欧州のバスケ育成はアメリカより上?ヨキッチやドンチッチをその理由に挙げるメディアにデュラントが反論<DUNKSHOOT>

欧州のバスケ育成はアメリカより上?ヨキッチやドンチッチをその理由に挙げるメディアにデュラントが反論<DUNKSHOOT>

ヨキッチ(左)やドンチッチ(右)を輩出した欧州の育成は確かに優れているのかもしれない。ただ、彼らが例外的な選手なのもまた事実だ。(C)Getty Images

今季のNBAはセルビア人のニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)が2年連続でシーズンMVPに輝いた。

 その前は、ギリシャ国籍のヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)がこちらも2連覇。さらに今年の投票結果を見てみると、上位5位以内にヨキッチ、アデトクンボ、そしてスロベニア人のルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)が選出され、巷では最近のNBAでの“欧州勢の席巻ぶり”が話題となっている。

 基礎的なテクニックや、バスケットボールを理解するための戦術を早くから教える欧州での育成法をその理由に挙げる声もあり、Podcastなどを展開するバスケットボールメディア『Ball Don’t Stop』も、インスタグラムに次のような投稿をしている。

「ニコラ・ヨキッチやルカ・ドンチッチのような選手がリーグを席巻しているのは、ヨーロッパの育成システムのおかげだ。そこでは技術に重点を置き、ゲームにおける正しいプレー方法を学ぶことができる。
  北米では、多くの若いフーパーたちが、若い頃から影響力を追い求めたり、ショーケースのスケジュールにはまり込み、自分のプレーに欠けている部分がある状態でリーグに参戦することになっている。NBAのゲームは、多くのヨーロッパの選手にとって、とてもイージーだ。彼らは育ってきたバックグラウンドが違う。磨かれてプロになっているからね」

 この意見に疑問を投げかけたのが、ケビン・デュラントだ。

「どれだけの外国籍選手が、ここへ来ても生き残れずにまた帰っていくと思う?ルカやヨキッチのような例外的な選手を使って、自分の意見の正当性を主張しているように思えるね」

 ドンチッチやヨキッチは“規格外”での選手であって、欧州出身プレーヤーを象徴する例に挙げるのには無理があるという主旨のコメントを投稿したデュラント。21歳で出場した2010年の世界選手権(現ワールドカップ)以来、チームUSAのリーダーとして国際バスケットボールシーンに身を置いてきたデュラントは、他の多くのアメリカ人選手よりも圧倒的に国外の選手たちのプレーを肌身で経験している。
  つい先日も、昨季短期間ながらブルックリン・ネッツで共闘したマイク・ジェームズを応援すべく、ユーロリーグのプレーオフを現地で観戦。ジェームズが所属するモナコのホームゲームだけでなく、ギリシャまで足を伸ばし、敵方のオリンピアコスのファンから強烈なブーイングを浴びながら、決定戦となったゲーム5も見届けた。そんな観察眼をもつ彼の言葉だけに、説得力がある。

 さらに、デュラントだけでなく、自らが欧州でバスケ教育を受けているフランス代表のスターティングガード、エバン・フォーニエ(ニューヨーク・ニックス)もこの議論に参戦。

 彼は「ヨーロッパではより基礎的な部分にフォーカスをした育成を受ける」という指摘については同意しつつも、「北米には、僕たちよりはるかに優っている部分がまだまだ山のようにあるよ。両方からベストの部分を引き出せたら、完璧な世界になるんだろうね」とコメントしている。
  ギリシャのパシリス・スパヌーリス(元ヒューストン・ロケッツ)やスペインのファン・カルロス・ナバーロ(元メンフィス・グリズリーズ)といった、欧州でスーパースターの頂点に立っていた選手がNBAでは大成できなかった例もあるため、単に欧州での育成経験がアメリカで成功できる理由にならないのは明らか。所属したチームや指導者、それに体格なども重要な要素となる。

 そしてなにより、デュラントも指摘しているように、ヨキッチもドンチッチも“欧州出身プレーヤー”という枠でくくることのできない、稀にみる逸材だ。

 ヨキッチの場合は、祖国のセルビアでプレーしていた時代はユーロリーグに参戦するわけでもなく、有名選手でもなかった。しかしプロとしての成長期にアメリカに渡ると、ナゲッツの環境が合っていたこともあり飛躍的に進化。

 一方のドンチッチは、13歳で入団したレアル・マドリーで頭角を現した頃から、欧州バスケットボール史でもめったに例がないほどの天才プレーヤーだと言われていた。“見た目はややぽっちゃりで愛らしい顔つきをしているのに、プレーは容赦ない”というギャップも、彼の“キラー”っぷりをますます際立たせていた。 財力のある球団は、有力な外国人選手を集めて専用のチームを作るなど、若手にとっては出場機会を得ることすら難しいユーロリーグ。そこでドンチッチが19歳ながらエースとしてチームを優勝に導いたというのは、欧州のバスケ界でも歴史的な出来事だったのだ。

 フェニックス・サンズとの今プレーオフでも、後がない第6戦では33得点、11リバウンドの活躍で勝利に大貢献。ティーンエイジャーの頃から勝敗の責任を負っていた彼らしい勝負強さを、ポストシーズンの舞台でも存分に見せつけた。

 ヨキッチがMVPを連続戴冠し、ドンチッチがオールNBA1stチームの常連となるほどのパフォーマンスを発揮できている理由は、デュラントが指摘したように、ヨーロッパのバスケットボール育成システム以上に、それぞれが持つ非凡な資質にあると言えるだろう。
  そんなヨキッチだが、ひとたびコートを降りれば素朴な青年。ナゲッツがプレーオフから敗退した後はすぐに故郷セルビアの田舎町ソンボルに帰り、愛してやまない馬車レースに興じている。

 そこにマイケル・マローンHC(ヘッドコーチ)とスタッフが訪問し、トロフィーを彼に手渡すという粋なサプライズ。その瞬間の映像がナゲッツの公式SNSに投稿されているが、感動したヨキッチが涙目で彼らとハグする姿は、なんとも微笑ましい光景だった。

 母国で十分に英気を養って、来年もまた、パワフルなプレーを見せてくれることだろう。

文●小川由紀子

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