。公益財団法人日本相撲協会に所属する親方として、職務をまっとうできていないのでは」ということだ。

「今年1月場所前に、業務のやりとりで、ある親方が式秀親方に電話したが、代わりに出たのはおかみさんでした。その後も心配した仲間の親方衆が部屋まで駆け付けるも、おかみさんが式秀親方に会わせない。体調の悪さを同僚の親方たちに知られたくなく、かばってもいたのだとは思いますが……。今年1月から本場所もずっと休場中ですし、もはや部屋の師匠として努めを果たせるのか、おおいに疑問を持ちます」

 式秀親方に異変があったのは、昨年12月のこと。高血圧で、杖をつく姿も見られたという。しかし、力士たちには詳しいことは一切聞かされていないままだった。

「『うちの親方、どこか悪いのか?』と心配しつつも、なかなか聞けなかったというんですね。おかみさんが親方の携帯電話を握っている。力士たちが親方と話したいことがあっても、おかみさんを通さないと会話も許されていなかったと聞きました」(A氏)

 本来なら自由に稽古場に下り、土俵で稽古やトレーニングに励むのが力士の本分なのだが、おかみさんが「勝手に土俵に下りるな」と制限し、稽古もシャワーも、すべてが事前予約制なのだという。どれもコロナ対策のためと言われれば、力士たちも反論できない。

 別の部屋のベテラン力士がこう証言する。

「本場所で顔を合わせて、力士同士でちょっと話すじゃないですか。式秀部屋の力士が『稽古をしたくとも制限され、週に3日しか稽古を許されてないって。5月場所は中止でしたけど、『3月場所も7月場所も、場所中の稽古が一度もなかった』と言っていたので、驚きました。俺は『楽でいいじゃないか〜』なんて笑ったんですけど、『もっとお相撲さんらしい生活をしたい。最弱部屋などと言われるが、僕たちは強くなりたいんですよ』と訴えるんですよね。同じ相撲取りとして、ちょっと可哀想でしたね」

 A氏は、さらにこう同情するのだ。

「協会の指導どおりに師匠と面談をしましたが、力士のなかには、もはや師匠夫妻とは信頼関係を築けない、と言う子もいる。10代、20代の若者たちの教育的側面もあるのが相撲部屋のはず。まさに“師匠不適格”だと言えます。先日、中川部屋の親方の暴言や暴力で部屋が閉鎖されましたよね。それにも匹敵するんじゃないか。部屋の体制が嫌なら相撲を諦めて引退するしかない、というのは酷ですよ。彼たちは相撲を続けたいと願っている。師匠が別の親方に代わるか、他の部屋に移籍して仲間同士がバラバラになってでも相撲を続けたいとまで言っているんです。相撲協会も『師弟の問題』と丸投げしないで、今一度 彼らの叫びに耳を傾けてくれないでしょうか」

 古くは「土俵には金が埋まっている」と親方が力士たちを叱咤したものだった。しかし、式秀部屋の稽古場には、若い力士たちの“理不尽さに耐え続ける泣きの涙”が染み込んでいるのだ。

週刊新潮WEB取材班

2020年8月16日 掲載

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