バスケで海外を渡るなら…必須となるのは「語学」と「メンタリティ」。異国で挑戦を続ける山田愛の見解

バスケで海外を渡るなら…必須となるのは「語学」と「メンタリティ」。異国で挑戦を続ける山田愛の見解

高校、実業団と日本のトップで活躍した山田愛が、海外でプレーする際に必要な語学とメンタリティを語る。(写真は本人提供)

近年、野球やサッカーのように、バスケットボールも海外でプレーする、または志す選手が増えている。その時に多くの選手が直面するのが「言葉の壁」。今回は、高校時代に名門・桜花学園で活躍し、現在は海外でのプロ契約を目指して活動している山田愛さんに、自身の経験談を語ってもらった。

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 オリンピックに続き、パラリンピックでもバスケットボールが日本を熱くしました。車いすバスケットボールの男子チームは銀メダル。女子も6位と好成績で、男子は藤本怜央選手、香西宏昭選手、豊島英選手、女子では網本麻里選手といった海外リーグでプレー経験があるベテラン選手がチームを牽引していました。

 オリンピックに出場した男子の八村塁選手、渡邊雄太選手、馬場雄大選手をはじめ、女子バスケでも徐々に海外でプレーをする選手が増えてきていて、日本のバスケ選手の国際化が進みつつあるのかなと感じます。

 現在、私も海外プロリーグでのプレーを目指していますが、海外挑戦にあたって想像以上に大変なのが「言葉の壁」です。海外でのプレー経験がある選手は、プレー面だけでなく、言葉の高い壁をクリアしながら戦っています。今回は、私が「言葉の壁」をどのように乗り越えてきたか、乗り越えるためのコツなどもお話しできればと思います。
 ■渡豪した初日に事件が。初めて覚えた単語は<bambag>

 日本の実業団・JXサンフラワーズ(現・ENEOSサンフラワーズ)を2019年に引退して、すぐに向かったオーストラリア。この時、英語は全く話せないし、聞いて理解することもできませんでした。実は、3か月くらいですぐ話せるようになるだろうと、自分の力を過信していました。

 渡豪した初日に事件が起きました。買い物に行こうとホストファミリーと話していた時に、なんと日本から来た飛行機に財布入りのポシェットを忘れてしまったことに気づきました。でも英語を話せなかった私は、「財布を飛行機に忘れてきた」という事実をどう伝えたらいいのかわからない。この時に使う「忘れた」という単語は<forgot>ではなく<left>。それさえもわからなかった。

 Google翻訳を駆使して、なんとかホストファミリーに事実を伝えて、航空会社に連絡をしてもらいました。まさか、オーストラリアで初めて覚えた単語が<bambag(ポシェット)>になろうとは。伝えられない辛さを実感した海外生活初日になりました。ちなみに財布は3週間後に無事に戻ってきました。
 ■バスケットを通して身についた<伝える英語>

 現地では語学学校(MelbourneにあるILSC)に通っていました。外国から来ている人たちが大勢いて、私は下から三番目のクラス。授業内容は日本の英語の授業のような、日常会話を話すためのコースでした。

 語学力がついたのかどうか、実感が持てないまま1か月半が経った頃、ホストファミリーがバスケの試合に連れて行ってくれました。これがきっかけで「また、バスケがやりたい!」と思い、運よく地域のチームに入ることができました。ただ、語学学校の授業時間とバスケの練習時間が被ってしまっていたので、とても悩みましたが、バスケをやりたい気持ちが強かったので語学学校を辞めました。

 では、どうやって英語が上達したのかというと、バスケチームでのコミュニケーションを通してでした。チームでの英語環境はすごく刺激的でした。チームには現地のオーストラリア人以外に、インポートプレーヤー(国外選手)としてアメリカ人が所属し、オーストラリアの英語とアメリカの英語を両方聞いて過ごしました。

 当時は流れるように話すアメリカ英語が聞きづらかったりもしましたが、ネイティブのチームメイトと一緒に過ごすにつれて、「理解したい!伝えたい!」という気持ちが芽生えました。チームメイトは同じくらいの年代の人たちばかりだったので、とても仲良くしてくれて、それぞれの年代が使う英語を聞きながら身につけていきました。正しい文法を使った英語ではないかもしれないけれど、<伝える英語>はバスケを通してとても上達したと思います。
 ■海外でバスケをプレーするのに必要なものとは?

