たかが14位、されど14位――調子が悪い中でも松山英樹が見せたディフェンディングチャンピオンとしての“意地”

たかが14位、されど14位――調子が悪い中でも松山英樹が見せたディフェンディングチャンピオンとしての“意地”

優勝のシェフラー(右)にグリーンジャケットを授与した松山(左)。前年王者として臨んだ今年のマスターズを振り返る。(C)Getty Images

史上4人目の大会連覇を狙い、今年の『マスターズ』に挑んだ松山英樹(LEXUS)。結果からいえば、優勝したスコッティ・シェフラー(アメリカ)から12打離れた通算2オーバー・14位タイに終わり、偉業達成はならなかった。

【PHOTO】松山英樹、日本中に感動を呼んだ“前年マスターズ”の激闘を厳選フォトで一挙お届け!

 松山自身は「もう少し優勝争いに絡みたかったなと思います」と、悔しげな表情を浮かべていたが、この結果を残念に思うか、健闘したととらえるかは人によって異なるだろう。しかし、客観的に見れば、大健闘と言えるのではないだろうか。

 今回、松山には明らかなマイナス要素があった。3月第1週に開催された『アーノルド・パーマー招待』で首から肩甲骨にかけての部分を痛め、それ以降の試合に出場していなかったことだ。

 中3週空けて、前週大会の『バレロテキサスオープン』に出場したが、2日目の前半を終えた時点で棄権している。それもあって、『マスターズ』優勝予想では、トップ20に名を連ねることができなかった。

 もっとも、優勝した昨年の予想でもトップ20を外れているし、今年の優勝予想ナンバーワンのブルックス・ケプカ(アメリカ)は予選落ちしているので、当てにならないものではある。ただ、大会前の下馬評がそれだけ低かったことは間違いない。
 幸いなことに、本戦に入ってからは懸念された痛みを感じることもなく、フルショットできたという松山。それを証明すると同時に、ディフェンディングチャンピオンとしての意地を見せたのが、強風のなかで行なわれた2日目のプレーだ。

 4バーディ・1ボギーの「69」で回り、通算3アンダーまでスコアを伸ばすと、首位と5打差ながらも2位タイで予選通過。「ショット、パットがよくない中、いいゴルフができたと思います」と振り返っていたが、フルショットできるようになったとはいえ、例年よりもスイングが抑え気味だった。

 ましてや試合勘が薄れ、オーガスタナショナルGCでは生命線とも言えるショートゲームに多少は不安が残っていたはず。その中で連覇を期待させる位置にまで順位を上げてきたことはさすがとしか言いようがない。 残念ながら勝負を賭けた3日目に「77」とスコアを崩したが、注目すべきは最終日のプレーだ。首位と11打差あったものの、松山の表情に上位進出をあきらめた雰囲気はなかった。「65」「66」のビッグスコアを出すことしか考えておらず、積極的にピンを狙いにいったという。

 成功すればバーディラッシュになるが、一つ間違えれば難しいアプローチが残りやすく、ボギートレインに乗ってしまう危険もある。こうしたことを頭に入れたうえで、スタートの1番からピンをデッドに攻めたものの、バーディパットは決まらなかった。

 続く2、3番ではアプローチも寄らずにボギーを叩いたが、松山は怯まない。あくまでも攻めの姿勢を貫き、4、5番でバーディを奪い返した。結局、5バーディ・5ボギーの「72」でホールアウトとなったが、一つ間違えればこの日「64」をマークしたローリー・マキロイ(北アイルランド)のような内容になっていたかもしれない。
 もちろん勝負事にタラレバは禁物だが、そう期待せざるを得ない何かが最終日のプレーには見られた。

 優勝を狙う準備としては不十分だったかもしれないが、それを言い分けにせず、最後まで攻め続けた松山。その姿は、ディフェンディングチャンピオンとしての威厳すら感じさせた。だからこそ、最終18番ホールを上がってくる松山に対し、グリーンを囲んだ大勢のパトロンがスタンディングオベーションで出迎えたのではないか。

“たかが14位”と思う人もいるだろう。しかし、コンディションが悪い中、攻めの姿勢を崩さずに得た14位というポジションは讃えられてもおかしくない。メジャーでトップ15に入ることがどれだけ尊いか。残り3試合のメジャーにも十分つながる、“されど14位”なのだ。

文●山西英希 
著者プロフィール/平成元年、出版社に入社し、ゴルフ雑誌編集部所属となる。主にレッスン、観戦記などのトーナメントの取材を担当。2000年に独立し、米PGAツアー、2007年から再び国内男子、女子ツアーを中心に取材する。現在はゴルフ雑誌、ネットを中心に寄稿する。

【関連記事】「なんて素晴らしい瞬間」松山英樹を支えた名キャディの行動が米メディアで大反響!「スポーツ界の心を虜に」

【関連記事】「ウッズさえやったことがない」松山英樹のスーパーショットに米絶句!3番ウッドでの妙技は「常軌を逸している」

関連記事(外部サイト)