ソダシの逃げは完全に不発…壁にぶち当たった”アイドルホース”に復活の目はあるのか
2021年12月06日 19時17分 THE DIGEST

テーオーケインズは、2着に6馬身もの差をつけて圧勝。一方、ソダシは直線で失速し、12着に終わった。写真:産経新聞社
12月5日、第27回チャンピオンズカップ(GT・ダート1800m)が中京競馬場で行なわれ、単勝1番人気に推されたテーオーケインズ(牡4歳/栗東・高柳大輔厩舎)が前年の覇者チュウワウィザード(牡6歳/栗東・大久保龍志厩舎)に6馬身もの差を付けて圧勝。JRA・GT初制覇を成し遂げた。初のダート挑戦で注目された3番人気のソダシ(牝3歳/栗東・須貝尚介厩舎)は果敢に逃げを打ったものの、直線で失速して12着に敗れた。
衝撃的な独走劇だった。
課題だったスタートを無事にクリアし、逃げるソダシと2番手のインティ(牡7歳/野中賢二厩舎)、アナザートゥルース(せん7歳/美浦・高木登厩舎)を前に見ながら5〜6番手にの好位置につけたテーオーケインズは、鞍上とぴたりと息を合わせてレースを進める。
動きが出たのは3コーナー過ぎ。テーオーケインズが自らハミをとって先団との差を詰め勝負の直線へ向く。
しかし、勝負はすぐについた。失速したソダシを捉え、さらには粘るインティを交わして先頭に躍り出たテーオーケインズは、独走態勢に持ち込む。そして後方から追い込んだチュウワウィザードをまったくものともせず、余裕を見せながら悠々とゴールを駆け抜けたのだった。
テーオーケインズが記録した上がり3ハロンの時計は35秒5で、チュウワウィザードのそれを実に0秒7も上回っていた。
前走のJBCクラシック(JpnT)の敗因となった出遅れに関しての問題も含め、レース後の松山弘平騎手は、「厩舎がしっかりと練習を積んでくれたおかげで、今日は馬がよく我慢して良いスタートを切ってくれたので、道中もいいリズムで進めました。4コーナーを回ってくるときは凄い手応えで、申し分なかったですね。本当に強かったと思います」と、相棒の走りを絶賛。帝王賞(JpnT)の圧勝劇がフロックでなかったことをあらためて見せつけた。
テーオーケインズの父シニスターミニスター(18歳)は、競走生活を引退したあと輸入された米国産馬。デビュー戦(ダート5.5ハロン=約1100m)を8馬身差で勝ちあがると、ブルーグラスステークス(米GT・ダート9ハロン=約1800m)で2着に12馬身以上という記録的な差を付けて勝利を収めた。
その後は勝利を挙げられないまま、現役を引退。祖父(父の父)が大種牡馬エーピーインディ(A.P.Indy)という血統と、GTで大差勝ちした能力を評価した北海道の生産者グループが種牡馬として購買。輸入後はひだか町静内のアロースタッドで繋養されている。
種牡馬成績はダートにおいて優れたもので、初年度産駒の2インカーテーションが2013年のレパードステークス(GV)に勝ったのを皮切りにして、毎年のように重賞勝ち馬を輩出。今回のテーオーケインズのチャンピオンズカップ優勝は、2019年のJBCレディスクラシックを制したヤマニンアンプリメ以来のGT(JpnT)勝ちとなった。
テーオーケインズの将来は、4歳という若さも含め、前途洋々。今後のダート戦線を引っ張るトップランナーの座を確たるものにしたと言っていいだろう。来春のサウジカップ、ドバイワールドカップ(ともにGT)を含め、今後は当然、海外遠征も視野に入って来るはずだ。
さて、気になるのは大きな注目を集めながら大敗を喫したソダシの走りである。
父がクロフネ、母ブチコがダート4勝、近親にはダートグレード競走の勝ち馬もいるなど、ダート適性は十分と見られていただけに、この敗戦は意外だった。
しかし、須貝調教師がレース後、「ダートがどうこうと言うより、気持ちの問題だと思う」と語っているように、今後のキーポイントはメンタルの問題のようだ。
母ブチコは気性の難しさが引退の引き金になったことでも知られ、ソダシ自身も前走の秋華賞(GT)でゲートへ向かうように促されても反抗するような態度をとるなど、そうした傾向が見え始めていた。
今回のレースでも、好調時に見せていた他馬に並ばれての頑張りや粘りが影を潜め、最後は走るのを止めてしまったようにも見えた。須貝調教師も「レースから帰ってきたら、すぐに息が戻っていた(呼吸が平常時に戻っていた)」と述懐していたという。これからも、ソダシが本気で走っていなかったのであろうことが推察される。
今後どのような進路を取るのかは分からないが、難しい課題にぶち当たったのは確か。類のない”白毛のアイドルホース”だけに、復活の日を願ってやまない。
文●三好達彦
【レース動画】テーオーケインズが貫録の戴冠!6馬身差の圧勝劇をチェック
記事にコメントを書いてみませんか?