レブロンにとっての“GOAT”だったカルーソ。ドラフト指名漏れした男がリーグ有数の名脇役になるまで<DUNKSHOOT>

レブロンにとっての“GOAT”だったカルーソ。ドラフト指名漏れした男がリーグ有数の名脇役になるまで<DUNKSHOOT>

昨季まで所属したレイカーズでは、レブロンと抜群のコンビネーションを披露。2020年にはチームの優勝に貢献した。(C)Getty Images

NBAで日常的に話題をさらうのはスター選手たちだが、そんな彼らも「名脇役」がいてこそ輝ける。

 その中の1人が、ガードのアレックス・カルーソだ。

 2020年にロサンゼルス・レイカーズでチャンピオンを獲得したメンバーである彼は、今季入団したシカゴ・ブルズでもめきめきとプレータイムを伸ばし、得意のスティールでは平均2.3本で、現在リーグ首位に立っている。

 レイカーズ時代、アンソニー・デイビスとレブロン・ジェームズの両エースは、「いつもカルーソと一緒にプレーしたがっていた」と、アシスタントコーチのマイク・ペンバーシーは以前ロサンゼルスの地元メディアに語っている。

「彼は3ポイントも打てるし、ディフェンスも上手い。つまらないミスもしない。トランジションゲームではボールを運べる。つまり彼ら2人の長所と見事にフィットする。バスケIQが非常に高いし、NBAに求められる包括的なスキルを高いレベルで備えている。アスリートとしての能力も平均以上だ」

 ペンバーシーは、レイカーズがオフシーズンやトレード期間に他球団にトレードの打診をするとき、相手チームが見返りとして求めるのは決まってカルーソだったとも明かしている。

 デイビスは、「彼はとにかく、常にいて欲しいエリアに、いて欲しい瞬間にいてくれるという、“ツボにハマる”プレーをしてくれるんだ」とカルーソの持ち味を描写していた。
  そしてレブロンは、「2人の間にケミストリーが生まれている理由は、お互いのマインドセットが似通っているからだ」と答えており、それは感覚的なものだけでなく、数字でも証明されている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、100ポゼッションあたりの得失点差をあらわすネットレーティングは、19-20シーズンのレイカーズの平均5.6ポイントに対し、レブロンとカルーソが同時にプレーしていたときは18.6ポイントと劇的に上昇。これはリーグNo.1の数字だったという(レブロンとデイビスの同時出場時は8ポイント)。

 しかも、同紙によればこれはレブロンの歴代のチームメイトの中でベストの数字だそうだ。

 レブロンがカルーソに“GOAT”(Greatest Of All TIme/史上最強)のニックネームを授けたのは有名な話で、カルーソ本人は「バスケットボールのプレーについてではなく、キャラクターやチーム内での立ち回り方について言ってくれたんだと思う」と謙遜しているが、実際にカルーソは、レブロンにとっての“GOAT”だったのだ。

 カルーソは、「僕は、自分よりもレベルの高い選手とプレーする時にいい仕事ができるんだ」と自身スタイルを分析している。「自分がコート上のベストプレーヤーだったら、たぶん同じことはできないだろうね。でも幸い、僕にはこれからのキャリアでも一生そんなことは起こらないから大丈夫だ」
  自ら「脇役」を自認するカルーソは、1994年生まれの27才。地元のテキサスA&M大でもアシストとスティールで同校の歴代最多記録を樹立したように、生来シューターを生かすパッサーで、ディフェンス意識の高いプレーヤーだ。

 しかし2016年のドラフトでは指名漏れ。フィラデルフィア・セブンティシクサーズでのサマーリーグを経て、オクラホマシティ・サンダーとの契約にこぎつけるが、開幕前に解雇され、プロ初年度は下部組織のオクラホマシティ・ブルーで過ごした。

 そして翌年の夏、ロサンゼルス・レイカーズのサマーリーグに参加したカルーソは、ここで2WAY契約を勝ち取る。

 17-18シーズンは、レイカーズで37試合に出場し、約15分のプレータイムで3.6点、2アシスト。レブロンが加入した翌シーズンは、4月のロサンゼルス・クリッパーズ戦でキャリアハイの32得点に10リバウンド、5アシストをマークするなど、平均9.2点と大幅にアップ。

 このシーズン、チームにおいてレブロン以外で唯一30得点、10リバウンド、5アシスト以上を記録した選手になった。

 19-20シーズンから2年間の正契約にこぎつけると、新型コロナウイルスの影響でバブル(隔離された地域)で開催されたプレーオフは全試合に出場。マイアミ・ヒートとのファイナル第6戦では先発出場している。
  その彼の契約が、今オフに延長されなかったことは、本人にとっても、チームメイトやレイカーズファンにとっても残念なことだった。カルーソはレイカーズが提示したサラリーが、承諾できる額ではなかったと、ポッドキャストで退団の理由を話している。

 Gリーグや2WAY契約からステップアップしてきた彼の口から出た、「僕のように、キャリアが約束されているわけではない選手は、稼げる時に稼いでおく必要がある」という切実な言葉は、理に適っている。

 そうして彼を迎え入れたブルズはここまで13勝8敗で、イースタン・カンフェレンスで5位と好調だ。一方レイカーズは、レブロン欠場の影響もあって11勝11敗で8位と、いまひとつギアが上がっていない。

 カルーソも、ブルズではフルタイムに近い時間コートに立つ試合もあるなど、平均30分に迫るプレータイムでより主力として活躍している。11月27日のマイアミ・ヒート戦ではシーズンハイの22得点。見た目以上にエネルギッシュな彼のプレーや、豪快なダンクは、ブルズファンを大いに沸かせている。
  そんなプレーと合わせて、ファンやチームメイトたちの心をがっちりつかんでいるのが彼の愛されキャラだ。レイカーズでは「Bald Mamba (ハゲのマンバ)」など、やや寂しげな頭髪にちなんだニックネームをつけられていたが、そのことについて彼は以前こう言っていた。

「ドラフトで指名漏れして、Gリーグを経てきた自分にとっては、ニックネームをつけてくれるほど僕のプレーで興奮したり、僕の成功を喜んでくれるファンがいるということだけでものすごく幸せなんだ。それに悪意がないのもわかっているから」

 今ではその頭をトレードマークにして、シェーバーの会社のチャリティーキャンペーンの広告塔になったり、ビッグプレーを決めた際にヘッドバンドをアピールする、セレブレーションをも編み出した。
  2020年オールスターのファン投票で、カルーソはウエスタン・カンファレンスのバックコート陣で、ステフィン・カリーやラッセル・ウエストブルックらを上回り、ルカ・ドンチッチ、ジェームズ・ハーデン、デイミアン・リラードに次ぐ4番目の得票数をゲットした。

 選手の評価にはいろいろある。スタッツや、年棒の額もその指針ではあるが、ファンから「プレーが見たい」と思われる選手であるということは、とてつもなく名誉なことではないだろうか。

文●小川由紀子
 

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