羽生結弦が今季ついに、前人未到“4回転半ジャンプ”の成功なるか!? 残り「8分の1」回転の壁をどう越えてくるのか

羽生結弦が今季ついに、前人未到“4回転半ジャンプ”の成功なるか!? 残り「8分の1」回転の壁をどう越えてくるのか

4Aを最初に跳ぶことを最大の目標に掲げる羽生は、果たして今季見せてくれるか。(C)Getty Images

北京五輪シーズンとなる今季、羽生結弦は決意を持って挑む覚悟を改めて誓った。4月の世界国別対抗戦(以後、国別)以来、久しぶりにファンの前で演技を披露した羽生は、7月9日の「ドリーム・オン・アイス」(DOI)初日にこんなコメントを残した。

「今シーズンは自分の最大の夢に向かって全力で努力していきます」。そして、「平昌オリンピックシーズンみたく、絶対に(五輪で)金メダルを取りたいという気持ちは特にありません。ただ、必ず今シーズンで4回転半(ジャンプ)を決めるんだという強い意志はあります。しっかりとその意志を、決意を持って今シーズンに挑みたいと思っています」と。

 幼い頃から抱き続け、2連覇した平昌五輪後に本格的に取り組み始めたクワドアクセル(4回転半ジャンプ=4A)を誰よりも早く習得して試合で最初に成功させること。それが羽生の「最大の夢」だ。66年ぶりの五輪連覇後の一夜明け会見で、次なる目標について聞かれた五輪王者はいの一番で「夢がかなった気持ちはあるし、やるべきことをやれた実感はある。ただ、まだやりたいことはスケートで残っている」と語り、前人未踏の4Aを史上初めて試合で跳んで降りたスケーターになると意欲満々だった。
  羽生にとってのアクセルジャンプは、彼のスケート人生を物語る上で欠かせない。世界のトップ選手に上り詰めることができ、そのスケート人生を王道に導いたのは最も得意なジャンプであるトリプルアクセル(3回転半ジャンプ=3A)を最大の武器にしたからだ。幼少期にジャンプ指導を受けた恩師の都築章一郎氏からは「アクセルは王様のジャンプ」と言われていたという。その「王様のジャンプ」を磨き上げた3Aは芸術品であり、誰も真似できない「究極の美しいジャンプ」を跳ぶまでになった。

 そして、さらに最も難しいジャンプとなる4Aを跳ぶことを最終目標に据え、今年3月の世界選手権で銅メダルに終わった後のメダリスト会見では「4Aを練習して誰よりも早く公式戦で決める人間になりたい」と話していたが、この時点では「まず着氷させて完成度を上げたい」、「あと8分の1回れば立てる」と未完の状態だった。
  それでも、熱を入れて続けてきた4A練習で少しずつ手応えを掴みつつあるようだ。5か月前の国別後に行なわれたエキシビションの公式練習で国内初となる人前での4A練習の挑戦は、並々ならぬ思い入れの発露か。12度挑むも6度転倒するなどで、結局成功はしなかった。その跳び方を見ると、明らかに得意の3Aとは違っていた。無駄な力を使わずに軽々と跳ぶ3Aと比べ、4Aは力を振り絞るように深く踏み込んでから跳び上がるジャンプだった。この時点でも「練習でもまだ一度も成功がない」と言っていたが、羽生のモチベーションは揺らがず、「4Aがそろった、完成された演技を目指して頑張っていきたい」と抱負を語っている。

 そして迎えた五輪シーズンがついに幕を開けた7月。シーズンイン最初の演技だったDOIでのエキシビションナンバー『マスカレイド』での3Aの跳び方がこれまでのジャンプが「柔」としたら、それとは少し違って力強さの「剛」が入っていたようだった。初日の公演後に会見に応じた羽生はこんなことを話していた。
 「このアイスショーに焦点を絞って練習しなくてはいけなかったので、そこまで4Aの練習はできていません。ただ、アクセルの基礎の練習を一から自分が作り直して、4回転半に向けて作り直す作業をしっかりできたので、(DOIが終わってから)本格的に練習をしていきたいなと思っています」

 これまでの高難度ジャンプ習得の過程を見ても、史上初めて4回転ループを成功させた羽生が、超大技の4Aを試合で成功することをファンのみならず、スケート関係者も期待している。「8分の1」の回転不足から着氷までどの程度に迫ってきたのか。高さとパワー、回転軸、そして回転スピードの4拍子をどう合わせて完成形に持っていけるか。完璧な習得まであとわずかな地点まで来ていることは間違いないだろう。

文●辛仁夏 YINHA SYNN
1990年代に新聞記者となり、2000年代からフリーランス記者として取材活動を始め、現在に至る。フィギュアスケート、テニス、体操などのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材する。

【PHOTO】日本のアイス・プリンス!羽生結弦のシニアデビューから現在をプレイバック!
 

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