前代表主将の柳田将洋が“国際レベル”に満たず代表落選。一方、植田辰哉元監督は“勝負強さ”を評価!「代表に必要な選手です」

前代表主将の柳田将洋が“国際レベル”に満たず代表落選。一方、植田辰哉元監督は“勝負強さ”を評価!「代表に必要な選手です」

今季も代表選考から漏れた柳田。Vリーグでは活躍したものの、国際レベルには達していないと評価を受けた。写真:北野正樹

4月17日に全日程を終えたバレーボールV1リーグ男子は、サントリー・サンバーズが天皇杯全日本選手権覇者のウルフドッグス・名古屋を破り、連覇を果たした。柳田将洋は、ドミトリー・ムセルスキー(ロシア)とともにサントリーをけん引し、ベスト6に輝いたが、今月26日から本格始動する代表候補には、今年も選出されることはなかった。

「非常に素晴らしい選手で、サントリーでも活躍されたと思うが、国際レベルということになるとブロック、サーブレシーブ効果率でも落ちるところがある。残念ながら今回はリスト上にはなかった」

 4月4日の日本男子代表登録メンバー35人の発表で、前代表主将の柳田が選出されなかった理由を、オンラインでの記者会見で説明したフィリップ・ブラン監督の言葉だ。

 柳田は、前日の3日に終わった国内リーグ・V1リーグのレギュラーラウンドで、アタック効果率は52.0%でクレク・バルトシュ(名古屋)、シャロン・バーノンエバンス(堺)、パダル・クリスチャンセン(東レ)に続き日本人選手トップの4位。サーブ効果率でもクリスチャンセンに次いで日本人トップの2位につけた。

 もちろん、この数字が代表選手選考の基準になるとは限らない。それを断り「ファンも多く、関心が高いので」と付け加えた質問に対し、ブラン監督は「Vリーグでのサーブレシーブは、国際レベルとサーブの力は比べものにならないくらい、国際レベルは違うと考えている。Vリーグの数字と国際レベルの数字は、比較するものではない」と、柳田を選ばなかった理由を明確に説明した。

 私が「サーブ効果率」を「サーブレシーブ効果率」と間違って質問してしまったので、ブラン監督はこのように答えたのだが、いずれにしても柳田のプレーが国際レベルには達していないという評価には変わりがないように聞こえた。
  昨年、「2020東京五輪」を前に五輪代表から漏れた柳田。東京五輪でコーチを務め8強入りに導いたブラン氏が監督に昇格し、継続的なチームづくりに入ったことで、代表復帰は難しくなっていたのも事実だった。

 しかも、ブラン監督はチームの課題として「国際基準を下回っているブロックとトランジションアタック及びハイボールのアタック」を挙げており、「ブロック面で課題がある柳田が選出される可能性は低かった」(V1男子チーム関係者)という見方もあった。

 選考しなかった理由をオブラートに包むことなく語ったのは、物事をはっきりと話すことの多い外国人監督であることに加え、選手をリスペクトした上で評価している点と課題点を示すことで、さらなる成長につなげてほしいという思いもあるのだろう。

 中垣内祐一・前監督の「彼がすごくよかったのは、石川がいなかった2017か18年。その後、いろんな面でコンディションは下がってきていると感じる。Vリーグ優勝でコンディションが高いと期待される人が多いかもしれないが、我々はトータルで選手を見たい。我々のチーム、戦術にフィットしているのかで判断する。全盛期と比べると見劣りしている。一生懸命さやパワーは感じるが」という、2021年5月9日の紅白戦後のコメントより、さらに踏み込んだ評価だった。
  それだけに、発表後のSNS上には、ファンらから様々な声が寄せられた。

「一昔前であればサーブとスパイクが優れていれば、他の部分は目をつぶれたかもしれないが、男子バレーのレベルが上がっている現在は、サーブレシーブ、ブロック、ディグ、サイズに劣っている柳田選手を選出するのは難しい」

「サーブレシーブは監督の言う通り。武器のサーブも石川や西田には劣って見える、世界と戦うには身長が低い。今年30歳で伸びしろも見込めない。妥当な判断」
 などと、ブラン監督の判断を支持する声のほか、

「国際レベルの話なら通用するのは数人しかいない。強豪国に通用するサーブも日本では3人しかいないなかの一人」

「代表選手というのはコートに居る人だけではないし、周りから冷静に見ることのできる(コーチや監督以外で)選手も必要。柳田さんはそれができる選手で、選抜されなかったことは残念ですね」
 などという声もあった。

 また、ブラン監督の明確なコメントについて、
「ここまで明確に落選理由を言われるのは良かったと思わなきゃ。これで、Vリーグでやることがわかった。後は足らなかった部分をしっかり数字を出して、代表復帰すればいい。親切な監督だと思う」

