“ポスト・ジョーダン”からいつしか“過去の人”へ。故障にすべてを奪い去られたペニーのキャリア【レジェンド列伝・後編】<DUNKSHOOT>

“ポスト・ジョーダン”からいつしか“過去の人”へ。故障にすべてを奪い去られたペニーのキャリア【レジェンド列伝・後編】<DUNKSHOOT>

“ポスト・ジョーダン”として期待されていたペニー。しかしヒザの故障が彼からすべてを奪い去った。(C)Getty Images

■ジョーダンに代わる広告塔からいつしか“過去の人”へ

 1995−96シーズンのオーランド・マジックは、大黒柱だったシャキール・オニールが開幕から故障のため6週間にわたって戦列を離脱。これによって苦戦が予想されたチームを救ったのは、アンファニー・ハーダウェイの八面六臂の活躍だった。平均26.4点をあげ、シャック不在の間を17勝5敗で乗り切ると「もはやマジックは、シャックではなくペニー(ハーダウェイの愛称)のチームだ」との声もあちこちで上がった。

 選手としての評価と同時に、人気面もうなぎ上りになった。ナイキはジョーダンに代わる会社の顔としてハーダウェイをプッシュし、シグネチャーモデル『エア・ペニー』を制作。ハーダウェイと人形の“リトル・ペニー”(声はクリス・ロックが担当)が共演するCMはシリーズ化され、スパイク・リーやタイラ・バンクスらも出演して大評判となった。

 一方で、エースとの間には微妙な空気が流れるようになった。常にお山の大将でいなければ気が済まないシャックにとって、自分がいない間もチームが好調だったことや、ハーダウェイ人気の急上昇は面白いはずがなかった。
  ハーダウェイにとっても、そんなシャックが目障りに映り始めていた。公の場で「シャックはムービースターになりたいらしいけど、銀幕の美形スターとは程遠いね」と冷笑すれば、「コートを離れたらよく一緒にいるかって? “よく”なんてもんじゃ決してないね」と皮肉っぽく語ったりした。まだチームメイトだった時点でこのような発言をするほど、2人の関係は冷えていた。

 1996年、FA(フリーエージェント)となったシャックはロサンゼルス・レイカーズへ移籍。その年のアトランタ五輪代表“ドリームチームU”での共演を最後に、2人は完全に袂を分かった。カリーム・アブドゥル・ジャバーとマジック・ジョンソン(ともに元レイカーズ)を超える最強コンビになるのではとさえ言われた“シャック&ペニー”は、たった3年で解体してしまったのである。

「そりゃ、彼がいたほうが楽に決まってる。でも去年、シャックがいない間も僕たちはいい戦いができた。今年も同じことができない理由はないさ」 ハーダウェイは強気に語ったが、そんな楽観的な見方を裏切ったのは、ハーダウェイ自身の身体だった。日本で開幕戦を行なった直後に、痛めていた左ヒザを手術。これが原因となって持ち味のスピードと瞬発力が失われてしまい、成績は下降線を描き始めた。

 ヒザの痛みは何度もぶり返し、そのたびにプレーの切れ味は失われた。思うようなプレーができない苛立ちもあったのか、自分本位な行動や発言も目立ち始める。1997年にブライアン・ヒルがHC(ヘッドコーチ)を解任された際には、その首謀者としてメディアやファンから非難された。

 チームから完全に浮き上がったハーダウェイは、1998−99シーズン終了後、とうとうマジックから放出される。移籍先のフェニックス・サンズでも、時折全盛期を思わせるようなプレーも見せたが長続きせず、いつしか過去の人となってしまった。

 2003−04シーズンから3年間はニューヨーク・ニックスに在籍。1年間のブランクを経て、2007−08シーズンはマイアミ・ヒートと契約を結んだ。
  ヒートへ移籍していたシャックとのコンビ再結成はオールドファンに期待を持たせたが、すでに往年の力は残っておらず。12月には解雇通告を受け、NBAでの選手生活に正式にピリオドが打たれた。

 その後ミドルスクールのコーチを経て、2018年からは母校メンフィス大の指揮官に就任。ジェームズ・ワイズマン(ウォリアーズ)やプレシャス・アチウワ(トロント・ラプターズ)らをNBAへ送り出している。

 平均15.2点、5.0アシストの生涯成績からは、ハーダウェイが“ポスト・ジョーダン”候補の一番手だったことを読み取るのは難しい。仮にヒザの故障がなかったとしても、ジョーダンの領域にまで迫ることは、おそらくなかっただろう。

 それでも短い期間だったとはいえ、彼が残した印象は鮮烈だった。マジックやジョーダンの後継者にはなれなかったが、彼のプレーをしっかりと記憶に刻みつけているファンの数は、決して少なくない。

文●出野哲也
※『ダンクシュート』2009年9月号原稿に加筆・修正

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