男女バレー代表、監督交代でどう変わる?“日本独自のスタイル”を貫く女子には不安の声も

男女バレー代表、監督交代でどう変わる?“日本独自のスタイル”を貫く女子には不安の声も

17年からコーチとして支えていたブラン氏が監督に昇格した。(C)Getty Images

10月14日の理事会で承認を受け、男女バレーボール日本代表の新監督が発表された。

 男子は東京五輪までコーチを務めたフィリップ・ブラン氏が、女子はロンドン、リオデジャネイロ五輪で監督を務めた眞鍋政義氏が就任する。

 男子を率いるブラン氏は、コーチ就任後の17年からチームの戦術形成や練習メニューの構築など、チームの軸となる部分を担ってきた。

 それまでは世界と比べ、日本は高さやパワーで劣るため、どうしてもトスの速さなどスピードを追求してかわすことに注力してきたが、08年の北京五輪から2大会続けて五輪出場を逃すなど世界との差は広がるばかり。日本のオリジナルを追求するばかりでなく、世界のスタンダードとは何かを把握する必要があった。

 ブラン氏のコーチ就任によって日本の指標は明確になり、サーブで攻めて主導権を握る戦い方へシフトした。攻撃時はトスの速さだけにこだわるのではなく、常に複数の攻撃が同時に入りブロックの枚数を上回り数的優位をつくる。レフトのアウトサイドヒッターや、ライト側のオポジットに集める単調な攻撃だけでなく、ミドルブロッカーのクイックや後衛から同じテンポで入るバックアタックを積極的に使うなど、チームとしての指針を植え付けることで選手たちの意識や技術レベルは劇的に進化を遂げた。
  東京五輪までは中垣内祐一監督が率いるチームではあったが、前述面の戦略、戦術形成や練習メニューに加え、選手起用にもブラン氏の手腕はこれまでも発揮されてきた。中垣内監督からブラン氏へ変わるとはいえ、実質これまでのスタイルと大きな変化はないと見られるが、選手に対するコーチングに専念できるコーチと比べ、監督になればチーム全体のマネジメント能力も問われる。

 ブラン氏には01年から12年まで母国フランスを監督として率いた経験があり、実績も十分。母国パリ五輪に日本を率いて凱旋することは大きな挑戦、夢であり、国内リーグとの連携に関しては、16年まで日本代表監督を務め、新たに強化委員長に就任した南部正司氏が手腕を発揮すると見られ、組織体制は盤石だ。

 加えて、主将の石川祐希や西田有志など、東京五輪で活躍した選手たちは海外へ活躍の場を広げ、常に世界と対峙することで技術や意識を磨いている。東京五輪では29年ぶりのベスト8進出を果たした日本代表が、パリ五輪でのメダル獲得という目標に向け、ブラン監督がどんなコーチングスタッフで臨むのか注目したい。
  明るい話題が先行する男子と比較し、心配の声が先行するのが女子だ。

 中田久美監督が「エース」と期待を寄せた黒後愛や、東京五輪ではアクシデントに見舞われながらもチームを牽引した古賀紗理那。U20世界選手権で優勝、MVPを受賞した石川真佑といった若い選手たちが台頭し、東京で四大会五輪出場を遂げた荒木絵里香、リオデジャネイロ五輪に続く出場となった島村春世、石井優希といったベテラン勢も揃い、戦力は充実していたにも関わらず、結果は1次リーグ敗退で10位に沈んだ。

 大型化が進み、戦術面も進化を遂げる欧州勢や東京五輪で優勝したアメリカ、準優勝のブラジルが力をつける一方、高さやパワーで劣る日本は独自のスタイルを貫いた。守備力やサーブに関しては世界トップクラスであるのは間違いないが、いまだトスの速さにこだわるスタイルは世界の強豪にははね返されることが多く、中田監督の責任だけでなく、日本バレーボール協会の強化体勢に対してもこのまま日本オリジナルを貫くことが正しいのか、不満や疑問の声も多く挙げられていた。
  しかしながら、いわばこの危機的状況と言える中、新監督に選出したのは再登板となる眞鍋氏。12年のロンドン五輪で銅メダルを獲得した実績、手腕、マネジメント能力は申し分なく、火中の栗を拾うと言うべき状況を収められるのは確かに眞鍋氏しかいないだろう。だが、復活のために何から着手すべきかを議論されていたかと言えば、選考に透明性があったとは言い難い。ブラン氏を招聘し、劇的な進化を遂げた男子にならい、女子も外国人指導者を含め、どんな監督が望ましいか。もっと議論があってよかったのではないかという声も少なくない。

 とはいえ、Vリーグのヴィクトリーナ姫路のオーナーでもあった眞鍋氏は、Vリーグを含めた日本のバレーボール事情や戦力も把握しており、更なる新戦力が抜擢されることや、選手に応じた戦術が為されるのではないかという期待もある。眞鍋氏が掲げる「オールジャパン」を真の意味で遂行し、眞鍋氏が持つ優れたマネジメント能力や、情報収集能力をどれだけ生かせるか。バレーボール協会を筆頭に、日本バレーボール界の本気が問われるのは間違いない。

構成●THE DIGEST編集部
 

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