今季からNBAに初挑戦する「ナッシュの後継者」。遅咲きのケビン・パンゴスが歩んだ道

今季からNBAに初挑戦する「ナッシュの後継者」。遅咲きのケビン・パンゴスが歩んだ道

U16時代からカナダ代表として活躍したパンゴス。人柄も彼の魅力のひとつだという。(C)Getty Images

今オフ、クリーブランド・キャバリアーズで「ケビン」の話題といえば、ケビン・ラブの去就についてだったが、もう一人のケビン、カナダ人ガードのケビン・パンゴスが、ヨーロッパでの6シーズンのプロ経験を引っさげ、今シーズンからNBAに初挑戦する。

 パンゴスは1993年生まれの28歳の“オールドルーキー”。カナダのトロント郊外の小さな町で育ち、少年時代は、国技ともいえるアイスホッケーはもちろん、バレーボール、サッカーなど、様々なスポーツに挑戦した。

 しかし彼が最も熱中したのは、両親も選手だったバスケットボール。他のスポーツは、冬はホッケー、夏はサッカー、というように季節に合わせてプレーしていたが、バスケだけは年間を通して常に続けていた。町から続く道路を一直線に下った場所にはトロント・ラプターズの本拠地があり、よく観戦に足を運んでいた。

 カナダのハイスクールを卒業したあとは、数あったNCAAのオファーの中から、ゴンザガ大に進学。八村塁(ワシントン・ウィザーズ)とはかぶらなかったが、3歳年下のドマンタス・サボニス(インディアナ・ペイサーズ)とは1年共闘している。

 カレッジ時代は同大学の3ポイント記録を更新するなど活躍したものの、2015年のNBAドラフトではどのチームからも指名されず、欧州でのプロキャリアを目指した。そうしてスペインACBリーグのグランカナリアに入団するのだが、振り返ればこの中堅クラブを海外でのプロデビューの場に選んだのは、彼の成長にとって大正解だった。
  ここで彼はすぐにスターティングガードを任されると、国内ではコパ・デル・レイ(国王杯)でクラブ史最高位の準優勝、ユーロリーグのアンダーカテゴリーにあたるユーロカップでもセミファイナル進出に貢献。

 ユーロカップでのスタッツが平均11.9得点、4.8アシストという数字は、平均2桁得点をあげるのが難しいヨーロッパのカップ戦において、ルーキーにとっては非常に高く評価できるものだった。

 その活躍を買われて、翌シーズン、リトアニアの名門ジャルギリス・カウナスに引き抜かれると、ここでも2年目の17-18シーズンには、優勝した1999年以来初のファイナルフォー進出という近年なかった好成績の実現に寄与した。
 
 次に所属したバルセロナでは、ケガでの長期離脱もあり思っていたほどの活躍は望めなかったが、昨シーズン、ロシアのゼニト・サンクトペテルブルクに移籍すると、あと一歩でファイナル4進出という、新興クラブにとって奇跡のようなシーズン実現の立役者となった。年間を通して得点、アシスト数でチームトップ、とりわけプレーオフでは平均16.2点、 7.2アシストと、パンゴスはまさにチームの中枢的存在だった。 
  今夏フリーエージェントとなると、CSKAモスクワやアナドルー・エフェス、古巣のバルセロナなど、優勝候補のビッグクラブがこぞって獲得に手を挙げた。しかしパンゴスは、少年時代からの夢だった「NBAへの挑戦」を実現すべく、NBAでFA交渉が解禁になる8月を待った。

 そして9月17日、キャブズと契約を結んだことが発表された。

 これまでもNBAのサマーキャンプに参加したことはあったが、望みうる契約を獲得するまではこぎつけられなかった。そんな彼にとって、ついに訪れた、夢への第一歩だ。

 キャブズは若手が多いチームだが、パンゴスはルーキーといっても6年のプロキャリアを携えての参戦となる。シューティングガードもこなす彼の持ち味は、確率の高いアウトサイドシュートと、ビジョンの良さを生かした、フリーの味方を巧みに使えるパスワークだ。

 公式では185pもコート上ではもっと小柄に見えるが、流れるようなボールハンドリングから繰り出す3ポイントやアリウープパスは、ゲームの展開を覆す破壊力を持つ。そして歴代の指導者やチームメイトら、誰もが「選手としてだけでなく人間性が素晴らしい」と口を揃える好人物である彼は、コート内外で潤滑油となれるチームプレーヤーだ。
  キャブズのバックコート陣、ダリアス・ガーランドとコリン・セクストンの若手コンビに、ひと味違った経験値やバスケセンスを加味する存在になれるか。ジャレット・アレンや、ルーキーのエバン・モーブリーら、ビッグマンを暴れさせるパスさばきにも期待したい。

 またキャブズは、NBA11年目のベテラン、リッキー・ルビオも獲得した。欧州リーグからNBAへのトランジションを経験している彼の存在は、同じポジションのパンゴスにとって心強いことだろう。

 そしてパンゴスにはもう1人、強力なメンターがいる。カナダが産んだ英雄で、現ブルックリン・ネッツ・ヘッドコーチのスティーブ・ナッシュだ。U16からカナダ代表でプレーしているパンゴスは、同国では常にナッシュの後継者と言われて育った。

 その大先輩も、代表キャンプで一緒になるたびにパンゴスを目にかけていたという。

「最初は恐れ多くて、(アドバイスをもらうといった)大きな期待はしていなかったけれど、彼はいつも僕を気にかけてくれて、アドバイスをくれたり、成長を見守ってくれている。いまでは、友人、と呼べるような存在になれた」(パンゴス)

 少年時代、ナッシュが1日500本のシュート練習をしていると耳にすると、パンゴスも同じように居残りシュート練習を日課にした。それはゴンザガ大に入っても続いていたと、大学時代の恩師も証言している。

「ナッシュは、カナダ出身の選手が、世界最高峰リーグであれほどビッグな存在になれるんだ、という夢を持たせてくれる存在だった」と、パンゴスはインタビューで語っているが、それとラプターズの本拠地の近くで育ったこと、この2つは、彼のバスケキャリアに大きな影響を与えた要素だ。

 欧州からの挑戦者ではあるが、アメリカのカレッジバスケ出身のパンゴスは、他の欧州組とは違った経験を備えている。

 低迷からの脱却を図るキャブズでそれがどう生かされるのか。彼のルーキーイヤーを見守りたい。

文●小川由紀子

関連記事(外部サイト)