優勝候補ヒートの新キーマンだ! 「どん底まで落ちた」オラディポの復活への道のり「今ではどんなことでも乗り越えられる」<DUNKSHOOT>

優勝候補ヒートの新キーマンだ! 「どん底まで落ちた」オラディポの復活への道のり「今ではどんなことでも乗り越えられる」<DUNKSHOOT>

近年はケガに悩まされてきたオラディポだが、プレーオフ第5戦で躍動。1回戦突破の立役者となった。(C)Getty Images

イースタン・カンファレンス第1シードのマイアミ・ヒートは、アトランタ・ホークスとのプレーオフ1回戦を4勝1敗で制し、カンファレンス・セミファイナル進出を決めた。

 この勝負を決めたのが、第5戦でチームハイの23得点をあげた元オールスターのヴィクター・オラディボだ。

 オラディボは昨年3月、ヒューストン・ロケッツからトレードで加入。スターターとして4試合をプレーしたところで、2019年に手術した右大腿四頭筋のケガが再発。プレーオフを待たずにシーズンを終えていた。よって、今回がヒートで迎える初のプレーオフだった。

 昨年5月13日に受けた手術は成功し、当初は11月頃には復帰可能と言われていたが、今季初めてコートに立ったのは3月7日、古巣のロケッツ戦だった。

 その後は散発的な出場ながら徐々にプレータイムを伸ばし、レギュラーシーズン最終戦で今季初先発すると、4シーズンぶりの40得点に10リバウンドのダブルダブルを記録。プレーオフでは第3戦でカイル・ラウリーが負傷、さらにジミー・バトラーもヒザを痛めて5戦目を欠場することになると、エリック・スポールストラHC(ヘッドコーチ)は、オラディボを第4戦ではベンチから、そして第5戦ではスターターで起用したのだった。
  シリーズ突破がかかった第5戦、オラディボは序盤から連続得点を奪うと、第2クォーター中盤の競った場面でも、チームにとってこの最初の3ポイントを決める殊勲のプレー。得点以外にも、相手の流れを断ち切るスティールや、絶妙なアシストで好機を演出するなど、MVP級の活躍を披露した。

 自身でも納得のパフォーマンスだったのだろう。試合終了のブザーが鳴ると、オラディボは観客席に向かって、熱い想いを吐き出すかのように咆哮した。

「1年前、僕は次の手術を待っていた。1年前の今日、ほぼ同じ時間に、1人暗闇の中で壊れそうになっていたのを覚えているよ。それは諦めたからじゃなく、どん底まで落ちたことを実感していたから。僕には2つの選択肢しかなかった。やめるか、続けるか。そして僕は、続けることを選んだんだ」

 試合後、オラディボの先発起用を決断したスポールストラHCも、「この3年間、ケガや挫折と向き合いながら歩んできた彼を、私は本当に尊敬している。我々は皆、彼の活躍をとても嬉しく思っている。今夜の彼は本当に素晴らしかった。まさに、我らの一員たるパフォーマンスだったよ!」と、不屈のヒーローを労った。
  指揮官の言葉にもあるように、オラディボの活躍を喜んでいる仲間の1人が、ビッグマンのバム・アデバヨだ。

「俺は彼をとても誇りに思っている。彼は本当にいろいろなことをくぐり抜けてきた。頭の中を安定した状態に保つのは、相当大変だったはずだ。彼は見えないところでいつも全力で努力していた。1日に2回も3回も練習していたんだ。そんな彼を見て、俺たちも『頑張れよ』、『チャンスはくる。だからしっかり準備しておけよ』と励まし続けてきたんだ」

 アデバヨは、オラディボと同じ、ナイジェリアにルーツを持つ僚友でもある。

「プレーオフでは、誰がケガをして、誰にチャンスが回ってくるかわからない。コーチは誰を送り出すことも恐れないし、彼はいいパフォーマンスを見せていたからね。インディアナ時代の彼を思い出したよ」

 大学時代からディフェンス力の高いスコアラーとして評価されていたオラディボは、NCAAの最優秀選手に贈られる『スポーティングニュース・プレーヤー・オブ・ザ・イヤー』に選ばれたほど将来を嘱望された逸材で、ヤニス・アテトクンボらを輩出した2013年のドラフトでオーランド・マジックから全体2位指名。1年目はオールルーキー1stチームに選出された。
  キャリアの全盛期は、アデバヨが触れていたインディアナ・ペイサーズ時代。2017年から3シーズン半在籍し、MIP(最優秀躍進選手賞)受賞やオールスター出場(2018、19年)を果たしている。

 しかし前述のように大腿四頭筋を負傷。2度目の手術をした医師は「よくこの状態でNBAでプレーしていたな」と驚いたという。

 2019年1月の手術後は1年以上、2回目は約10か月と、3年間で2年近くものブランクを余儀なくされると、昨季は2度のトレード(ペイサーズ→ロケッツ→ヒート)を経験。そして今季は1年間の最低保障契約と、様々な面で試練に立ち向かっている。

 しかしキャリアの貴重な時間をケガとの戦いに費やした彼は、その経験から、強い精神力を養ったようだ。

「僕は今を生き、一瞬一瞬を大切にしている。状況をコントロールすることはできないが、物事にどう対応するかをコントロールすることはできる。自分自身でどうにかできないことなんてないんだ。今では、どんなことでも乗り越えられるし、いつでも復活できると感じられるようになった。先発出場を告げられて、僕は今夜、チームの勝利のために全力を尽くした。僕を信じてくれたスタッフやチームメイト、家族、そして神様に感謝するよ」

 今回披露したようなプレーを持続する限り、彼は求められる選手であり続けるだろう。次の相手はフィラデルフィア・セブンティシクサーズ。オラディボは、「これはまだ始まりに過ぎない」と付け加えた。タフガイが集うヒートで再び輝きを放ち、目指すはもちろんNBA制覇だ。

文●小川由紀子

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