【名馬列伝】「牝馬の時代」の先駆けとなったエアグルーヴ。97年天皇賞・秋を制して全馬のトップへ駆け上がる!<後編>

【名馬列伝】「牝馬の時代」の先駆けとなったエアグルーヴ。97年天皇賞・秋を制して全馬のトップへ駆け上がる!<後編>

97年の天皇賞・秋を制したエアグルーヴ。牝馬としては26年ぶりに年度代表馬にも選出された。写真:産経新聞社

エアグルーヴが復帰したのは翌1997年6月のこと。この夏から秋にかけては、彼女にとって最良のシーズンとなる。

 初戦のマーメイドステークス(GⅢ、阪神・芝2000m)を快勝すると、続く札幌記念(GⅡ、札幌・芝2000m)では2着のエリモシックにラクな手応えで2馬身半の差を付ける圧勝を遂げて、順調に調子を上げていった。
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 そして迎えたのが、古馬になってからの最大目標とした天皇賞・秋(GⅠ、東京・芝2000m)である。

 女王を迎え討つのは、3歳にして前年にこのレースを制し、本年も前哨戦の毎日王冠(GⅡ、東京・芝1800m)を勝って臨んでくるバブルガムフェロー。皐月賞(中山・芝2000m)とマイルチャンピオンシップ(京都・芝1600m)を制しているジェニュインという、トップオブトップの牡馬2騎という強力な布陣となった。

 それでもジェニュインを抑えて2番人気に推されたエアグルーヴは、先行するバブルガムフェローを目前に見る好位置をキープ。2頭は流れに乗りつつ、互いを意識しながら直線へと向いた。

 先に抜け出したのはバブルガムフェローで、エアグルーヴはぎりぎりまで待って追い出される。武豊、岡部幸雄という名手二人が最高の技術とスピリットを愛馬に注入しながら最後の200mにわたって火の出るような激闘を繰り広げる。そして熱狂するファンの目前でエアグルーヴがバブルガムフェローをクビ差抑えてゴール。天皇賞・秋が2000mに短縮された1984年以降、牝馬の優勝はこれが初めてのことで、名実ともに牝馬のエアグルーヴが全馬のトップに立った瞬間だった。

 ちなみに3着のジェニュインは、バブルガムフェローからさらに5馬身もの差を付けられていた。

 その後も、ジャパンカップ(GⅠ、東京・芝2400m)で英国のピルサドスキーの2着、有馬記念(GⅠ、中山・芝2500m)でシルクジャスティスの3着と健闘。これらの好走も評価されて、エアグルーヴは1997年度のJRA賞で年度代表馬に選出された。牝馬がこの座に輝いたのは1971年のトウメイ以来、実に26年ぶりのことだった。 翌1998年も大阪杯(GⅡ、阪神・芝2000m)と札幌記念を制したエアグルーヴだったが、ジャパンカップが2着、宝塚記念(GⅠ、阪神・芝2200m)とエリザベス女王杯(GⅠ、京都・芝2200m)が3着と健闘しながらも、GⅠレースの勝利は収められなかった。

 そして年末の有馬記念でグラスワンダーの5着としたのを最後に現役を引退した。

 エアグルーヴは繁殖生活に入っても優れた仔を産み出した。
 
 セレクトセールで2億3000万円(税別)で落札された初仔のアドマイヤグルーヴ(父サンデーサイレンス)は、2003・2004年のエリザベス女王杯を連覇した。そしてアドマイヤグルーヴは繁殖入りしてから、2015年の春季クラシック二冠を制したドゥラメンテを送り出した。ちなみにドゥラメンテは種牡馬として、菊花賞と天皇賞・春を制したタイトルホルダー、ことしの牝馬クラシック二冠を勝ったスターズオンアースを送り出している)。

 また8番仔のルーラーシップ(父キングカメハメハ)は2012年の、香港のクイーンエリザベス2世カップ(GⅠ、シャティン・芝2000m)に優勝し、種牡馬として2017年の菊花賞馬、キセキを出すなどの活躍を見せている。

 エアグルーヴは残念ながら2013年の4月に最後の産駒を産んだ際に起こした内出血により命を落とした。しかし競走馬として、また母親としても歴史的な活躍を見せた彼女の血は、子供たち、孫たちを通して今も命脈を保ち続けている。

 日本競馬は2000年代に入って牡馬と互角以上の勝負ができる傑出した名牝が続出する「牝馬の時代」に突入するが、エアグルーヴはその先駆けとなる希有な存在として歴史に名を刻んだ。
<後編・了>

文●三好達彦
【動画】牝馬エアグルーヴが全馬のトップに立つ! 97年天皇賞・秋をプレーバック

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