入江陵介が語る五輪への思いとコンディショニング「自分の泳ぎや、頑張ってる姿を見て感じてもらえることが一番大事」

入江陵介が語る五輪への思いとコンディショニング「自分の泳ぎや、頑張ってる姿を見て感じてもらえることが一番大事」

中学生から背泳ぎ専門になったという入江。タイムを争う水泳では泳ぎとともにターンも重要という。(C)Getty Images

プロとして活躍する方々のインタビューを通し、明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。第5回は、多くのスポーツの中でエネルギーの消耗が激しいとされる中、15年以上にわたりトップスイマーとして競技生活を送る競泳・入江陵介選手だ。コンマ何秒の泳ぎの速さを追求するためのコンディショニング、そして自分の強さ、弱さと向き合いながら心の平静を保つメンタリティなどを五輪出場への思いと意気込みとともに聞いた。

  ◆   ◆   ◆

――お母さまが音楽をやらせたかったというエピソードもをお聞きしたのですが、水泳を始めた経緯を教えて頂けますか?

「水泳は近所のスイミングスクールに最初に通ったのがきっかけで、6つ上に姉と3つ上に兄がおり、兄が幼い時から通っていたということで、自分も物心つく前から水泳を習っていました。他のスポーツはあまりしたことがなく、スポーツでは水泳だけをやっていました。同時に幼少期からピアノも始め、中学3年の時までレッスンに通い、クラシックのピアノをやっていました。進学の時に多少音楽の道もあったのですが、その時水泳の成績が上がってきていたので、高校はスポーツ推薦で行くことになりました」

――背泳ぎを選んだ理由というのはありますか?

「背泳ぎにしたのは中学1年生の時からですが、最初にメインとしていたのは、小学生の頃からクロールでした。そこから背泳ぎもやるうちに自分自身も好きになりました。理由はわからないですが、タイムがぐんぐんぐんって上がってきたので、そういったところで惹かれていき、中学生の時から背泳ぎの専門になることになりました」

――背泳ぎの難しさとか面白さはどういったところにありますか?

「他の種目だと上からスタートするのですけど背泳ぎの場合は下からスタートするという特殊なところはありますね。ずっと上を向いているなどは他とは違うところかと思います。ずっと顔が上がっていますし、比較的ターンのタイミングは難しい競技だと思います。一応旗が5メートル前に設置されてるんですが、壁が自分の目で見えるわけじゃないし、その旗を目印にして自分の感覚でターンするので、そこを合わせる難しさはあるかなと思います」

――水泳1本に絞るというところで思いや、決意というところではどういったものがありましたか?

「具体的に水泳で生きていく…というか水泳をしっかりやっていくと決めたきっかけが、高校進学の時だったのでした。そのとき他の習っていたピアノ等も辞め、習い事は水泳だけにしていたので、非常に集中して水泳に割く時間もとれたため、自分自身の競技成績の方も上がっていったので、気持ちも自ずとそちらに向いていきました」

――水泳が好きだったのですか?結果が出てきていたからですか?

「結果が出てきていたので必然として楽しさはありました。成績を残せる楽しさや、全国大会で活躍できるうれしさが楽しさになっていたんだと思います」

――競技1本に絞る中で大変だったことや印象的だったことはありますか? 

「やはり高校になってきて練習もきつくなりましたが、自分自身の目標や、夢があったので、きつい練習も耐えることができました。中でも練習は、朝練と夕練の2回練習で、特に朝練は5時台に練習をし、8時半くらいから始まる学校に行き、また学校の後は練習をして…という毎日だったので、早く起きなければならないつらさなどはありました。練習した後に学校へ通って、そこからまた勉強をするという1日がすごく長かったので、そこは非常に苦労しました。きつかったのですが、そのぶんやりがいもありました」
 ――朝5時台から活動してたということですが、スポーツ選手であるというところからも食べ物、朝ごはんはどうされていましたか? 

「朝からあまりガッツリは食べられなかったのですが、家が比較的洋食だったので、コーヒーとパンとヨーグルトという感じで朝はそれぐらいにして、練習が終わった後、学校へ行く前におにぎりなど食べたりしていました」

――子どもの頃に貧血気味だったことをお聞きしましたが、具体的にどのような感じだったのでしょうか?

「小学校、中学校の時に朝礼とかで長く立つことができなかったんですよね。長く立ってるとちょっと血色が悪くなってフラーっと倒れてしまったり、しゃがみこんでしまうことが多かったです」

――ご両親や指導者の方から食事の面でのフォローなどはあったのでしょうか?

「食事の方はあまり言われなかったんですが、比較的体重が落ちやすく、細身になりやすいタイプだったので、なるべく多く食べるよう意識していました。朝なら今ではしませんが、菓子パンなど、カロリーが高いものを食べたりして、エネルギーをとるようにしていました。身体は元々強い方ではなかったので、しっかり睡眠をとったり、自分の身体について年々考えることは増えていきました」

――水泳だとかなり消耗すると思うのですが、食事で工夫していたことは?

