「ロッドマンは得点しないことに誇りを持っていた」ブルズ時代の同僚が語る名リバウンダーの“哲学”〈DUNKSHOOT〉
2021年06月09日 18時30分 THE DIGEST

カーはロッドマンについて「得点しないことに誇りを持っていた。型にはまらない男だった」と評した。(C)Getty Images
デニス・ロッドマンと言えば、NBA随一の悪童として語り継がれている一方で、史上最高のリバウンダーとしての呼び声も高かった。7年連続リバウンド王は、偉人ウィルト・チェンバレンを上回る連続記録で、優勝も5回経験している。シカゴ・ブルズ時代の同僚だったスティーブ・カー(現ゴールデンステイト・ウォリアーズ・ヘッドコーチ)が、希代の職人の“哲学”について見解を述べている。
ロッドマンはアイザイア・トーマス、ジョー・デュマース、ビル・レインビアらとともに“バッドボーイズ”の異名を取ったデトロイト・ピストンズの一員として、1989、90年とリーグ連覇を達成。90、91年には2年連続で最優秀守備選手賞に輝くなど、名将チャック・デイリーの下でチームに欠かせない選手へと成長していった。
ピストンズ時代は、2年目の1987-88シーズンに自己最多の平均11.6点をあげるなど得点面でも貢献していたが、1993年10月のサンアントニオ・スパーズ移籍以降はリバウンド職人色が強くなり、ブルズではマイケル・ジョーダン、スコッティ・ピッペンの強力デュオを支える黒子役として、96〜98年の後期3連覇に大きく貢献した。
1991-92シーズンから7年連続リバウンド王に輝いた間、平均14.9本を下回ることは一度もないハイアベレージを残した一方、ブルズでの3シーズンは平均5.2点とスコアリングには“無頓着”だったことが数字からもうかがえる。
そんなロッドマンと同僚として3連覇の喜びを分かち合ったカーは、『KNBR』の番組「Tolbert, Krueger and Brooks」で、こう語っている。
「彼は得点しないことに誇りを持っていたと思う。型にはまらない男だからね。シカゴで一緒にプレーしていた時、彼はオフェンシブ・リバウンドを取って、レイアップでゴールに入れる、あるいは味方にボールを戻すというゲームをしていた。もっとリバウンドが取れるように、さらにシュートが外れることを望んでいたと思う(笑)」
当時のブルズは、名将フィル・ジャクソンが標榜するトライアングル・オフェンスを軸としていたが、ロッドマンは驚くべきスピードでシステムを吸収していったという。
「彼はすぐにトライアングル(オフェンス)を習得した。時間にして3日。まだ理解できていない選手もたくさんいたよ。彼はゲームの実戦感覚が素晴らしいし、もっとたくさん得点できたはずだけど、デニス・ロッドマン(という独自の存在)でありたかったんだ」
カーは、“デニス・ロッドマン”という唯一無二の存在であり続けるために、得点に固執することなく、リバウンドやディフェンスに誇りを持って臨んでいたと見解を述べている。
現代NBAはポジションレスとなり、選手にもオールラウンドな能力が求められる風潮があるが、唯一ウォリアーズのドレイモンド・グリーンはロッドマンの“匂い”を感じさせるとカーは語る。
「ドレイモンドはユニークな選手だ。私が今まで見たなかで、得点をまったくせずに試合を支配できる唯一の男はデニス・ロッドマンだった。ドレイモンドは守備面でデニスと似ていて、5つのポジションすべてを守ることでゲームをコントロールできる」
もっとも、時代背景やバスケットボールのスタイルの違いもあり、やはりロッドマンは“第2の存在”が生まれない、独自な系統として語り継がれていくべきだろう。
構成●ダンクシュート編集部
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