 バスケをプレーするにあたり、実際に何が必要だったのかというと、実は語学力よりも怖気づかない、挫けない、自分に負けないメンタルの方が大切だったと思います。例えば、タイムアウトになった時、思っていることは言えたほうがいいし、コーチの言っていることを理解しなくてはならないので、語学力は必要だとは思います。でも、思っていることは、完璧に喋れなくても、片言の英語でも意思を表す・伝えることが大事だと思います。

 そしてコーチやチームメイトが言っていることを聞いて、「理解している」ということを相手に伝えることも同じくらい大事です。よくわからなかったら、「Pardon?」「Sorry?」「Can you say that again?」などと、怖気づかないでちゃんと聞き返すこと。そして少しでもわかったら、「私はちゃんとあなたの言いたいことをしっかり全部理解している」と伝えることが必要です。

 そこが曖昧で、「この子は理解しているのかな?解っているのかわからないな」と思われてしまったら、相手にマイナスな印象を与えてしまう。そしてその印象は試合に出られるか、出られないかに関わってきてしまいます。相手の話していることを理解できるまで聞き返すような強い気持ちは必要だと思います。
 ■WNBAの選手に自ら交流

 私はオーストラリア滞在中にプロチームと契約ができたのですが、コロナで2020年はリーグが開催されませんでした。とても残念でしたが、アメリカで行なわれたコンバインに参加することができました。コンバインはWNBAの関係者などが視察に来て、いい選手をスカウトするという、選ばれたプロ選手が参加できるイベントです。私はそこでWNBAのエージェントに声をかけられて契約をすることができました。ちなみに大勢いたプレーヤーの中で、エージェントと契約できたのは私を含め2名だけです。

 このコンバインには、WNBAで12シーズンプレーしたレジェンドのベティ・レノックスがいました。普段会えるような人ではありません。ベティは、コンバインの後に私に声をかけてくれて、アドバイスやWNBA時代の話、12シーズンどうやって戦ってきたか、中国や海外でのシーズンのことなどを話してくれました。

 その後、コンバインでは高評価だったものの、コロナの影響もあってなかなか海外でプレーできない焦りや苛立ちのなか、何かを変えたいと思い、勇気を出してベティがいる施設のCoach Lennoxに直接連絡をしました。彼女も私を覚えていてくれたことがとても嬉しかったし、さらに自分のトレーニングにも誘ってくれました。この連絡のあと、滞在先のサンアントニオから、ベティがいるカンザスシティまで1人で会いに行きました。
  完璧な英語ではなかったかもしれませんが、熱意を感じてもらい、コンバインに参加した大勢の選手の中の1人として、彼女と一緒にトレーニングができ、直接指導を受けることができました。WNBAの選手を肌で感じ、技術や心構えを学べたことは、とても刺激になりモチベーションが上がりました。

 また、オリンピックのバスケットボール3×3競技の金メダリストで、WNBAのスター選手であるケルシー・プラムとも話をする機会がありました。英語が完璧じゃなくても彼女は私の言葉に耳を傾けてくれました。ケルシーは当時6か月前にアキレス腱を切ってリハビリ中でしたが、毎日ヨガをしたり、プロテインを摂って復帰に向けて頑張っていると話していました。そんな彼女は東京オリンピックで見事に復帰し、金メダルを獲得。本当にすごいことです。
 ■英語ができたからこその学び

 ベティとケルシーに会って学んだことは、プロとしての意識の高さ。自分が結果を残すために、いま何をすべきか、どう考えるべきか。それを言葉やトレーニングなどで直接感じられたことは自分にとってとても価値がある経験となりました。

 彼女たちと交流することができたのは、もちろん多少なりとも英語が話せたからです。完璧に話せなくても、2人とも私が何を言いたいのか聞いてくれましたし、私も一生懸命に彼女たちの言葉を聞いていました。
  英語はまだまだ勉強中ですが、日本語以上に「相手に自分の考えている事を話して伝えること」、「相手が話していることがわかるまで聞くこと」は大切だと思います。そして行動は、言葉以上に相手に熱意を伝えられることがあると実感しました。語学力と行動力が自分の経験値を上げてくれたと思います。

 次回は、英語を学ぶために必要なマインドや国際アスリートになるために必要なことなどをお話したいと思います。

【山田愛 Ai Yamada】
1995年7月17日、三重県出身。桜花学園高校で全国三冠を達成。世代別日本代表U16アジア選手権で優勝。U17世界選手権で4位。卒業後、JXサンフラワーズ(現・ENEOSサンフラワーズ)に入団し日本一を経験したがケガにより2019年に退団。その後、オーストラリアでバスケを再開。海外で活躍するプロ選手を目指し、2020年、21年とオーストラリアでプロ契約したが、コロナでリーグが開催されなかった。現在は海外活動を支援してくれるスポンサーを探しながら、海外プロプレーヤーとしての活動再開を目指している。
 

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