「一度にたくさんたべられる方ではなかったので、その分食べる回数を増やしたり、朝練前、朝練後に分けて食べてたりするなど、なるべく回数を多く食事していたように思います」

――一度にたくさん食べられないというところで、親御さんの、お母様の協力もあったかと思うのですが、具体的には食生活でどういったサポートしてくださっていたのか、また、思い出などはありますか?

「お昼ご飯とかもずっとお弁当を作ってくれてましたし、補食のような、パッと食べれるおにぎりやパンを持たせてもらったりしていました。小学生の頃も練習終わって家に着くまで、車で30分くらいかかってたので、その間に車の中で食べたりするようなものを持って来てもらったりしていました。その点はありがたかったです」

――今までお話をお伺いする中で、当時から、練習と共に食事にも気をつけていらっしゃる様子が伺えました。また、現在も栄養には気を遣っていらっしゃるとお聞きしましたが、ヘルシーで栄養のある食材として、きのこは食べられますか? 

「子どものころからよく食べていました。特に、風邪予防にもなりますし、冬場によく食べていました。鍋にはきのこが1種類だけでなく3種類くらい入っていて、いっぱい入っているのが当たり前になっていますね」

――味とか食感とかっていうところではお好みがあったりしますか?

「一番よく食べるのはシメジですね。バーベキューとか、炒め物だとエリンギとか入っていると食感も好きなので、よく食べます。身体によいのもあって、自分で作る時もきのこはよく使っています」

――自炊もされてるんですか?

「2017年からアメリカのノースカロライナでトレーニングする機会があり、その時に自分で作るようになりました。普段はトレーニング場の寮で食事をとっているので、オフの日とかは自分で作ったりします。1人ぶんを作ると食材が余ってしまうので、そういった部分で使い切る大変さはあるのですけど、自分で食べたいものをネットなどで調べたりして、楽しみながらやってます」

――得意料理は?

「ハンバーグはよく作っていました。煮込みハンバーグとかは一気にいっぱい作って、作り置きしていましたね。また、圧力鍋を使い、じゃがいも、にんじん、きのこなども入れて自分なりに栄養を考えて入れて煮込んだりしています」
 ――食べるものにもしっかりと意識をされている印象の入江選手ですが、今までの経歴を振り返っていきますと、16歳の時に日本代表に入って、日本新記録など、長い間素晴らしい成績を収めてきたのですが、自分の精神的な成長の速度と気持ちは追いついていっていたのでしょうか? 

「高校2年生の時に日本代表に入ったのですが、その当時を振り返るとすごくプレッシャーはありましたし、緊張感もすごく高かったですし、慣れない日本代表という立場でやって、色々と戸惑いはあったんですが、そばにいてくださった先輩方がすごく優しく接してくださっていたので、自分自身すごく楽しかった思い出があります」

――2012年のロンドンでは初めて五輪でメダルを獲得(※編集部注:100m背泳ぎ銅/200m背泳ぎ銀/400mメドレーリレー銀)しましたが、この時に例えば金だったら、今の自分はもう少し違う人生を送ってたかもしれないと思ったことはありますか?

「あの時金とってたらもしかしたらすぐパッと辞めていた可能性ももちろんありますし、とれなかったからこそ今でもこうやって続けられて、サポートいただいているというのもあります。しかしながら金メダルだけが全てではないとはもちろん思うので、アスリートとして、自分の泳ぎや、自分の頑張ってる姿を見ていただいて感じてもらえることが一番大事だと思っています」

――現在31歳で2021年オリンピックも迫ってきましたが、現在のコンディションとしてはいかがですか?

「非常にいいトレーニングができていますし、ここからしっかりと体調を壊さずに、4月の日本選手権というオリンピックの代表が決まる大会で、まずはしっかりといい成績を残したいと思います」

――2月のジャパンオープンでは手応えは感じられたのでしょうか?

「そうですね、強化の途中としてはいいタイムだったと思うので、ここからしっかりタイムを上げられるようにしていきたいと思います」

――東京オリンピックに向けてまずは選ばれることだとは思いますが、目標やどういう泳ぎがしたい、五輪まで過程を踏んでいきたいと思っていますか?

「今までとは違うオリンピックの見方に多くの方々がなると思うので、開催された暁にはしっかりと自分の泳ぎを最大限、自分自身100%を発揮したいです。それによって見ている方が何か勇気づけられたり、何かを伝えられて、感じていただけるレースがしたいと思います」

【プロフィール】
入江陵介(いりえ・りょうすけ)
1990年1月24日生まれ。178cm。イトマン東進所属。大阪府大阪市出身。
0歳から水泳を始め、2006年日本選手権の200m背泳ぎで高校新記録を樹立。以降国内外の大会に出場し、結果を残し続けている日本水泳界のリーダー。2017年には練習拠点をアメリカに移して新境地を開拓するなど、さらなる高みを目指している。五輪は北京、ロンドン、リオデジャネイロと3大会に出場し、ロンドンでは200m背泳ぎ、メドレーリレーで銀メダル、100m背泳ぎでは銅メダルを獲得した。生涯4度目の五輪出場と活躍を目指す。昨年、著書『それでも、僕は泳ぎ続ける。』(KADOKAWA刊)を発表。困難に直面しても競技を続ける理由とそのメンタリティについて語っている。

文●保坂明美(THE DIGEST編集部)
 

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