異例のUWFルールを実現させたスターダム。UFCも闘った朱里が披露した“魅せるプロレス”と「魂」の充実ぶり

異例のUWFルールを実現させたスターダム。UFCも闘った朱里が披露した“魅せるプロレス”と「魂」の充実ぶり

小波と激しく、“らしい”攻防を繰り広げた朱里。赤いベルトへの挑戦権を賭けた争いは大会を大いに盛り上げた。写真:徳原隆元

いよいよ最終決戦だ。スターダム年内最後の大一番、12.29両国国技館大会でのワールド・オブ・スターダム選手権試合は、林下詩美と朱里によって争われることになった。
【動画】異例のUWFルール! 朱里と小波が繰り広げた熱き闘いをチェック

 今年6月の大田区総合体育館大会で対戦した両者は、30分時間切れ引き分けの末に行なわれた延長再試合も互いKOでドロー。昨年のリーグ戦でも時間切れで引き分けていたため、トータル1時間以上も闘って決着がついていない。いわば両国国技館大会での時間無制限による決着戦は2人の「約束」だった。

 王者の林下は6月の朱里戦後もタイトル防衛を重ね、11月27日のビッグマッチ、国立代々木競技場第二体育館大会では舞華を破ってV9を達成。一方、朱里も5★STAR GPを制して手に入れた挑戦権利証を守ってきた。

 そして迎えた11.27国立代々木競技場第二体育館での挑戦権利証マッチ&SWA世界選手権で朱里は小波と対戦した。スターダム入りする前、REINAに所属していた時代もある2人は師弟関係と言ってもいい。

 パンクラス王者となり、UFCにも参戦した経験を持つ朱里だけでなく、小波もグラウンドを得意としており、この試合は異例のUWFルールで行なわれた。ダウン、ロープエスケープは減点となり、5失点で負けとなる同ルールは、お互いの持ち味が濃厚に出る形式だった。ロープに飛ばず、場外戦もない。ただ、朱里は足4の字固めやサソリ固めも繰り出し、いわゆる“格闘プロレス”らしさを全面的に展開したわけではなかった。

 格闘技の技術もベースにする朱里は、プロレスとはジャンルとして明確に分けて闘っている。そのうえで「どちらも面白いしどちらも難しい」と語る。それだけにプロレスはプロレスであって、UWFルールもそのひとつという彼女のスタンスが見える試合でもあった。4の字、サソリ固めは、むしろ『新日本プロレスvsUWFインターナショナル対抗戦』で、新日本側の武藤敬司、長州力が出した“U殺し”の技でもある。
  いつもとコスチュームを変えて“UWF仕様”で臨んだ小波が立て続けにポイントを奪い、残り1ポイントまで追い込まれた朱里。だが、そこから厳しい角度での水車落とし、ハイキック、ヒザ、そしてバズソーキックでたたみかけてKO勝ちを収めた。蹴りの打ち合いなど、この2人ならではの攻防だったのは間違いない。

 プロレスラーとしての“魅せる”センスも出しつつ、朱里はいつもとは違うルールの闘いでファイターとしての芯の太さのようなものを見せつけた。殴る蹴る、投げる、関節を極める――。そうしたシンプルな闘いだったからこそ、小手先ではない実力が光ったと言えるだろう。

「小波と朱里でスターダムに新しい風を吹かせる。その1日目。私にとって特別な日になりました」

 朱里は試合後にそう語った。 先の5★STAR GPで負けた相手に借りを返した。これで心おきなく林下戦に集中することができる。メインマッチ後のリング上に登場した朱里は、しっかりと王者と堅い握手をかわした。この2人に遺恨や乱闘劇は不要だ。正々堂々、実力をぶつけ合うのみ。団体最高峰の“赤いベルト”をかけた闘いにはそれがふさわしい。

 6月の対戦では引き分けでベルトを逃し、朱里は大号泣している。そこから説得力のある勝利を重ね、今回はUWFルールという形で自身の能力を見せつけた。もともとスターダム所属となったのも、赤いベルトを獲る覚悟を示すため。いよいよ機は熟したと言っていい。

 だが、林下も防衛戦のたびに評価を高めている。ラリアットなどシンプルな技で観客の目を奪う闘いぶりは、デビュー3年あまりながら風格すら感じさせる。今の朱里でさえも、そう簡単には勝てないだろうと思わせるだけのものがあるのだ。 どれだけ闘っても、どちらも一歩も引かない。では決着をつけるためには何が必要なのか。林下は「魂」だと語った。両国での闘いは、これまで以上に激しいものになる。どちらも肉体と精神の限界を超えるだろう。おそらく意識も飛ぶような極限の状態で、どれだけ“魂”で闘えるかどうかが問われる。

 そして、そういう勝負にめっぽう強いのも朱里だ。13年のキャリア、ハッスルやルチャや立ち技格闘技、MMAあらゆる舞台であらゆる経験をしてきた。魂の闘いで遅れをとるつもりはないだろう。11.27代々木大会の充実は、スターダムのさらなる高みを予感させるものでもあった。

取材・文●橋本宗洋

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