カリスマは負けを知り、強くなる。「負けることが恐かった」武尊が語った10年ぶりに喫した敗北の意味

カリスマは負けを知り、強くなる。「負けることが恐かった」武尊が語った10年ぶりに喫した敗北の意味

K-1で文字通りの負けなしの強さを見せてきた武尊。彼が語った「敗北」への想いとは。写真:徳原隆元

「この十数年、プロでやってきて、ほんとにファイトスタイル的にも身体を酷使する戦い方をしてきた。公表していない部分でもケガに悩まされた部分があって、それも含めて、今回、1回……格闘家として1回歩みをストップさせてもらう」

 東京都内で緊急会見を開いたK−1の3階級制覇王者で現スーパーフェザー級王者の武尊は、そう語って休養を宣言した。

 今月19日に東京ドームで行なわれたRISEフェザー級王者那須川天心との58キロ契約体重3分3回(延長1回)で0−5の判定負けを喫していた“カリスマ”は、言葉を選ぶようにして決意を語った。時折、目を潤ませ、声を詰まらせながら打ち明ける言動からも決意の強さ、重みは伝わってきた。

 202年6月に京谷祐希にTKO負けを喫して以来、先の那須川戦まで負けなしで連勝街道を歩み続けてきた。40勝24KOという堂々たる成績が、K-1で負けないエースとして“神格化”された武尊のカリスマ性を物語る。

 だが、当人の心身はボロボロだった。会見では数多のライバルを打ち倒した拳は腱が断裂した状態が続き、さらに公表してこなかった腰の故障(分離すべり症)など肉体的な故障に加え、数年前から精神科に通院もし、パニック障害とうつ病に苦しんでいたという。

 輝かしい舞台に立ち続け、周囲から羨望の眼差しを向けられ続けた。それ自体は覚悟している。だが、いつしか壮大なプレッシャーは本人の思っている以上の重みになっていった。だからこそ、那須川戦で喫した10年ぶりの敗北で心は解放された。

 戦前には「この試合に負けるということは自分の格闘技人生を否定することになる」と語っていた武尊。だが、実際に敗戦を目の当たりにして、その考えは変わった。「この試合の一番の学びはそこ」と明かす30歳は、こう続けた。
 「本当に、この10年間は毎日負けることが恐くて、ずっと恐怖と闘っていたなって。格闘技は大好きだし、試合の時は笑って、楽しめているんですけど、それ以外の時は苦しさと恐怖しかなかった。それって本当に心から格闘技を楽しめてなかったと思う。

 負ける恐怖があったから強くなれた部分はあったので、無駄ではなかった。でも、今回こうして10年ぶりに負けて、その時に知れたことは僕の中で大切なものになる。もちろん、負けた自分は許せない。だけど……、その歪んでいた部分だったり、負けに対してのネガティブな考えは少し変わったかな。『負ける』っていう恐怖がなくなった分、強くなかったかな。もっと思いっきり戦えるんじゃないかなと思う」

 今後は一部報道で総合格闘家への転身も囁かれている。それについて武尊は明言こそ避けたが、「色んな可能性が僕にはある。だから、一度心と身体を休めて、まだみんなをワクワクさせたい。本当に僕のワガママですけど……、最後に勝つ姿を見せて、終わりたいなと思う」と強調する。

 もちろん、30歳からの新たな挑戦は決して容易なものではない。休養期間はブランクにもなり得る。だが、「最高の心と身体で戻ってくる」と語気を強めた武尊は、敗北を知り、また強くなるに違いない。これまでもジャンルを問わず数多の戦士たちがそうであったように、「格闘家・武尊」の成長が今から楽しみでならない。

取材・文●羽澄凜太郎(THE DIGEST編集部)

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