バスケットボールのさらなる発展に!FIBAが立ち上げた“メンター育成プログラム”とは?<DUNKSHOOT>

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FIBAが立ち上げた新プログラムに、『プレーヤーズ・コミッション』の委員長ノビツキーも大きな期待を寄せている。(C)Getty Images

ハイレベルな競技者を目指す上では、ただひたすら競技に打ち込むだけでなく、メディア対応や金銭面の管理、注目度との付き合い方、日常生活とキャリアのバランス、若い選手であれば学業との両立など、さまざまな状況と向き合っていく必要がある。

 それらに神経を使うことは、時にパフォーマンス向上の妨げになるが、逆に正しいスキルを身につけることで、成長を加速させることも可能だ。ゆえに、そうした生活面と競技面のバランスを上手く取っていく方法や取り組み方を指南してくれる師、いわゆる“メンター”の存在があれば、それは大きな助けになる。

 ということで、国際バスケットボール連盟(FIBA)はこのたび『プレーヤーズメンターシッププログラム』なるプロジェクトを立ち上げた。これは、FIBAに加盟している全213の団体に、男女ともに“メンター候補”となるその競技の自国での一人者を推薦してもらい、彼らにオンラインでメンター育成プログラムを受講してもらう、というものだ。
  育成プログラムは次の3要素で構成されている。

@アスリート・ライフスタイル・メンター資格
AFIBA Off-Court Guide
Bそれぞれの国における、学業との両立について論文執筆

 @は、近年イギリスなどで注目度が上がっている職業資格で、トップレベルのアスリートへの生活、学業面のサポートを専門とするイギリスの機関、『Talented Athlete Scholarship Scheme (TASS)』の協力のもと、アスリートがパフォーマンス向上を目指す上で重要となる生活スタイルや価値観、姿勢、ワークエシックなどに的確なアドバイスを与える術を学ぶ。

 スポーツで高いレベルを目指すには、身体的な鍛錬が重要であることに変わりはないが、もっとも効果的な形でそれを実践していくには、目的意識や、難題にぶち当たったときにいかに解決し乗り越えるか、といった“オフ”の部分でのメンタルコントロールも非常に重要だ。この講習では、的確なアドバイス法を学んだり、選手に理想的な競技環境を作ってあげられるよう、メンター自身が有益なネットワークを構築する術も習得する。
  Aは、FIBAが構築しているデジタルプラットフォームにアクセスして、競技者として成長していく上で変わっていく周囲の環境へどう対応するか、将来的なキャリアプラン、メディア対応、公平な心を保つといった精神面、金銭面など、文字通りコート外で必要なスキルについて学ぶ。

 そして仕上げのBは、受講者一人ひとりが、自国の若い優秀なアスリートたちにいかに学業の機会を与えてあげられるかについて論文形式でまとめる。

 これら3つを完了すると、受講者には『プレーヤーズメンター』の資格が与えられ、今後各国の協会・連盟とともに、選手のサポートに実践的に取り組んでいく。

 FIBAのアンドレアス・ザグクリス事務局長はプログラム発足に際し、「FIBAプレーヤーズメンターシッププログラムは、FIBAがコートの内外で選手たちのサポートに尽力していることの象徴であり、我々の『プレーヤーズ・コミッション』の経験やアドバイスを非常に頼りにしている」と語った。
  FIBAの『プレーヤーズ・コミッション』とは、FIBA内に2014年から設置されている元選手たちによる委員会だ。2019年に選出された2代目の委員長には、現役引退直後のダーク・ノビツキー(元ダラス・マーベリックス)が任命されている。副会長は、元オーストラリア女子代表で世界選手権やオリンピックでメダルを獲得しているジェニファー・スクリーン。元日本代表の大神雄子氏もメンバーのひとりだ。

『プレーヤーズ・コミッション』の委員長就任時に「我々がこよなく愛するこの競技がこれからも発展していけるよう、世界中の現役、そしてリタイアした選手たちと協力しあって、彼らの声をしっかり吸い上げ、問題点は積極的に議論していきたい」と抱負を語っていたノビツキー。続けて「プレーヤーズ・コミッションのメンバーはみな今回のこのプログラムの立ち上げに非常にワクワクしている。こうしたメンターの存在は、若い優秀な選手たち、そして各国協会にもポジティブな変化を与えてくれることだろう」とコメントした。
  スクリーンも「若い選手、とりわけ女子選手が、自分たちの極限を目指してこの競技を続けていく上で、メンターの存在は非常に有効です。選手たちが自身のキャリアと学業の間に絶妙なバランスを見つけられるよう、的確なサポートを与えていくことができるでしょう」と付け加えた。

 競技者のためのアスリートライフスタイル・ライフスキル、また、ライフスキルをスポーツを通じて養う、という発想は世界中で注目度を増していて、今後もどんどん発展していく分野だ。ちなみにWHO(世界保健機関)によると、ライフスキルとは『日常的に起こる様々な問題や要求に対して、より建設的かつ効果的に対処するためのスキル』のことで、『意思決定、問題解決、創造的思考、批判的思考、コミュニケーションスキル、対人関係スキル、自己認知、共感性、情動への対処、ストレスの対処』の10項目が挙げられている。
  @、Aの2項目でアスリートライフスタイルを学んだ後、Bの論文で、それを自国の状況に落とし込む活用法に展開させて修了、という点は興味深い。FIBAというバスケットボールを統括する世界機関が主導し、全加盟団体に推進させていくというこの試みで、競技者が置かれている環境が向上へ向かうことを期待したい。

文●小川由紀子

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