お嬢様学校から銀行員、そしてプロレスラーに。才女・雪妃真矢はなぜリングを目指したのか?「何事も常に挑戦の思いで」

お嬢様学校から銀行員、そしてプロレスラーに。才女・雪妃真矢はなぜリングを目指したのか?「何事も常に挑戦の思いで」

フリーランスのレスラーとなって活動の幅を広げている雪妃。彼女が歩んできたプロレス人生は実に興味深い。写真:萩原孝弘

「何事も常に挑戦の思いで、知らない世界を見て、経験して、精力的に活動したいと思っています」

 2022年からフリーランスレスラーとなった雪妃真矢は、初年度の指針をこう示した。

 フリーランスとは文字通り自由に戦える反面、己の力のみで勝負する厳しい世界。だが、文武両道、才色兼備の彼女は、自分の信念にのっとりリスクを厭わない。あえて荒波に身を投じる人生を送ってきたからだ。
【動画】DDTの紅一点だった赤井沙希と繰り広げた激闘! 雪妃真矢のファイトシーン

 そもそも雪妃はプロレスとは無縁の道を歩んでいた。フェリス女学院大学を卒業後に銀行に就職。ごくごく普通の仕事に従事していたのである。

 そんな才女が、"プロレスの沼”にハマったのは、姉がキッカケだった。連れられて訪れたDDTの試合に心奪われ、一気にのめり込んだ。そして、“観られる者”へと転身するパッションは日増しに強くなり、ついには銀行の退職を決意した。

 もちろん「信頼と安定を手放す様な気がして、怖い思いはありました」と強い葛藤も感じていた。しかし、雪妃は「人生最初で最後の挑戦と覚悟を持って、行動に移しました」と夢へと意を決した。
「一度社会に出た事は本当に素晴らしい経験だったと思います。できん坊主の行員だった私に優しくしてくださった同僚と上司には、感謝してもしきれません」

 社会人としてのイロハを享受され、なおかつプロレスラーになる挑戦にも快く背中を押してくれた仲間の思いも胸に抱いた雪妃は、不退転の決意を持って女子プロレス団体「アイスリボン」で研鑽を積んだ。そして、紆余曲折の末に2014年にアイスリボンでデビューを果たし、周囲、そして何より自分の念願を成就させた。

 強い信念でもってプロレスラーとしてのスタートラインには立った。だが、雪妃はそこから度重なる骨折と怪我に泣かされ続けた。レスラーとしての“天賦の才”を持つわけではないと実感させられ、「憧れたリングは、私なんかが目指してはいけない舞台だったのだと感じていました……」と弱気の虫が顔を出すときもあった。

 それでも、「欠場していても応援して下さる方の為に必ず復帰をしなければと、その支えが全てでした」と、ファンの無形の力に報いるためにと、雪妃はただ前を向き続けた。
  人並みならぬ努力で一歩ずつ階段を登っていき、何本ものベルトを腰に巻くトップレスラーへと成長していった。そのなかで転機となったのは、2016年にOZアカデミーの協力もあって開催された7番勝負の死闘と、雪妃魔矢の誕生だ。

 7番勝負では豊田真奈美、尾崎魔弓、ダイナマイト関西、木村響子、松本浩代、世羅りさ、高橋奈七永と7人のビッグネームたちの胸を借り、3月12日から大晦日までの長期に渡り戦い抜いた。ここで雪妃は「恐怖のなかでの先輩方との戦いは、弱い部分、ダメな部分をさらけ出して乗り越える自分との戦いでした」と、己に打ち勝つ術を学んだ。

 そして、「尾崎魔弓選手との出逢いは自分を“解放”することに繋がりました」と本人が言うように、対戦後にヒールユニット“正危軍”への誘いも彼女の人生を変えた。黒のコスチュームに一本鞭を駆使する別人格“雪妃魔矢”が誕生し、自己表現力が格段と増したのである。

 当の本人は、「タイトルマッチは勿論、沢山の試合を重ねさせてもらった全ての対戦相手のお陰です。自分の努力じゃないです」と謙遜する。だが、銀行員だったはずの雪妃は、いつのまにかアイスリボンやOZアカデミーで何本ものベルトを巻くトップレスラーへと成長していた。
 
 業界でも名の知れた存在となった彼女は、昨年末にデビューの場であったアイスリボンを退団。「活動の幅を広げられるように」と、フリーランスへの転身を表明した。

 年が明けた1月3日、フリーとしての初陣は、「DDTを知らなければプロレスの世界を知ることは無かったですし、プロレスラーになる事も無かったと思います」と明言する“ドラマチック・ドリーム・チーム”のリングだった。そして、雪妃は男子の中で遜色ない強さを魅せる紅一点、赤井沙希にロックオン。3月20日の両国でもビッグマッチでのシングルを実現させるに至った。

 憧れだった両国の大舞台に立つ。雪妃は目を輝かせて、こう語る。

「DDTの両国大会という大舞台で、有名選手である赤井沙希選手と戦わせて頂くことをとても光栄に思います。育ててくれた先輩方や団体を失望させたくない、何より自分に失望したくないので、培ったものをしっかりと発揮したいですね」 勢いは止まらない。4月8日に新木場でラム会長、山下りな、尾崎妹加と結成するユニット『RebelxEnemy』の自主興行への参加を発表すれば、5月20日にフリーランスサミット『NOMADS'』を新宿FACEで開催すると発表した。「続けて興行を計画している事はフリーランスとしての精力的な活動の証」と語る彼女は、まさにノンストップで走り続けているのだ。

 とくに「『NOMADS'』は「実行委員会方式で開催し、運営していく、フリーランスの、フリーランスによる、フリーランスのための大会。家を持たない同士として、野心を秘めるライバルとしてこの大会が交流の場になれば大きな意義がある。フリーの選手の引退試合や復帰戦、周年興行など場になる可能性を秘めていると思っている」と大きな野望を持ち、全く新しいチャレンジを世に示していく覚悟だ。
 いわゆるお嬢様学校から銀行員、そしてレスラーとなり、フリーとして憧れのDDTで戦った。さらには自主的に理想の大会も企画と、夢を追いかけることを止めない彼女の持つ最終的な羅針盤は、海の向こうへと向いている。

「海外で試合をする事はデビュー当時からの夢です。雪妃は若い選手では無いし、とても狭き門だとは聞いています。だけど諦めたくないんです!」

 そう言葉に力を込めた雪妃真矢の大航海は、どこまでも続いていく。

取材・文●萩原孝弘

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