一般客に混じり試合観戦、街中での“神対応”…“気さくなスーパースター”アデトクンボが話題に<DUNKSHOOT>

一般客に混じり試合観戦、街中での“神対応”…“気さくなスーパースター”アデトクンボが話題に<DUNKSHOOT>

一般客に混ざって弟の試合を観戦したヤニス。そんなエピソードからも、彼の気さくな人間性が伺える。(C)Getty Images

田舎町にある小学校の体育館ほどのアリーナで、目の前にNBAのMVP受賞者が座って観戦していたとしたら――これが先週の金曜日、フランスにある人口8000人の小さな町フールで実際に起こった。

 8000人といったら、町中の人が全員残らず集合しても、NBAのアリーナを半分満たせるかどうか。そんな町にあるキャパシティ1300人のアリーナに、2シーズン連続(2019、20年)でMVPに輝いた、“グリーク・フリーク”ことヤニス・アデトクンボが降臨した。

 9月24日の夜、リヨン郊外のフールで、フランスチャンピオンのアスヴェルと、今シーズンからトップリーグに昇格したフォス・プロヴァンスのプレシーズンマッチが行なわれた。ヤニスはそこに、今夏ロサンゼルス・レイカースからアスヴェルに移籍した弟のコスタスの応援に訪れたのだった。

 大仰なガードマンをつけるわけでもなく、模様の入った布製マスクにパーカーというラフな出で立ちで、パートナーと1歳になる息子とともに観客に混ざってスタンドに座っていたヤニス。立ち上がった際に211センチの長身が目立たなければ、誰だかわからないほど自然に溶け込んでいた。
  試合は80−73でフォス・プロヴァンスが勝利。惜しくも敗れたコスタスだが、この試合では10得点をマークし、兄が見守る前で豪快なダンクもかましてみせた。

 試合後にコート上へ招かれたヤニスは、フォス・プロヴァンスの選手たちやキッズチームと記念撮影をしたり、アリーナの外に出てからも、気さくにファンへのサインやセルフィー撮影に応じた。間近で拝める機会などめったにないNBAの大スターに、手を伸ばせば届く距離で接することができたフールの人たちにとって、この日は生涯忘れられない1日となったことだろう。スタンドでヤニスの後ろに座っていた観客の1人は「ヤニスのすぐ後ろに自分が座っているなんて……これでもう安らかに死ねる」とSNSに投稿したほどだ。

 ヤニス一家は数日前からコスタスの新天地となったリヨンに滞在し、家族3人でセンター街を歩く姿も目撃されていた。バスケファンの学生は『「もしやヤニスでは?」と思いつつも誰も気づいていない様子だったし、まさかこんな繁華街で普通にショッピングしているとは信じられなかったが、勇気を振り絞って声をかけたらまさしく本人だった』と地元紙に体験談を語っている。

 ヤニスはとても気さくに会話に応じ「応援してくれてありがとう」という感謝の言葉とともに握手をかわしてくれたという。最初は「家族が一緒だから……」と躊躇ったセルフィーにも結局応じてくれたそうだ。
  フランス入りする前は「優勝したら招待する」という約束通り、ミルウォーキー・バックスのチームメイトたちを招いてキプロス島でバカンスを楽しんだというヤニス。故郷のギリシャでは、生まれ育った町を訪れたほか、同国のレジェンドであるニコス・ガリスと対面したり、首相やカテリナ・サケラロプル大統領も同席した、母親と弟のアレックスにギリシャの市民権を授与するセレモニーにも出席した。

 ちなみにニコス・ガリスは、1980〜90年代前半にかけて大活躍したアメリカ生まれのギリシャ人シューティングガードで、キャリア通算のクラブ平均得点が33.6点、代表でも30.6点という、とんでもないスコアラー型シューターだった。2007年にFIBAの初代殿堂入りを果たし、2017年にはNBAでプレー経験がないアメリカ国外選手では極稀なバスケットボール殿堂入りも果たしている。2004年のアテネ五輪では、聖火台に点灯するランナーの1人にも選ばれたほどの、同国を代表するアスリートだ。

 そして1994年生まれのヤニスは、ちょうどガリスが現役引退した年に生まれた。
 「彼のおかげでギリシャで多くの人がバスケットボールに目覚めた。彼の瞳には炎が宿っていたよ」

 大先輩との対面に興奮した様子のヤニスは、兄のタナシス、そしてもう1人のギリシャのレジェンド、テオドロス・パパルーカスと、NBA優勝トロフィーを囲んだ超豪華4ショットをインスタグラムに投稿している。

 ギリシャ国民であることを誇りに思い、強い故郷愛を抱いているヤニスは、ギリシャ代表での成功を目標に掲げている。来年開催されるユーロバスケット(9月1〜18日、チェコ、ジョージア、ミラノ、ドイツで共同開催)出場に、今から意欲を燃やしているそうだ。

「自分をMVPやチャンピオンとは呼ばないでほしい」と語る彼は、本心から、まだまだ自分は成長過程でもがく挑戦者だと思っている。どんな田舎町のアリーナであっても、関係者のための特別席はあるものだが、そういった場所ではなく、一般客に混ざって楽しく観戦するような彼の行動にも、そんな地に足のついた彼の人間性が現れている。

 それに、アデトクンボ兄弟は本当に仲がいい。4兄弟の何人がロースター入りするかはわからないが、来年のユーロバスケットのギリシャ代表が今から楽しみだ。

 故郷で英気を養った彼は、ミルウォーキーに戻り、NBAでの新シーズンに向けたトレーニングキャンプへと突入する。

文●小川由紀子

【PHOTO】並外れた身体能力とド迫力のダンクでスター街道を驀進!“グリーク・フリーク”ヤニス・アデトクンボの厳選ショット集!

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