コロナ禍に苛まれ、チーム名も難解…逆風スタートの「リーグワン」は、あのラグビーW杯の熱狂を取り戻せるか?

コロナ禍に苛まれ、チーム名も難解…逆風スタートの「リーグワン」は、あのラグビーW杯の熱狂を取り戻せるか?

個性豊かなタレントが鎬を削るリーグワン。そのレベルは決して低くない。(C)Getty Images

1月16日に行なわれたジャパンラグビーリーグワン(以下リーグワン)のディビジョン1第2節、東京サンゴリアス(旧サントリー/略称東京SG)対トヨタヴェルブリッツ(旧トヨタ/略称:トヨタV)の優勝候補同士の一戦は、予想外のワンサイドゲームとなった。

 最終スコアは50−8。ホストチーム(ホーム&アウェーではなくホスト&ビジター)の東京SGが、連動性の高い展開ラグビーでトヨタVを圧倒し、開幕2連勝を飾っている。

「完敗です。言い訳はないし、ここから何を学び、どう成長していくか。それだけです」

 2019年、自国開催のラグビーW杯でベスト8に大躍進を遂げた日本代表のナンバー8で、昨年はニュージーランドのハイランダーズでプレーし、1年半ぶりに古巣のトヨタVに戻った“ジャッカル姫野”こと姫野和樹は試合後、淡々とそう話した。

 しかし、この日はFL(フランカー)を務めた姫野以外にも、19年W杯の優勝メンバーである南アフリカ代表のFLピーター=ステフ・デュトイ、オールブラックスのLO(ロック)パトリック・トゥイプロトゥなど強力FW陣を擁するトヨタVが、これほどあっさり敗れたのは、試合勘の不足が少なからず影響していたからだろう。
  これまで日本ラグビーの最高峰に位置していたトップリーグ(TL)を再編し、1月に華々しく開幕するはずだったリーグワンだが、コロナ禍に見舞われ、文字通り前途多難の船出となってしまった。対戦相手の静岡ブルーレヴズ(旧ヤマハ/略称:静岡BR)に新型コロナウイルスの陽性者が多数出たため、第1節を戦えなかったトヨタVは、これがおよそ1か月ぶりの実戦。「できるかぎりの準備はしたが、連係不足は否めなかった」と、サイモン・クロンHCも本音を漏らしている。

「先週の開幕戦(対東芝ブレイブルーパス東京戦/60−46で勝利)で出たディフェンスの課題をしっかりクリアできた」

 東京SGの主将で、日本代表のCTB(センター)中村亮土がそう語ったように、準備段階で大きな差があったのは明らかだ。
  16チーム構成だったTLに対して、リーグワンの最上位カテゴリーであるディビジョン1が12チーム構成となったのは、高質で拮抗した試合を増やし、日本ラグビーのクオリティを世界水準に近づけるためだ。しかし、オミクロン株が猛威を振るうなか、各チームのコンディションにバラつきがある状況が続けば、それも難しくなるだろう。

 2節を終えた段階で、陽性者を出してメンバーを揃えられなかった埼玉ワイルドナイツ(旧パナソニック/略称:埼玉WK)と静岡BRは、まだリーグワンのピッチにも立っていない(3節の静岡BR対東京SG戦もすでに中止が決定)。この2チームについては試合延期などの特別措置もなく、2試合とも勝点0扱いとなる。対戦相手には不戦勝で勝点5が与えられる規定だが、果たして、これで正しく実力を反映した優勝争いが展開されるのだろうか。TLラストイヤーだった昨年の覇者で、リーグワン初代王者の有力候補でもあった埼玉WKは、戦わずしていきなり窮地に立たされている。

 思えば、19年W杯直後のTL2020も、新型コロナウイルスの蔓延によって途中で打ち切られ、空前のラグビーブームに水を差された。
  颯爽と檜舞台に上がろうとした矢先に、いつも階段を外される。またしてもコロナにその行く手を阻まれた日本ラグビー。もはや不運の二文字で片付けてしまうのも忍びない。

 一方で、各クラブがホストエリア(ホームタウン)を設定し、チーム名に地域名を組み込んだのは、企業色が強かったTL時代とは異なるリーグワンの特色だ。JリーグやBリーグの地域密着に倣い、「地元の結束、一体感の醸成」をミッションのひとつに掲げている。

 チーム名が長くなり(NTTシャイニングアークス東京ベイ浦安など)、略称が分かりづらい(SA浦安やGR東葛など)点が指摘され、また「東京」を冠するチームが5つもあることも難解さに拍車を掛けているが、それでもラグビーを文化として根付かせる上では、浸透に時間がかかっても取り組むべきミッションに違いない。
  現状、味の素スタジアムはFC東京の本拠地であって、東京SGは“間借り”をしている印象が強い。できれば試合開催日だけでも、最寄りの飛田給駅や、スタジアムに通じる道路沿いに東京SGのフラッグくらいは掲げてほしいし、そうした取り組みがなければ、これもリーグワンのミッションのひとつである「ファンが熱狂する非日常空間の創造」も難しいだろう。

 またチーム名にしても、ピッチに立つ選手たちから「サントリー、次行こう?」といった声が飛んでいるうちは、一般には浸透しないと思う。意識を変えるべきは、まず選手からだ。

 ただ、課題は多いとはいえ、リーグワンがピッチレベルでの魅力に乏しいリーグかと言えば、決してそんなことはない。この日、もっとも観衆を魅了したのは、東京SGの新戦力で、現役オールブラックスのFB(フルバック)、ダミアン・マッケンジー。鋭い縦への突破と多彩なキックを駆使しながら、日本代表のSH(スクラムハーフ)流大や中村亮とともにスピード感溢れるアタッキングラグビーをリードし、1トライ、1PG、6Gで文句なしのマン・オブ・ザ・マッチに輝いた。

 プレースキックの際に笑みを浮かべるルーティンから“微笑みの貴公子”と呼ばれるユーティリティーバックスは、難しい角度からのコンバージョンを易々と沈め、ワールドクラスの実力を証明したが、リーグワンには彼を筆頭に一流の外国人選手が少なくない。しかもTL時代は2人までだった外国代表歴のある選手の出場枠が3人に増えたことで、リーグ全体のレベルは間違いなくアップするはずだ。
  そして、彼らに触発されて日本人選手も──。印象的だったのは、東京SGのPR(プロップ)石原慎太郎のコメントだ。

「向こう(トヨタV)は外国人を9人(日本代表有資格者なども含めて)も使ってきましたが、僕らとしてはそれに負けたくないし、負けてはいけないと思っていました。チームにもポテンシャルの高い日本人選手はたくさんいて、外国人選手とのコンペティションに勝ってしっかりスタメンに入っている。やっぱり日本のリーグなので、日本人が結果を出していくことが大事だと思っています」

 立ち上げからコロナ禍に苛まれる不運なリーグワン。ピッチ内外で改善すべき点も少なくはないが、希望は世界を見据える選手たちのモチベーションかもしれない。

「日本ラグビーの世界への飛躍」──日本ラグビーの質と技量の常なる向上を図り、世界に、ラグビーの新たな魅力と驚きをひろげる。

 これもまた、リーグワンが掲げるミッションのひとつだ。

取材・文●吉田治良(スポーツライター)

関連記事(外部サイト)