エンビードがフランス国籍取得へ。東京五輪「銀」のバスケ大国入りで、世界の勢力図を一変させるか<DUNKSHOOT>

エンビードがフランス国籍取得へ。東京五輪「銀」のバスケ大国入りで、世界の勢力図を一変させるか<DUNKSHOOT>

今季のNBA得点王に輝いたエンビード。生まれはカメルーンだが、フランス国籍取得に向けて動いているという。(C)Getty Images

NBAの今季のMVP候補であるフィラデルフィア・76ersのジョエル・エンビード。トロント・ラプターズとのプレーオフ1回戦でパスカル・シアカムと接触し右眼窩を骨折、さらに軽度の脳震盪と診断されて現在は無期限離脱中だ。

 その彼が現在、世界のバスケットボール界を賑わせている。エンビードが今後、フランス代表の一員としてプレーする可能性が浮上しているのだ。

「カメルーン生まれで同国の国籍をもつジョエル・エンビードはフランスで育った経歴はないが、血縁がパリにおり、すでに帰化の申請手続きを開始している。実現すればフランス代表でプレーする可能性がある」

 フランスのラジオ局『RMCスポーツ』が流したこの情報を、スポーツ紙『レキップ』も確認し、フランス代表のチームマネジャーを務めるボリス・ディーオウも「彼が個人的に帰化の手続きを始めたこと、そしてフランス代表としてプレーしたいと考えていることは知っている」と認めている。
 「とはいえ、本末転倒はよくない。ひとまず、もろもろの手続きが完了するのを待ちたい」と、かつてNBAのフェニックス・サンズやサンアントニオ・スパーズなどで活躍したディーオウは慎重にコメントしたが、エンビードとフランス代表のリンクが噂されたのは今回が初めてではない。

 最初は2016年で、この時はなんの進展もなかったが、2回目の2018年には、フランス代表の中核メンバーが反応。ニコラ・バトゥーム(ロサンゼルス・クリッパーズ)は、「ルディ・ゴベアとの共闘はおもしろそうだ」と賛成派だったが、トニー・パーカーは反対派だと報じられていた。

 さらに現代表のエース、エバン・フォーニエ(ニューヨーク・ニックス)は、自身のツイッターで赤裸々に思いを吐露している。

「自分は、縁もゆかりもない国のためにプレーするのはどうかと思う。代表は単なるスポーツ的なチャレンジではない。ジョエルを非難しているわけじゃない。ほかの代表チームがそういうことをやっているのが気になるんだ。だからレ・ブルー(フランス代表)であっても同じこと。それに、ルディへのリスペクトは一体どこにあるんだ? フランス代表のために毎年、夏を犠牲にしている選手たちの立場は?」。レ・ブルーでゴベアとコンビを組む彼らしいコメントだ。
  コンゴ生まれのスペイン代表、サージ・イバカ(ミルウォーキー・バックス)や、2019年のワールドカップの得点王でアメリカ生まれの韓国代表ラ・ゴナ、そしてトルコ代表になったアメリカ人のシェーン・ラーキンなど、帰化選手はすでに各国で存在しているが、彼ら3人のようにたいていはその国のリーグでプレーした経験を持つ。

 その点、エンビードはフランスでのプレー経験は皆無。もっとも、かつてカメルーンがフランス領だったことで、カメルーン出身ながらフランス国籍をもつ人は珍しくない。

 では実際、現代表のNo.1センターであるゴベアとの共闘はどうなるかだが、これについて専門家たちは「十分可能」だとみている。

 今季平均30.6点でNBA得点王のエンビード、そして過去3回最優秀守備選手賞に輝いた実績を持つゴベア。2人はプレースタイルも異なるため、共存は十分可能だという意見だ。

 加えてフランス代表のヴァンサン・コレHCは、もとよりセンター2人を同時に起用する「ツインタワー」を非常に有効な戦略だと考えている。ゴベアとレアル・マドリー所属のセンター、ヴァンサン・ポワリエを同時にコートに送り出し、アメリカを 83-76 で下した東京オリンピックの初戦は記憶に新しい。
  しかしその場合、エンビードの加入でポジションを奪われる可能性があるのはポワリエだ。皮肉にも彼は昨季在籍していたシクサーズでも、ほとんどプレータイムを得られない経験をしている。

 ポワリエは、今回の報道を受けてこんなツイートをしている。「フランス代表で2番/3番を始めることになりました。どうやらここならこの夏、空いたスポットがあるようなので』(泣き笑いの絵文字つき)。

 フランスのファンの反応はというと、「スポーツ的には、彼の加入は大歓迎。しかし、彼がフランス代表というのは無理があるんじゃ…」という意見が多い。

 2024年にはパリでオリンピックが開催される。昨年の東京五輪でアメリカと熱戦を繰り広げた末に銀メダルに終わったフランスにとって、自国開催の檜舞台でチームUSAを頂上から陥落させる、というのは夢のシナリオだ。そしてエンビードは、その実現に向けて強力な戦力になる(チーム内のケミストリーが機能すればの話だが)。

 エンビードは以前、「国際大会に出場するとしたら、それはカメルーンになるだろうが、フランスという可能性もある…」とコメントしていた。そして東京五輪が終わった後、フランス代表の選手の何人かに連絡を取って、自分の意思を伝えたという。

 今夏のユーロバスケット(欧州選手権)までに実現することはないだろうが、パリ五輪の前に、来年8月には日本・フィリピン・インドネシア3か国共催のワールドカップも控えている。エンビードのフランス代表入りは果たして実現するのか。続報を待ちたい。

文●小川由紀子

関連記事(外部サイト)

  • 記事にコメントを書いてみませんか?