「柳田選手にはVに集中できると考えて頑張ってほしい」
 など、今回の決定を柳田が機会と捉えることを望む声もあった。
  V1リーグのファイナル3が終わった4月10日のこのはなアリーナ(静岡市)での名古屋戦後の取材で、柳田は「感想は特にない。(代表候補決定は自分に)コントロールが出来ないし、僕がなにを言っても変えられない。僕がやれることは次の試合に向け万全の準備をすること」と前年同様に冷静に答えてくれた。

 国際レベルに達してないとの評価にも、「それは現実だと思う。彼はほとんど間違ったことは言わないので、彼の目から見えることは、リアルなこと。逆にいうと、僕はそれを踏まえてどこを成長するべきかを、彼が口にしてくれているわけですから、そこは僕自身もフォーカスしていきたい」と真摯に受け止めた。

 チームの勝利のためには、耳の痛いことであっても議論を重ね、個々の選手のパフォーマンスを高めるため、先頭に立ってとことん突き詰めるのが柳田のスタイル。そこに妥協はない。監督やチームメートだけでなく、ファンからも厳しい評価を受けることが当たり前だった、海外リーグを経験している柳田にとって、ブラン監督の評価は驚くものではなく、次のステップへの道標以外、何物でもなかったようだ。
  一方、ブラン監督の代表候補選考に“異議”を唱えるのは、元男子代表監督の植田辰哉氏(大阪商業大学公共学部教授)だ。「植田監督なら柳田を選ぶか」と聞くと、「絶対に入れます」と即答した。

 まず挙げたのが、大一番での勝負強さ。柳田は、4月9日のファイナル3のパナソニック戦で、アタックで16得点、サーブでも2得点を挙げてファイナル進出に貢献した。「プレッシャーのかかる試合で、どういうプレーをするか楽しみにしていたが、非常に素晴らしい活躍をした。こういう選手が国際大会では必要になる」と植田氏は話す。

 またチームを言葉と背中で引っ張る柳田について、「僕の監督時代も、越川優や石島雄介ら、いろんな選手がいろんな意見を持っていた。勝ちたいから、選手はいろんな意見を言ってくる。自分の意見を伝えられるということは素晴らしい。あの選手は、代表に必要な選手です」と、自身の代表監督時代の経験に重ねて、チームを勝たせてくれる選手の存在の大きさを強調した。

「(国際レベルに達していないとは)それは言っちゃダメでしょ」という植田さんだが、自身も選考で逡巡したことがあるという。2008年北京五輪で、日本男子として16年ぶりの出場を果たしたが、代表候補に国内リーグでブロックのうまい選手を選ぶかどうか迷い、結局、選考しなかった。「Vリーグでは結果を出していたが、日本代表にはどうだろうか。僕のなかに葛藤はあった」と打ち明け、ブラン監督の考えにも理解を示す。ただ、その選手に越川や石島のようにチームを変えるんだという強い思いがあれば、結果は違ったのかもしれない。

 植田さんが柳田を重要視するのは、パリ五輪への出場権獲得方法が従来とは変わったことが大きい。これまでは世界選手権や大陸予選などで出場権を獲得することが出来たが、出場12カ国を今回から開催国(フランス)を除く世界ランキング上位24カ国が、8カ国ずつ3組に分かれて五輪予選1回総当たり戦を行ない、各組上位2カ国が出場権6枠を獲得。また、2024年6月のネーションズリーグ予選ラウンド終了時点の世界ランキング上位5カ国が出場権5枠(開催国、五輪予選での出場権獲得国を除く)を得る方式に変更された。

 国際大会ごとに世界ランキングが変動し、最終的に世界ランキングが五輪出場権に直結することになった。それだけに、大会ごとの短期決戦が重要になってくる。プレッシャーのかかる試合で、どれだけのパフォーマンスを発揮することが出来るのか。植田さんが、「勝負強い柳田」をチームに求める大きな理由だ。
  4月17日のV1リーグファイナルラウンド(千葉ポートアリーナ)で、サントリーは2年連続9度目の優勝を果たした。ベスト6に輝いた柳田は、「黒鷲旗全日本男女選抜大会、アジアクラブ選手権まで走り続けなければいけない」と、タイトル獲得を目指しチームとしての更なる成長を誓っていた。

「過程がいかによくても、自分が求めている結果が出せなかったら、それを改善することにフォーカスしなければいけない。あくまでベクトルは自分に向け続けていかなければならない」とは、昨年8月のインタビューでの柳田の答えだ。

 自身の置かれている状況を俯瞰し、冷静かつ厳しく自己評価する姿勢を貫き、「柳田将洋」は進化し続ける。

文●北野正樹(フリーライター)
【プロフィール】きたの・まさき/1955年生まれ。2020年11月まで一般紙でプロ野球や高校野球、バレーボールなどを担当。南海が球団譲渡を決断する「譲渡3条件」や、柳田将洋のサントリー復帰などを先行報道した。関西運動記者クラブ会友。

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