【NBAドラフト候補】フランスの大器ウスマン・ジェン。欧州発、NBL経由で目指す世界最高峰の舞台<DUNKSHOOT>

【NBAドラフト候補】フランスの大器ウスマン・ジェン。欧州発、NBL経由で目指す世界最高峰の舞台<DUNKSHOOT>

6月23日に開催されるNBAドラフトで、1巡目指名が予想されるフランスのウスマン・ジェン。(C)Getty Images

来週23日にニューヨーク州ブルックリンのバークレイズ・センターで開催される2022年のNBAドラフトには、NCAA在籍中の選手を除く、14人のインターナショナル選手(アメリカ国籍外の選手)がアーリーエントリーしている。

 そのなかで、最高位での指名が期待されているのが、フランス出身の19歳、ウスマン・ジェンだ。

 208cm・98kgとアウトサイドプレーヤーとしては破格のサイズを誇るジェンだが、「子どもの頃からずっとポイントガード一筋だった」と、本人はこのポジションにこだわりを見せている。

 5月に19歳になったばかりのジェンは、2003年にフランスのボルドーで生まれた。セネガル人の父はフランスの4部リーグ、ナシオナル2でプレーした元選手。父の影響で、4歳からバスケットボールを始めたという。
  彼を最初に指導した地元クラブの少年チームのコーチは、ほかの子どもたちよりもずば抜けて大きかったことに加えて、「入団当初から人並み以上の身体能力を持っていた」と振り返る。控えめだが、人の指示を注意深く聞く少年で、同年代のチームではあまりに抜きん出ていたため、すぐに上の学年のチームに格上げになったという。

 フランスでは、国中のいたるところに、各競技の代表選手を発掘するスカウトの目が行き届くシステムが確立されている。ジェン少年の存在もすぐにバスケットボール連盟のレーダーに検知され、トニー・パーカーらを輩出した国立養成所INSEPのトライアルに招かれると、首尾よくテストをパスしてエリートチームの一員になった。

 INSEPに入団する頃には身長は2mを超え、ウイングスパンはそれよりも長くなっていた。16歳から18歳を中心に形成されるINSEPのチームは、成人男子に混ざって3部リーグに参戦する。そこで2年プレーした後、彼のもとには、パリ・バスケット、ナンテールといったフランスのプロクラブを筆頭に、欧州の有名クラブ、アメリカのGリーグからも誘いが舞い込んだが、彼が選んだ進路は、オーストリアとニュージーランドのクラブで構成されるNBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)だった。
  NBLは2018-19シーズンから、『ネクスト・スターズ』と名付けた、若手有望選手にチャンスを与えるプロジェクトを展開している。地元出身選手に限らず、アメリカや世界中の若者を対象に、各チームとも、海外選手枠に関係なく1人をこのネクスト・スター枠で契約できる。

 NBAのドラフトで指名を受けることをひとつの目標としたこのプログラムでは、全体練習とは別に、個々に合わせた筋力トレーニングやワークアウト、練習後の個人セッションなどが義務付けられている。

 アメリカでも近年注目度が高まっていて、プログラム発足後、すでにラメロ・ボールが、イラワラ・ホークスを経て2020年のドラフト3位でシャーロット・ホーネッツから指名。同じ年のドラフトでは、ニュージーランド・ブレイカーズでプレーしたRJ・ハンプトン(現オーランド・マジック)もミルウォーキー・バックスから1巡目24位指名を勝ち取った。

 さらに地元選手でも、アデレード・36ersにいたジョシュ・ギディーが昨年のドラフト1巡目6位でオクラホマシティ・サンダーから指名を受けている。
  ジェンは、彼ら先輩たちの成功例や、『ESPN』で試合が放映されるなどアメリカでの注目度が高いこと、また、フィジカルかつプレーのレベルも高く、身体面の強化を目指す自身の希望に適していることなどから、NBL行きを決意。ニュージーランド・ブレイカーズとネクスト・スター契約を結んだと、フランス誌のインタビューで明かしている。

 ブレイカーズで彼の指導者となったのは、2004、05年にユーロリーグを連覇したマッカビ・テルアビブやCSKAモスクワなど、欧州のトップクラブでアシスタントコーチを務めたイスラエル人のダン・シャミールHC。そのことも、欧州出身のジェンにとっては心強い要素だった。

 ちなみに、ニュージーランド・ブレイカーズのオーナーグループには、マイアミ・ヒートのヴィクター・オラディポも加わっている。 INSEPである程度もまれたとはいえ、正真正銘のプロリーグは初体験だったジェンにとって、開幕当初は「自分がやろうとしているプレーができなかった」と、フラストレーションのたまる苦悩の時期となった。

 それでも、シャミールHCの献身的なサポートもあって徐々にプレータイムも増加。今年4月にドラフトへのエントリーを表明した頃には、平均20.8分のプレータイムで8.9点、3.2リバウンドと、18歳としては及第点と呼べる数字をあげるまでに成長していた。

「実力派の選手たちとタフなリーグでプレーするというのは、自分にとって本当に良い経験だった。ここで多くのことを学んだ。フランスで見ていたよりもずっと良い選手たちと対戦できたことは、成長の大きな助けになった」と、ジェンはNBLで得た手応えを語っている。
  彼のプレーの特徴として挙げられるのは、“シルクのよう”と形容される、なめらかなボールハンドリングやパスワークだ。NBLでのシーズンを経て、ボール扱いがさらに上達したこと、そしてディフェンス面では1番から4番までをマークできるようになったと、本人も成果を口にしている。

 シュート成功率も日々向上中だ。彼が繰り返しビデオを見て研究しているのは、同胞の大先輩であるニコラ・バトゥームや、昨年トロント・ラプターズから4位で指名され、今季の新人王に選ばれたスコッティ・バーンズだそうだ。

「いろいろなことをこなすという点で、自分はバーンズと少し似ているところがあると思う」とジェンは自己評価している。

 モックドラフト(各メディアの指名予想)では、1巡目での指名が有力視されるなか、欧州プレーヤーの指導経験が豊富なグレッグ・ポポビッチHCのサンアントニオ・スパーズや、若手中心に再建中のオクラホマシティ・サンダー、ヒューストン・ロケッツなどの名前が挙がっている。ドラフト当日、フランスの大器が何番目に名前を呼ばれるのか注目だ。

文●小川由紀子

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