高木美帆が覚悟を決めた北京五輪の舞台裏。27歳の大エースが世界の頂点に上り詰めるまで

高木美帆が覚悟を決めた北京五輪の舞台裏。27歳の大エースが世界の頂点に上り詰めるまで

北京五輪では4つのメダルを手にした高木。ストイックな印象が強いが、お茶目な一面もありファンから愛されている。(C)Getty Images

短距離から長距離まで4種目の合計で争うスピードスケート世界選手権オールラウンド部門が3月5、6日にノルウェー・ハーマルで行なわれ、高木美帆が3年ぶり4度目の表彰台となる銀メダルを獲得した。2月20日に閉幕した北京五輪では金1つを含む4個のメダルを獲得し、夏を含めた日本女子の歴代最多獲得メダル数を7に伸ばした高木。27歳の大エースはどのようにしてトップオブトップに上り詰めたのだろうか。

【北京五輪PHOTO】スピードスケート女子1000mで金メダル!北京で4つのメダルを獲得した高木美帆の雄姿をお届け

 13日間で5種目7レースを滑ってからまだ2週間。北京ではレース後や会見などでもしばしば咳き込む様子があり、コンディション面が心配されたが、高木自身が「五輪とはまた違う、挑む価値がある大会」と位置づけているのが世界選手権。冬季五輪より古く1893年に第1回が開催された歴史あるこの大会への意欲はしっかりとチャージされたままだった。疲労回復にも余念はなかった。

 やると決めたからには最後までやり抜く。それが高木の流儀である。勝負に挑もうとするとき、高木が最初に行なうのは自分自身の気持ちに正面から向き合うことだ。遡ること約5年。2014年ソチ五輪の出場を逃した高木が2018年平昌五輪に向けての意識を語ったことがある。

「ソチ五輪の前の自分には甘さがあった。五輪にすべてを懸ける勇気と覚悟がなかった。平昌には、4年間その覚悟を持って挑もうと決めた」

 甘さがあったと断じてはいるが、ソチ五輪前というのはほぼ高校生だった時期だ。成熟した大人のアスリートになってからの高木は一貫して極めて高い意識を持ち続けている。その姿が鮮明に出たのは北京五輪だった。
  5種目にエントリーしていた高木は、大会序盤の3000m(6位)と1500m(2位)を終えた時点で本調子ではないことを感じていたこともあり、連覇を狙うチームパシュートの予選と決勝の間に日程が組まれていた500mの出場を迷う時間があったという。

「500mに強い気持ちで挑めるのか、自分の中でそれができるかどうかを本気で考えた」

 棄権すら脳裏をかすめるほど突き詰めて考え、自分で出ると決断し、そしてスタートラインに立った。その500mでは自己ベストを出してうれしい銀メダルを獲得。この流れが1000mの金メダルへつながった。
  高木自身が「五輪とは違う価値がある」と語って挑んだ世界選手権では、惜しくもタイトル奪回とはならず総合2位だったが、ここでもすばらしいレースを見せた。3種目終了時にはトップ。最後の種目となった5000mでは、4年前の平昌五輪後にアムステルダムで開催された同大会で高木に金メダルをさらわれたオランダ勢が気を吐き、北京五輪3冠のイレーネ・スハウテンが逆転優勝を飾った。ただ、高木も5000mの自己ベストを更新する7分1秒97という渾身の滑りだったのだ。

 気持ちの作り方と同様に、食生活にも隙はない。2017年から株式会社明治「ザバス」のサポートを受けて食事を管理。最初の1年間は1日3食の食事内容を写真に撮って栄養士に送り、改善指導を受けた。ザバスがツイッターの公式アカウントで2018年夏に公開した情報によると、高木が送った画像枚数は約9か月(約270日)間で820枚だったという。

 改善指導で知識を得るなどして食生活のベースができあがった後はすべての画像を送る必要がなくなり、今度は大会のレース日程や食事環境に応じて栄養士に師事を仰ぎ、常に最善策を練るようにしていった。
  コロナ禍で開催された北京五輪では、食材や味付け、調理方法など、どうしても制限がある中での戦い。ここでは、好物の納豆を自由に食べられる環境を日本選手団が整えたことも助けになった。連戦の疲労で食事が喉を通りにくくなった時、高木は「多い日で3パック、少なくとも毎日1パックは食べていた」といい、しっかりとタンパク質を摂取できていた。

 さて、ストイックなイメージの強い高木だが、以前、囲み取材で自炊について質問が出た時に言っていたのは、「簡単に取れてなおかつ栄養価の高いものをチョイスしています。味噌汁に入れるだけの味付きのしじみや、高野豆腐。けっこうずぼらですよね(笑)」ということ。ざっくばらんなやりとりができるのも、高木の魅力だ。

文●矢内由美子

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